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12 居候

ここまでのあらすじ。

転生してダンとシーラの娘、アルトとして生きる事になった。

7歳になり隣町ベルンで、青髪青目の超絶美少女ソプラに出会い一目惚れしてしまう。

帰り道、第1級指名手配犯の土塊の魔女リエルに襲われ窮地に立たされるが、雷に打たれて覚醒する。

殺されたダンとシーラを不思議な魔力で生き返らせ、リエルを撃退後意識を失ってその場に倒れた。

「今日からよろしくお願いします!」


 ちょうどお昼を回ったあたり、ベルンの教会の前で大きな声の挨拶があった。


 そこには体に似合わない大きなザックパックを背負う小柄な金髪のアルトが鼻息荒く目の前の人を見上げていた。


「は〜い、元気があっていいわね! 今日からよろしくねアルト」


 ニカッと笑うタラコ唇から見える白い歯を光らせながら身長2mを超えるムキムキマッチョな修道服、A級魔術師ミーシャが両手を腰に当てやや腰を折り俺を見下ろしてくる。相変わらずでかい。


 この体格と野太い声で威嚇されたら大抵の人は身を竦めて動けなくなりそうだ。


「急な頼みを聞いてくれてありがとうカルロス……今の私達ではこの子を守れないの……あの時ちゃんと修練しておけば」


 俺の後ろでシーラが今にも泣きそうな顔で言葉をこぼす。ダンはその横で悔しそうに下唇を噛み締めている。


「やーねシーラ、昔の事をほじくり返さないの! それに困ったらいつでも頼って来なさいとも私は言ったわよ!」


 さっきの笑顔を引き締めシーラを見つめるミーシャ。

 この2人は一体どう言った関係なんだろうか……。


「うん、わかってる。でも悔しいの……大事な人を無くすのはもう沢山だと思ってたのに……家族を守る事さえ……」


 シーラの瞳にうっすらと涙が溜まっていく。


「はいはい、泣き虫はまーだ治ってないみたいね。いい? シーラ! 『過去に囚われず新たな道を開き、必ず幸せになる』と私の前で誓いを立てたのは何処のだーれ?」


「それは……」


「それに、ダンも『シーラは必ず俺が守る』と言った手前、歯が立たなかったけどあのリエル相手に必死で戦ったのは恥ずべき事ではないわ。流石に相手が悪すぎよ……」


「すいません……本当役立たずで……」


 ミーシャがダンにも声をかけるが、ダンはさらに眉間にしわを寄せ悔しい表情になる。


 あぁ、重苦しいなぁ……こんな空気余り好きじゃないんだよなー。どうにかして元気付けさせないと2人共、悲壮感の塊の様な顔をしているよ。


「まぁ、命あって何よりだしこれからあなた達もサボっていた修練を積むことね。あとシーラ、私の事はミーシャだと何度言わせるの!? 今度間違えたら、その重そうな胸肉を引きちぎってやるわよ!」


「いぃ!? ごめんなさい! もう言わないよ!」


 顔を赤らめ両手で胸を覆うように体を捻り焦るシーラとそれを横目に微笑を浮かべるダン。本当、仲が良いなここまで打ち解けている人は村にもあまりいない。


「父さん! 母さん! 心配しないで! 私が強くなってリエルやっつけちゃうから!」


 さらに心配させまいと両手を腰に当て一生懸命胸を張ってみた。

 しかし、バックパックが重すぎて後ろにヨロヨロと後ずさり尻もちをついてしまった。

 やだ、恥ずかしい……。


「あははは! この子は2人よりも大分前を向いてるわね! 威勢もいいし、こりゃ本当に倒しちまうかもね! あははは!」


「ふふふ、アルトありがとう」


「7歳の娘に言われちゃ親の威厳も形無しだよ……」


 よし、場の空気もすっかり和んだようだ結果オーライだ。

 ただ、俺は辺りを見回してもソプラがいない事が気になった。


「ねぇミーシャ、ソプラはいないの?」


 尻もちをついたままバックパックに後頭部をのせてミーシャを見上げるようにソプラの居場所を聞いてみた。


「ソプラなら裏の林で焚き付け用の小枝を拾ってるわよ。アルトも今日から居候の身だし早速仕事をしてもらおうかね。バックパックは私が運んでおいてあげるからソプラの手伝いをお願いできるかい?」


 ミーシャがニカッと笑い仕事を振ってきた。


「了解しました! いっぱい集めてくるよ!」


 そう言って俺は一目散に裏の林に駆け出した。




 * *




 ミーシャは俺を見送った後一つため息をついてシーラとダンに目を向ける。


「アルトは不思議で本当に強い子だ、我らに感づかれぬよう気を使う素ぶりなどとても7歳とは思えん。さらに、以前あった時より格段に魔量も増えている様だ。ほんの数日の間でこれは考えられん」


 普段見せそうにもない鋭い眼光と声音は歴戦の戦士の顔つきと遜色ないものであった。緩やかな空気も一気に張り詰めるようだった。


「ダン、シーラ。アルトの事とリエルの詳細を中で詳しく話してもらうぞ」


「「はい」」


 そして、3人は教会の中に入ってあの日の出来事を事細かに話したのだった。

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