144 決闘の後は……
決闘の翌日。
「ねぇ! アルトって方のお話聞かせて!」
「平民の自由な恋愛!! 羨ましいですわ!」
「自由は自由ですけど『禁断の』がつきますわよ! あぁ……そそられますわぁ!」
「「「「「キャーッ!!」」」」」
「うぅ……あぅ……う」
わたしは休み時間になると、座らされたままクラス中のみんなに囲まれてアルトちゃんの事を根掘り葉掘り聞かれる状態になっていました。
貴族のご令嬢となると家柄や立場なんかもあって、平民みたいな自由な恋愛ができないから、昨日の発言に大盛り上がり中なのです……。
完全にやってしまった……シフォンちゃんとアルトちゃんを馬鹿にされ、頭に血が上っていたとは言え大声であんな事叫んじゃうなんて……。
アルトちゃんは大事な人で、恋愛対象というより、ずっと一緒にいたい人という意味で……あれ?それってやっぱり……。
あぁ! もぅ!! 恥ずかしすぎて顔が蒸発しちゃうよぉ!!
わたしは顔から火が出るのでは?というくらいに真っ赤にしながら、次から次にくる質問に目を回していました。
「はいはい! 皆様その辺にしておいてください。ソプラの顔が発火しますわよ」
そう言いながら集まったみんなを散らしてくれたのは、シフォンちゃんでした。
「うぅ……ありがとうシフォンちゃん」
「これくらいお安い御用ですわ。まだ、この学園にいられるのもソプラのおかげなんですもの」
そう言ってニッコリと笑いながら頭をなでてくれました。
シフォンちゃんが天使様にみえるよぅ。
そしたら、今度は廊下の方からカツカツッ! と靴音を鳴らしながら誰かが近づいてきました。
「今少しだけお時間いいかしら?」
「「フェンリさん」」
昨日決闘をした真剣な表情のフェンリさんが、いつものお供は連れずに、わたし達の前に立ち止まりました。
「まずは2人とも、今までの私の非礼をお許しください」
そして、深々と頭を下げてわたし達に謝ってきました!
「フェンリさん!? ちょ! 頭を上げて下さい!」
「そうですわ! 真剣な決闘を行ったんですもの! わたし達の立場は平等です!」
慌てて立ち上がり、フェンリさんの頭を上げさせようとしたけど、すごい力で頑なに頭を上げてくれない。
貴族が平民に深々と頭下げるなんて、見た事ないよぅ!
「変態赤メガネから話を聞きましたの……あなた達の事情も知らずに決闘を挑んだ私の非礼は変わらないわ。だからちゃんと謝らせてほしいの」
「わかりました! 謝罪は受け取りましたから頭を上げて……ん? 変態赤メガネ? ……もしかしてトラン様の事?」
「えぇ……あんな奴は変態赤メガネで十分ですわ!」
フェンリさんが、顔を上げみるみる怒りの表情に変わり、拳をメキメキと強く握り締めています。
決闘の時より怖いよぉ。
「あの後すぐに私はトイレに駆け込み事なきを得たのだけど、そのあとすぐに変態赤メガネが女子トイレに入ってきて……。
『ソプラちゃんの全力整腸魔法を受けてどう? 普段全力でやる事なんてないからさぁ〜』
『対魔法鎧の上からでも回復魔法は届くんだね! これは貴重な情報だ!』
『ねぇねぇ、後で体を調べさせてもらってもいいかなぁ? うへへへ』
なんて事を扉の前で嬉々として聞いてくるんですのよ! 信じられませんわ!!」
「うわぁ……」
「それはドン引きですわ……」
フェンリさんぶち切れです。トランさん……それは流石にアウトだよぅ。
「その後、衛兵に突き出す前に殺してやろうとボコボコにしていた所であなた達の事情を吐いたのよ。まさか、そんな事情があるなんて……知らなかったからと言って許される事ではないわ。だからどんな処遇でも受ける覚悟はありますわ。
さあ、決闘で敗れた私への願いはなんですの?」
「あ、えっと……」
実はフェンリさんとの対策を練るのに必死で、お願いのことなんて考えてなかったんだよね……。
オロオロしながらシフォンちゃんを見ても「ソプラに任せますわ」ってにこやかに言われちゃったし。
「えっと……じゃあ……」
わたしはゴクリと唾を飲み込んで言いました。
「わたしとお友達になって下さい!」
「へ?」
フェンリさんはわたしのお願いが予想外だったのか、キョトンとした顔でわたしとシフォンちゃんを交互に見ています。
「それで……いいんですの?」
「はい!」
そもそもお願いなんてないし、わたしは退園にならなければそれでいいからね。
「私はあなたを退園させようとしたのよ? そんな私と友達になりたいの?」
「はい! フェンリさんはちゃんと謝ってくれたし、これからはお友達になってほしいと思ったから」
フェンリさんは少し呆けた顔をした後、クスッと笑いました。
「わかったわ。このディフェン・アフラ・フェンリはソプラに忠誠と友になる事を誓うわ」
そう言ってフェンリさんは綺麗な所作でわたしに深く一礼をして友達になる事を了承してくれた。
なんか仰々しい感じだけど、まぁいいか。
「あ、そうだ……ソプラちょっといいかしら?」
「はい?」
フェンリさんは少しモジモジしながら、耳元に顔を近づけてきました。何だろう?
「決闘に負けてこんなお願いするのは恥ずかしいんだけど……。
実はあの後から凄く体の調子がいいの……その……たまにでいいから弱めのアレをまたお願いできないかしら? できれば……内密に」
あー。魔法かけた時気づいたけど、フェンリさんいっぱい溜まってたもんねぇ。女の子だからよくわかるよぅ。
「うん! いいよ♪」
わたしはニッコリと笑顔で了承すると、フェンリさんも照れ臭そうに笑ってくれました。
フェンリさん、こんな風に笑うとすごい可愛いんだね。
「何をコソコソ喋ってますの?」
そんなやりとりを見て、シフォンちゃんも割り込んできました。
「えへへー、内緒ー♪」
「まぁ! 私に隠し事なんて許さないわよー!」
「キャーッ! フェンリさん助けてー!」
アルトちゃん。わたし、新しい友達が増えました。
第8章 ソプラの王都魔導女学園編終了です!
ソプラの可愛さが伝わってくれたでしょうか?
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