表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/205

138 決闘開始

 わたし達がフェンリさんに決闘を申し込まれてから数日後。


「ついにこの時が来てしまいましたわね……うぅ……緊張して吐きそうですわ」

『ピィ! ピィ!』


「大丈夫。練習通りにやればいけるはずだよぉ」

『クックゥ!』


 わたしは控室で緊張しているシフォンちゃんの背中をさすっていました。


 もうすぐ始まる退学をかけた決闘、本当は申し込まれた次の日に行うはずだったんだけど、フェンリさんが学校に出した『決闘申請書』の受理がなかなか通らず時間が経っていました。


 生徒のいざこざを解決するために設けられた校則なんだけど、本気の退学をかけた決闘は前例がない事だったみたい。


 でも、受理が遅くなった一番の理由はトランさんが、凄くごねたという事だった。


 申請が出された次の日にトランさんがわたし達のところに飛んできて、なぜ決闘をしなくてはいけないのか? 話し合ってどうにかできないのか? とわたし達を説得しにきたんだけど、フェンリさんはこの学園の為だと一切折れなかった。


 最終的には受理する形にはなったんだけど、子供のように床で駄々を捏ねまくるトランさんの姿は、わたしもシフォンちゃんもフェンリさんもドン引きでした。


 更に学園内で話が広まって、わたし達の決闘は一大イベント並みに盛り上がってしまい、決闘を行う修練場には沢山の観客や出店まで出ることになってしまっていました。


 なんでこんな事になってしまったんだろう……。


「ソプラ……あなた緊張しないの?」


 シフォンちゃんが緊張と不安と精神的重圧で青ざめた顔をしながら、背中をさするわたしを見てきました。


「ん? そりゃ緊張はしてるよぅ?でも、王前の儀に比べたら人数も少ないし、シアン様に教わった緊張をほぐす歌を頭の中で歌ってるんだよぉ」


 昔は考えられないほど、わたしも肝が据わってきたなぁ。


「そっ! それ歌ってくださいまし! もう緊張で、でちゃいけないものまで出そうですわ! ……ウプッ」

『ピッピィー!!』


「わぁああ!? シフォンちゃん!? 待って待ってぇー!!」

『クックゥ』


 わたしは、シフォンちゃんの介抱をしつつ緊張をほぐす歌を歌うのでした。


 * *


『さあ、本日はこの学園始まって以来の決闘が行われようとしている修練場から、学園一のお喋り娘トッキンが実況をさせていただきます! ゲストは学園の校長を務めているトラン様です!』


『……よろしく』


『生徒同士の決闘がここまで盛り上がるとは思いもしませんでした! これはどう言った事が考えられるでしょうかトラン様!?』


『知りませんよ……刺激の少ない学園生活で生徒人気も高いフェンリ嬢と、中途で入学してきた平民出身のソプラちゃんの対戦だからじゃないですか? ……はぁなんでこんな事に……』


『どちらも学園では飛び抜けた才能を持つ両者! 学園としては手放したくないのでしょう! 決闘をやめさせられなかったトラン様の底知れぬヘタレ感が垣間見えます!』


『え? ちょ、君?ひど……』


『さぁ!! 両者が出てきました!!まもなく決闘開始のようです!!』


 わぁああああああああああああああああああああ!!!!!!


 わたし達は満員の修練場に足を踏み入れると、割れんばかりの歓声が聞こえます。


 フェンリさんは不思議な色をしたシンプルな鎧と剣技の練習で使用する木剣を持って立っていました。


「よく怯えずにきましたわね。その心意気だけは褒めておきますわ」


「うぅ……観客がこんなにたくさん……吐きそうですわ」


「あの……フェンリさん……一応なんだけど決闘やめにするって事は出来ないんだよね?」


 わたしはダメ元でフェンリさんに決闘中止をお願いしてみました。


「くどい! この状況でまだそんな戯言を言うの!? そんな覚悟もない状態では、私に勝つなんて到底無理ですわね」


 ですよねー。ここまで盛り上がるとは思ってもいなかったし、今更ですよねぇ。


 わたし達は修練場の真ん中に移動して互いに向き合った。


「試合方法はそちらが決める事になってますのよ、早く教えなさい」


 わたし達は顔を見合わせて一度頷き、ポケットからアレを取り出した。


「それは……紐?」


「うん、試合方法は『紐取り』だよ」


 手には赤い紐が握られていた。


 わたし達は試合方法に紐取りを選んだ。剣や魔法を使う普通の対人戦なら、多分フェンリさんには敵わない。


 それならば、紐を取ったら勝ちの紐取りでシフォンちゃんと2人でならば勝機が見えるのではないか?と話し合った結果だった。


「フ……フェンリさんと対戦するなら……こ、これで十分ででで、ですわ!!」


 シフォンちゃんが打ち合わせ通りにフェンリさんを挑発するけど、すっごい腰が引けてるよぉ!?


 でも、シフォンちゃんも頑張って言ってくれたからわたしも頑張る!


 わたしは顔をヒクヒクさせながら、できる限界のしたり顔を見せた。


「……なるほど、この私に対してあなたにとっては遊びだと言う紐取りで勝負すると……。ここまで侮辱されるのは初めてですわ!」


「「ひぃいいいい!」」

『クックゥ!?』

『ピッピィー!!』


 フェンリさんの魔力が高まって肌を刺すような殺気が伝わってくる……相当怒っているみたい……だけど、これは想定内。


 怒っているときは正常な判断ができなくなるってミーシャが言ってたのを思い出したから、わざとフェンリさんを怒らせるように作戦をたてたんだけど。


 これって火に油注いだんじゃないよね?


『どうやら試合方法は紐取りのようです! 守りの硬いフェンリさんに対してシフォン&ソプラはどう立ち向かうのか!? 審判が間に入り紐の結び方や硬さをチェックしています……問題ないと頷きが返ってきました! 両者少し距離を置いて構えました! 審判が手を高々と上げて試合……スタートです!』


 おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


 退学をかけた紐取りが始まった!

よろしければブクマ、評価、感想など頂けると嬉しいです!よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ下記の投票よろしくお願い致します! 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ