141 壁際での攻防
『おぉーと!! ソプラ嬢が一瞬の隙を突かれ、壁ぎわに追い詰められたー! コレはピーンチ!!』
『んみゃーーっ!? ソプラちゃん逃げて!! 逃げてーー!』
『トラン様、うるせぇ黙ってろ』
『すいません……』
「さぁ、もう逃げ場はなくてよ」
「うぅ……」
壁に背をつけながら横に移動するも、フェンリさんがジリジリと距離を詰めてきます。
このままではジリ貧だよぅ。
わたしは足に魔力を溜め壁沿いに走り出しました!
でも、フェンリさんは逃がさないとばかりに、不敵な笑みを浮かべながらついてきます。
やっぱり速い、かけっこしてもすぐに追いつかれちゃう……どうしたらいい? こんな時アルトちゃんなら………………あ。
ある事を思いつきましたが正直一か八かの賭けです。でも、やらなきゃ負けちゃう……えぇい! 女は度胸です!!
わたしは、風魔法の詠唱を始めました。
「魔法なら無駄よ! この対魔法鎧の前では半端な魔法ははじき返す! その隙に紐は奪わせてもらうわ!」
フェンリさんがチャンスとばかりに一気に距離を詰めてきました! 今です!!
「えーーいっ!!!!」
「!?」
練り上げた風魔法をフェンリさんではなく、やや前方の地面に向けて放った後、走る勢いのままその魔法を思いっきり踏みつけた!
ズパーーーーンッ!!!!!!!!
「何だぁ!?」
「うわっ! 伏せろ!!」
「キャアァアアアアアア!!」
強烈な破裂音と共に爆風と砂埃が修練場を埋め尽くした!!
『あぁーーとぉ!? ソプラ嬢の風魔法が暴発ぅ!! ギャラリーは大混乱です!! 魔法失敗かぁ!?』
『いや、アレはわざと暴発させたように見えますね。
魔力の質からするとおそらく、ウィンドランス……軌道をわざと捻じ曲げて圧縮するようにその場に留めるようにした後、自身で踏みつける事で無理矢理その力を暴発させるという荒業です。
ですが、一歩間違えればその場で自身に魔法をくらってしまう諸刃の剣です。
ですが、相当な魔法操作能力とそれを実現させる魔量が無いとできない事でもあります……いゃぁ、コレはそそりますねぇ!』
『ものすごい早口で何言ってるかわかりませんが、色々ヤバそうです!! さあ、砂埃が落ち着いていきます、あの爆発で2人は無事なのかー!?』
爆発のあと空中に吹き飛ばされきりもみ状に落下する中、何とか体制を立て直して着地しました。
「ふぇぇ……失敗だけど、なんとかなったよぉ」
目が回ってクラクラする中フェンリさんを確認したら、砂埃の中でこちらを睨んでいました。
「無事だー!! 2人とも無事だぞー!!」
「あの対魔法鎧すげぇな……あんな魔法をくらってもピンピンしてるぜ」
「もー爆風と埃で髪バサバサだー」
観客の人達もわたし達が無事な様子を見て、また盛り上がっているようです。
「っく……無茶苦茶やりますわね。魔法を踏みつけて暴発させるなんて初めて見ましたわ……」
いや……あれ、本当は風の玉を作ってそれに乗り、ビヨーンと跳躍する予定だったんだけどなぁ……やっぱりアルトちゃんみたいに上手くできないや。
まぁ、何はともあれ壁際からは脱出できたし結果オーライだよね。
でも……。
「どうやらかなりの魔力を使ったようですわね。そんな状態でこれ以上私の攻撃を避けらるかしら?」
うっ……鋭い。確かにけっこう魔力使っちゃってヤバそうだよう。
「これであなたも、シフォンもこの学園から追い出し、あなたが庇っている結界破壊の犯人……アルトも捕まえる事ができるわ」
「!?」
あれ!? 結界こわしたのアルトちゃんって完全にバレてる!?
「そもそも最初から気に食わなかったんですわ……ただの平民風情が突然貴族を超えるほどの魔量や属性を持って生まれてくるのはたまにあるけど、あなたやアルトは異常なんですわ!
王前の儀に選抜されるはずの私をなんらかの手段で出し抜いたソプラ、それに王前の儀とこの学園の結界を破壊したアルト……どちらもこの国の危険因子ですのに何故国はかばうんですの!?」
「あの……それは……」
言えない……王様から口止めされてるから言えないよぉ……。
「それに、アルトと言う輩は国中を周り色んなところで問題も起こしてやりたい放題ですわ! そんなゴミカスはこの国にはいらないんですわ!」
ピクッ……ゴミカス?
わたしはフェンリさんのある言葉に反応してしまいました。
壁際から脱出はできたけど、フェンリの言葉に反応するソプラ……決着はどうなる!?
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