表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集 ホラー

ソラマメ

作者: 燈夜

 遮断機のない踏切を知っているだろうか。

 ド田舎にあるアレだ。


 とあるお婆さんの畑は自宅の向こう側、踏み切りの向こう側に畑を持っていた。

 そう。

 自分の畑に行く途中、踏み切りの中で腰を痛めてしまってね。

 何もかもが間に合わなかったのさ。


 その日には息子や孫が遊びに来る約束になっていて。

 お婆さんはきっと張り切りすぎたんだね。

 季節の空豆を食べさせようって話になっていたらしい。

 なんでも息子さんの好物だったとか何とか。


 で、だ。

 

 花が手向けられた。


 それだけの話。


 後日、踏み切りに遮断機がついた。

 当然だね。

 だってその踏み切り、通学路にもなってたし。

 危ないじゃないか。


 んで、ある日。

 小さな子供さんの手を引いた若いお母さんが踏み切りを渡ってた。

 でもお母さんは違和感に気づく。

 重いんだ。

 子供を見たね。

 お母さんは見た。

 子供の足に皺枯れた手がしがみ付いているのを。


 若いお母さんは手を子供の手が抜けんばかりに一生懸命引っ張ったけど。

 ふっと力が抜けたらしい。

 会社員の人が飛び込んだんだ。

 お母さんと子供さんの手が離れたって。

 お母さんは助かった。

 子供さんは……あれだね、残念だったよ。


 で、踏み切りにまた花が手向けられた。

 丁度さ、お婆さんの孫と同じくらいの年齢の子供さんだったらしいよ?


 ああ、会社員の人?

 丁度おばあさんの息子さんと同じくらいの年頃でね。


 会社員の人はある日、違和感を感じたんだ。

 遮断機がカンカンと鳴り出した。

 でも、足元を見れば若い女の人の腕が足首を掴んでいてね……。


 え? この花?

 そうさ。空豆の美味しい季節の話だよ。

 若いお母さんのその後?

 知らないねぇ。知らないがいい事もあるのさ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 お婆さんは孫に会いたいという思いが強くて同じくらいの年齢の子供の足を掴んでしまったのかもしれませんね。
[一言] その手の踏み切りは仕方ないものも そもそも遮断機高い 蒸気機関車の時代は大変で、轢いたかどうかもわからんなか、急制動をかける。するとだいたい五、六百メートルは止まらないからこの間に散らばる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ