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125 決勝を終えて

 未だ鳴り止まない歓声と賞賛の嵐の中で、キーキさんとラーラさんが優勝カップと賞金を受け取り、ナカフ音楽祭(ミュージックフェスタ)は俺たちの優勝で幕を閉じた。


 本当にこの2人の歌は凄かった……。


 今思い出しても同じステージで歌っていたとは思えない。


『さっきの歌は良かったぞ! あれ程心地よい音は我も聞いたことが無い。なぁ、アルトよもう一度聞かせてくれぬか!?』


「お前元気だな……こっちは血出しすぎて少しふらついてんだから後でな」


『戦ってもおらんのになぜ血を流すのだ? ……人間はよくわからん』


 控え室に戻りしばらくすると、コンコンとノックがありシアンが入ってきた。


「「シアン様!!」」

「シーちゃんだぁ!!」

「キレイだったよー!!」


 子供達がすぐにシアンにまとわりついていく。


「改めて優勝おめでとう。まさかあんな歌声を決勝まで隠しているなんて……思ってもみなかったわ」


「やけに素直だな……どうしたんだ?」


「音楽に関しては嘘偽りなどしないようにしてるだけよ……昨年より確実にパワーアップしたと思ってたけど、そこの2人に音楽の一番大事なことを教えてもらった気分よ……完敗だわ」


「「い……いえ。私達なんて……。それに、シアン様に順番を代わっていただいたおかげで……」」

「そうだ! 順番代わってもらっていたんだってな!! ありがとう! 凄く助かったよ」

「そうですよ! シアン様のおかげで、わたし達歌えることができたんですから!」


 ところがシアンは目を閉じて軽く首を振ったあと、柔らかな笑みを浮かべて俺たちを真っ直ぐに見てきた。


「いいえそれは少し違うわ、ステージ上でも言ったけど、あれは私が早く歌いたかったからやったことよ。気にしないで。それに、あの歌声ならば私の先に歌っても後に歌っても、あなた達の優勝が揺らぐ事はなかったでしょうから……もしまた出場する事があったら、次は負けませんからね!」


「「シアン様……」」


 シアンはビシリと俺たちを指差してニヤリと笑った。


 なるほどね、音楽祭中では平等でも、相手は貴族。自分達の都合でシアンに順番を代わってもらうなんて、とてもできない。


 そんな事が周りに知られると音楽祭が終わった後、シアンのファンや他の貴族がどんな行動をするかわからない。


 しかし、キーキさん達と順番を入れ替えた事を時間稼ぎではなく、自分のワガママという事にして突き通す事でキーキさん達に何かしらの被害が来ないようにしているのか……。


 ド派手なゴスロリ娘なだけかと思ってたけど、なかなか粋なことするじゃねぇか。ちょっと見直し……ん?


 シアンを見ると背後に怪しい影が近づいている事に気付いた。


「そうですよぉ〜シアン様ったら自分の控え室であなた方の歌声を聴くなり、すぐに飛び出して行っちゃって。帰ってきても「あんな歌声初めて聞いた!」「耳が幸せってこう言う事なのね!」「私もあんな歌を歌えるようになってみせるわ!」って興奮しちゃってぇ〜」


「ふみゅっ!?」


 いつのまにかシアンの背後に、身をくねらせながらシアンの控え室の行動をゲロる巨乳メイド様が降臨されていた。


「パレットォ!!!? そっ!! そんな事ここで言わな……ちっ!! 違うから!! 違うんだからね!!」


「あらあらぁ〜それでは皆さま、おつかれ様でしたぁ」


 そう言いながらパレットさんは、走り去ったシアンを追いかけて行った。シアンもなんだかんだで憎めないやつだな。


 そして、すぐに入れ替わりに入ってきたのは……。


「やぁ、優勝おめでとう。まさか、君たちに優勝を奪われるとは夢にも思わなかったよ」


 アニマがパチパチと手を叩きながら気持ちの入っていない賞賛の言葉を吐く。


「てめぇ!! よく顔出せたな!! 妨害なんて汚ねぇまねしやがって!! リエルとはどういう繋がりだ!!」


「リエル? 俺はそんなやつ知らねぇぞ?」


「ふっざけんな!! こっちは殺されかけたんだぞ!! 知らねえで済まされるか!!」


「そうね、事次第では憲兵に突き出して拷問いきよ」


 ミーシャもゆっくりとこちらに歩み寄ってきて、アニマに鋭い眼光を飛ばす。


 控え室内に一触即発のビリビリとした緊迫感が張り詰めた。


『まぁ、待ておぬしら』


 そんな中頭の上に乗っていたムートが待ったをかけてきた。


「なんだよムート邪魔すんな」

「待てとはどういう事ですか?」


 俺もミーシャもピリピリしてんのに、待ったをかけてくるなんてどう言うつもりだ?


『関わりが有るとすると、少なからず接触はするだろう。だが、こやつらからはさっきの緑髪の女の魔力も匂いもせん……関わりがないと言うのは本当だろう』


「マジか?」

「……」


 まさかムートに諭されるとは……。


「まあまあ、我々を疑うのも無理はない……これでも裏の顔を張っていたのだからね。部下が少しちょっかいを出したみたいだが、君達を殺せなどリエルと言う物騒な奴とは関わりなどない」


「わかったよ……とりあえずそこだけは信じてやる。で、何しにきたんだよ」


「なに、簡単な事さ。君達は俺に渡すものがある……違うかい?」


 アニマはニヤリと笑い、ある物を渡せとジェスチャーしてきた。


 なるほどね……さっさと渡してお帰り頂こう。


「キーキさん……」


「ええ……」


 キーキさんがそれを持ってアニマに渡した。


「アニマさん、借金完済金額の金貨1000枚です、お確かめください」


「……おい、お前ら」


「「「へいっ!!」」」


 アニマの部下達が机に金貨を広げてその場で数え出した。


「アニキ、間違いありません」


「……そうか」


 アニマは懐から契約書を取り出し魔力を込めると、一気に青い炎に包まれて契約書は一瞬で燃え尽きてしまった。


「おめでとう、これで借金完済だ……。そして、心より非礼を詫びよう」


 なんとアニマはその場に跪き土下座をしてきた!


 さっきまでの威勢はどこ行ったのだろうか!?俺は突然の土下座に驚いたが、すぐに我に返りアニマを睨みつけた!


「何が非礼を詫びようだ!! 今更謝っても俺の怒りは収まらねぇからな!! とりあえず一発殴らせろ!!」


 俺がアニマを殴るため近づこうとすると。


「「「待ってくだせぇ!!」」」


 アニマの部下達が間に割って入ってきた。


「なんだ!? どけ!! てめぇら!!」


「アニキがこんな事をしたのには理由があるんでやす!」

「そうなんです! とりあえず話を聞いてください!」

「お願い殴らないで!!」


 なんだよ!? めちゃくちゃ必至に食い下がってくるんですけど!? 女の子に懇願するようにすり寄ってくる強面のおっさん達……絵面的にもヤバイんですけど!?


「とりあえずこれを見て下さい!」


 アニマの部下達は一斉にサングラスを取った。


「あ……」


 サングラスに隠されていた目は全員透き通るように青かった。

めちゃくちゃ寒い!冷えすぎて布団やコタツから出れる気がしない!!


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