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110 妨害対策はノリノリで

「さてと、今後の妨害対策を立てないとね」


 ムートを頭に乗せ、手をパンパンとはたきクルリと向き直った。


「ドラゴンさんかっこいー!」

「アルトお姉! 最後に言った言葉なんて言ったのー?」

「キャハハ! とんでったー!」


「風魔法も使わずに羽ばたいた風だけで吹っ飛ばしたよ……」


「出会った頃からも思ってたけど、アルトちゃんもその小さいドラゴンさんも規格外すぎだよね?」


 子供達はムートの活躍に大興奮!キーキさんもラーラさんも、どこか呆れた表情でこちらを見ているが気にしないで話を進めよう。


「ミーシャ、妨害工作してくるなら多分スピーカーやマイクを狙ってくるはずだよね」


「そうね、音風の中に紛れ込ませた風魔法で、そのどちらかを狙ってくるのは予想がつくわ」


「でも、流石にミーシャでも両方守るのはきついよぉ」

『クックゥ』


 風魔法が使える武闘派の3人で話してると。


「すぴーかーとまいくなら、すぴーかーの方が狙われやすいと思うわ」


「うん、どっちかと言うとすぴーかーのほうだろうね」


 キーさんとラーラさんがサラッとスピーカーの方がだと断言した。


「2人ともスピーカー? なんで?」


「えっとね、まいくは私達の近くに設置してあるから、もしも風魔法が歌ってる私達、もしくは演奏者のアルトちゃんに当たれば、それだけでルール違反となり即退場になっちゃうの」


「それにキーキが指揮者として前に立っているから、余計にまいくが狙いづらい。必然的に狙いやすいスピーカーへの妨害が考えられるんだよね」


「ルールを破らない限りの妨害は審査員も認めているし、それにより発生する上昇気流に観客が乗って遊ぶのも音楽祭の醍醐味だからね!」


「なるほど……」


 さすが地元の2人、何度も音楽祭を観戦してるから妨害工作の方法なども熟知している。


「それなら、私でもある程度は対処できそうだけど……すぴーかーは2つもあるし、流石に多人数で来られると守りきれないわ」


「「「「「うーん……」」」」」

『クックゥ?』


 俺たちが妨害対策に頭を悩ませていると。


『ふぁんだ? あの箱ふぉ風ふぁら守れはいいのはろう?』


 俺たちの上を子供達にもみくちゃにされながら飛んでいるムートが話に入ってきた。


「ん? ムートなんかいい案があるのか?」


『なに、我ひゃはへへふひほは……』


「まず、背中の子供達を下ろしてこい!」



 * *



 二次予選の日になった。


 一次予選の噂を聞きつけたのか、観客は他の予選パートの所よりもかなり多く集まっているようだ。


 俺たち以外のチームも所定の配置につき、音合わせなどをしている。


 対戦方式は一次予選と変わらないが明らかに空気が違う……。


 対戦チームからは殺気立つような目線がジリジリと注がれていて、完全にマークされているようだ。


「なあ、ムート本当に大丈夫だろうな?」


『うむ、任せておけ! これくらい容易いものだ』


 小さな胸をぐいっと張ってムートは自信満々のようだが、ちょっと心配もあるんだよね。


 今回競うチームは10チーム。


 大体1チームの風魔法使いは1〜2名、多くても3名くらいなんだそうな。


 でも、今回は明らかに各チーム風魔法使いっぽい人が多い。


 全てのチームを合計すると50人くらいいそうなんだけど……。


 こんな雰囲気で子供達は大丈夫かな?と見てみたら、早く戦いたいと目をギラギラさせていた。


 少しはビビったりしないもんかねぇ……ナカフの子供達は強い。


『安心せいアルト。この箱に傷一つ付けさせぬわ』


「……わかった、頼んだぜ!」


 審査員達が所定の位置に着くと、風魔法が展開され、緩やかに風が強くなっていき、まるでうねりを上げて襲いかかってきそうな大波のようだ!


「みんな!! 最初っから飛ばして行くからしっかり付いて来いよ!!」


「「「「「オー!!!!」」」」」


 みんなの気持ちも高まっていて、緊張感も申し分ない……いい感じだ。


 よし! ノルしかない! このビッグウェーブに!!


「それでは二次予選を開始します!始めぇ!!」


 審査員の合図と共に、可視化できるほどに膨れ上がった風波が一気に襲いかかってきた!


「しゃらくせえ!!」


 それをスピーカーから射出される音の爆弾で一気に蹴散らした!!


 だが、音波は止まることなく次々にスピーカーめがけて襲いかかってくる!


「ムートォ!!」


『うむ!!』


 音波に合わせてムートが左右のスピーカーの上をぴょんぴょんと飛び回り、小さい翼をパタパタと羽ばたかせた!


 それを見た観客は。


「見てー! 小さいドラゴンさんも踊ってるー」

「歌ってる子供達も、かわいいわねー」

「ここの音風のノリは初日並みの激しさで最高だ!!」

「はははは! いいぞー!! ターカ教合唱団!!」


 ポップな曲とダンスを交えた合唱は注目の的で、次々と人集りが出来ていく。


 そう、見た目はかわいいのだ。


 見た目はね……。


 俺は演奏しながらチラッと他のチームを見て見ると、とんでもない形相でこちらを見ながら演奏していた。


「ちくしょう! なんなんだアレ!? 俺たちの曲が審査員に全然届かないぞ!? 妨害班は何やってるんだ!?」

「全力でやってるわよ!! でもおかしいの! 何故か全員の風魔法が完全に相殺されてしまっているみたいなのよ!!」

「馬鹿言ってんじゃねぇ!! わざわざ敵対する他のチームとも結託して掻き集めたこの人数の妨害風魔法が、相殺なんかできるか!! 魔力なんて感じねぇぞ!?」

「いったい、どうなっていやがるんだぁ!?」


 各チームの悲痛な叫びが響いてくる。


 そう、実はスピーカーの上でムートはただ踊っているのではなく、翼で巻き起こした風で妨害魔法を相殺してもらっていたのだ。


 目の前まで荒れ狂う音波が来ると、ムートが翼をパタつかせ、ふわりと柔らかな風に強制的に変化させてしまっている。


 ちょっと心配だったけど、任せてみたらなかなかいい仕事するじゃないか!


 あと、なりふり構わない物理妨害なんかも想定していたけど、裏でミーシャが護衛を頑張ってくれているみたいだ。


 予選が始まって既に何人かの悲鳴が聞こえてきているし、こんな時のミーシャは一切容赦しない……。


 ある意味、物理妨対策してきた奴の方が気の毒に思うレベルである。


 おかげでこっちは演奏に集中することができるってわけだ。


『ぬはははは! いいぞ!! もっとだ!! もっと踊るぞぉ!! ぬはははは!!』


 ムートはノッてきたのか、更にリズミカルで踊るように音波をさばいている。


 ……うーん、あれは完全に踊りたかっただけだな。


 そして、難無く二次予選を通過した俺たちは、その後の数々の妨害も物ともせずに順当に勝ち進み……。


『……決勝戦に勝ち進む栄えあるチームは……ナカフ・ターカ教会合唱団!!』


「やったぁー!!」

「あわわわ……け、決勝戦まで行ちゃった……」

「僕たちあそこで歌えるんだよ!! スゲー!!」

「夢じゃないよね!? 夢じゃないよねー!?」


「キーキどうしたのさ!? 決勝だよ!? あたしらついに決勝まで来たんだよ!! もっと喜びなよ!!」


「え……ええ、そうね。みんなよく頑張ってくれたわ」


 子供達が決勝進出に思い思いの反応を見せている中、1人曇った表情のキーキさんがいた。


敗戦チーム達「あんなの反則だぁあああ!!(泣)」



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