117 控え室での衝撃
『ではまず、運命の抽選を行います! 代表者前へ!!』
俺とシアンとアニマが司会のコンディーさんのいるステージ中央に集まる。
コンディーさんは皆の表情を見てニコリと笑いながら抽選の棒が刺さった筒を俺たちの前に差し出し、皆がそれに手を伸ばした。
演奏の順番を決める抽選……なるべくなら緊張の少ない真ん中を引きたい。……頼む!!
俺は願いを込めて、勢いよく棒を引き抜いた!
くじに書かれていた番号は……。
『抽選結果を発表します!! 一番手はアニマ率いる! 暗黒爆鬼!! 続いてナカフ・ターカ合唱団!! そして、大トリにパステル・シアン様だぁあーー!!!!』
「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」
「ふぅ……」
よかった……なんとか思ってた番号引けた。これで多少は緊張も緩和するだろう。
「私がトリね……これで最高の舞台が整ったわ。お二人とも都合よく前座になっていただけましたし、今回の優勝も私で決まりのようですわ」
「何おう!?」
シアンは俺にニヤリと笑いかけて、すぐに観衆に両手で手を振りながらステージを出て行った。
おのれシアン……余裕見せつけてくれるじゃねぇか、流石前回優勝者……ん?
ちょっとまて、シアンもたしか俺と同じ10歳のはずだろ? 6歳の時に優勝してんのかよ……まじか。
シアンの余裕の貫禄にゴクリと唾を飲み込んだ時。
「さっさとステージから降りてくれないかな? 楽器のセットが出来ないんだが?」
「うっ……」
後ろから嫌味な声が聞こえてきた。
「ふん、この観客の多さに腰が引けたか? 逃げてもいいぞ、借金は全額返してもらうがな!! ははははは!!」
「ふざけんな!! テメェこそ首洗って待ってろよ!! 借金返したらその顔思いっきりぶん殴ってやる!!」
俺はアニマによく見えるよう、サムズダウンをかまして踵を返した。
「ふふふ……何事も無ければ良いがな……」
アニマは俺がステージを去る際にも嫌味な言葉を吐き捨ててきた。
くそったれ、絶対負かしてやるからな!!
* *
控え室に戻ってきたら、俺をねぎらって出迎えてくれたけど、みんな何処と無く落ち着かない様子でウロウロしていた。
そんな中でもピアノの上で無造作にグースカ寝てるムートを見てると、一回ど突いてやろうかと思ってしまう。
俺がふぅとひと息つき椅子に腰を下ろすと。
「キーキ姉ちゃん……おしっこ……」
「えっ!? 今!? 早く済ませておきなさいって言ったのに!!」
丁度1人の子供がキーキさんにトイレに行きたいと袖を引っ張っていた。
「もう!! 他にトイレ行きたい子いる?」
「「「はーい!」」」
他の子供達も緊張からか、トイレに行きたいと次々に手を挙げた。
「ちょっとトイレ済ませてくるわね」
キーキさんは子供達を引き連れて、慌てながら控え室を出て行った。
「はーい、行ってらっしゃい」
「おーい、他の奴らは本当に大丈夫だろうな!?」
「さっきまで走り回ってたけど、やっぱり緊張するよね……ミーシャは緊張してない見たいだけど?」
『クックゥ』
「私も多少は緊張してるわよ。まぁ、場数の違いね」
みんなそれぞれ緊張しているようだ。あの大勢の観客の前だし、緊張しない方がおかし……。
そうだよ、あの大勢の観客の前で歌うんだよ!! あっ、やば……今頃になってめっちゃ緊張してきた。
ソプラとラーラさんを見ると、結構余裕ありそうに談笑してる。そういえばシアンに緊張をほぐす魔法かなんかをかけてもらってたっけ?
ちくしょう! 俺もかけてもらえばよかった! だが、今更もう遅い……くそっ! 落ち着け俺!
えっと……たしかこういう時は人を手に3回書いて……。
「アルトお姉ちゃーーん!!!!」
ビックゥ!!!?
突然さっきトイレに行った子供の1人が大声で叫びながら控え室に入ってきた!
「驚かせるなバカ!! ……おまっ!! ……バカァ!!」
ビックリして語彙力無くなった為か、とりあえずバカと叫んでしまった。
「うぇ!? ……ご、ごめ……ふぐっ!!」
子供がそんな俺の剣幕にたじろぎ、今にも泣きだしそうになった所を見て俺は我に返った。
「っは!! いや! ごめん!! ちょっとビックリしたもんだから……」
「もう、アルトちゃんも緊張してるからってそんな怒らなくても……どうしたの?」
『クックゥ』
ソプラが泣きそうになる子供をかばい、突然入ってきた訳を聞いた。
「うっ……ふぐっ!! キーキ姉ちゃんが……キーキ姉ちゃんが連れていかれちゃった!!」
「「「「なにぃ!!!!!?」」」」
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