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106 準備万端

 次の日から教会のみんなでの特訓が開始された。


 まず、子供達の体力をつける為に、毎日走り込みや発声練習、お腹いっぱい食べてから休憩をとって、また練習の毎日を送ってもらった。


 俺とソプラがいつもやっている、ミーシャスペシャル体力アップ訓練は流石に無理なので、メニューを少し軽めにしてゲロ吐く程度にまで抑えてもらった。


「じどーぎゃくたい、ってやつだ!」

「わたしたちは楽しく歌いたいの!」

「ゴリラさんシスターになんか、なりたくない!」


「じゃあピアノは無くなっちゃうし、このおいし〜い食事もいらないんだな?」


「「「「「ぐぅ!!?」」」」」


 ふふん……胃袋を鷲掴みにされた子供達よ。アルトちゃん特製タレで焼いている、焼きミリクックの香ばしい香りから逃れられようものなら、やってみるがいい!!


 俺はジュワジュワとおいしい音と香りをたてる七輪の前で、パタパタとうちわをあおぐ。


 子供達に魔物のような鋭い目で威嚇されてるけど、許せ……これは必要なことなのだ。


 子供達に大不評の体力訓練だったけど、特訓後の美味しい食事の前で空腹状態の食欲には勝てず、文句を言いながらもなんとか食らいついてきてくれた。


 そのおかげで、ひょろひょろだった子供達も、今では見違えるようにたくましくなった。


 うん、みんなよく頑張った。


 ちなみに、俺は宅配の仕事もあるので、付きっ切りでの特訓や伴奏はできないと思っていた。


 そしたら、蓄音機みたいな魔道具をラーラさんが借りてきてくれた。


 それにピアノ伴奏を録音して、俺がいない間もみんなでその曲に合わせて毎日練習に取り組んだ。


 そして、ナカフ音楽祭(ミュージックフェスタ)に向けての練習期間の1カ月は、あっという間に過ぎ、一次予選を行う前日になった。


 子供達も頑張ってくれたおかげで、1カ月前とは比べものにならない程、声量や声質も上がり、素晴らしい完成度を誇るターカ教合唱団が出来上がった。


 子供達が明日に備えて寝静まった頃、俺とソプラとミーシャ、キーキさんとラーラさんで食堂のテーブルを囲んで最終ミーティングをしていた。


「いよいよ明日ね……緊張してきたわ」


「今から緊張してたら本番まで持たないぞキーキ」


 キーキさんは、まだ曲の途中で声が出なくなってしまう事が克服が出来ていないが、大抵の曲は通しで歌えるようになってきていた。


 予選は明日から1カ月……決勝までには歌えるようになってもらう予定だ。


「みんな頑張って練習したから、予選通過間違いなしだよぉ」

『クックゥ』


「そうね、子供達もよく頑張ったわ」


『日を追うごとに上達していく童達の歌を聴いているのは楽しかったぞ』


「1カ月しかなかったけど、子供達の伸びしろ半端なかったよね」


 みんなで口々に子供達の成長を褒めていく。


 でもラーラさん曰く、それでも予選を通過するのは簡単な事じゃないらしい。


 それは、ナカフ音楽祭(ミュージックフェスタ)出場者の半分が落とされる一次予選の選定方法にあった。


「まだ話聞いていても、ピンとこないんだけど、一次予選ってそんなに凄いの?」


「一次予選は、ナカフ音楽祭(ミュージックフェスタ)初日のメインイベントですからね。大通りを貸し切っての激しい演奏合戦は圧巻なんですよ」


「予選を戦う演者と観客の熱気と、音を拡散する風魔法が町中で渦を巻く、ナカフ音楽祭の名物『嵐の予選会』は見る分には本当に楽しいんだけどねぇ……」


「私も昔、見に来たことがあるけど、風魔法の応酬はこの国一番と言っていいほどの規模と派手さがあるわ」


「ミーシャがそこまで言うんだから、凄いんだろうね。あーワクワクしてきたよ!」


 前世からライブなんかのイベントに参加する事は大好きだったけど、自分が演奏する側にはなったことがなかった。


 どんなに年くってもこんなイベントは、血湧き肉躍るような興奮がたまらないよなぁ。


「ワクワクもしていられないですよ。私達は曲や歌の練習はしましたけど、予選を通過する為の風魔法ができないんですから」


「そうだよ、音楽を届ける風魔法がなきゃそもそも予選すら通らないんだ。そのあたり大丈夫なんだろうね?」


「そうよアルト、いくらみんなが実力をつけたからって審査員に歌声が届かなきゃなんの意味もないのよ?」


「アルトちゃん、その……秘密兵器ってのは大丈夫なの?」


 俺のワクワクをよそにみんな心配するように俺を見てくるけど、そのあたりも抜かりはないよ!


 俺はニヤリと笑いグッと親指を立てる!


「あぁ! バッチリだよ! 初めて作る物だったからみんな戸惑ってたけど、なんとか完成したよ!! ムートも驚いてたしね」


『うむ、あんな物は我も初めて見た。アレを使っての音楽を早く聞いてみたいものだ』


「へぇー見たーい♪ アルトちゃんみせてよぉ!」


 ソプラが前のめりになり、秘密兵器を見せてと懇願してくるけど……。


「へへへ、本番までの、お・た・の・し・み♪」


「むぅー」

『クックゥ』


 ソプラがクーちゃんと一緒にぷぅっと頰を膨らませて拗ねている。


 なにそれ、めちゃくちゃかわいいです! もっと……もっとそれください!!


「うーん、アルトちゃんがそう言うなら大丈夫……なのかな?」


「あたしはまだ半信半疑だけどねぇ……」


「私はアルトがまたなんかやらかすんじゃないかと心配で仕方ないけどね……」


 みんなが心底心配するような目線……いや、あれは心配というより疑惑!?


 大丈夫ですよ! 不正とかそんなんじゃないから! 運営にも問い合わせて許可ももらった合法的な方法だからね!


「心配しなくても大丈夫!! ナカフ音楽祭(ミュージックフェスタ)で旋風を巻き起こし、曲も歌も優勝もまとめてお届け! バハムートの宅配便に任せなさい!!」


 ナカフ音楽祭(ミュージックフェスタ)……暴れまくってやるぜ!!

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