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第八話  戦略

 




 蓮の部屋に入って、蓮は机の椅子に座り、俺は机の隣のベッドに腰かけた。

 蓮は、白紙のA4の紙を机に広げ、シャープペンを二本引き出しから取り出して、一本を俺にくれた。


 白紙の紙に、大きく円を二つ書いた。

 それぞれの円に、「味方」と「敵」と記入し、円の「味方」の方にまず蓮、俺、蓮の両親と地球内外の同胞と書いた。

 そして、敵の方に「レプタリアン」と記入した。


「レプタリアンっていうの?敵の種って。」


 俺は突然でてきた単語に戸惑い、確認した。


「んーこれが地球上で知られてる宇宙人の種類の中で、アイツらの種を指してると思われる一番適した呼び方かなと思って。一応こう呼ぶことにしたよ。

 俺らの種は、人間が分けた宇宙人の種類でいえば、ベガ星人とかアイア星人っていうのにあたるみたい。

 俺らは自分自身の呼び名は、一応あるんだけど発音してもたぶん人間には聞き取れないと思うんだな。

 モスキート音に近い高周波で話すから。だから一応人間の言葉に置き換えて、アイツらを「レプタリアン」、俺らを「ベガ」と区別して、呼ぶことにするよ。」


「了解! 」


「アイツらは、本当の見た目は爬虫類に近くてね。

 まあ、正直すごく醜いね。だけど、常に「進化」することを目的として、あらゆる科学技術を極めてるんだ。

 俺らの超回復能力を手に入れようとしているのも「進化」のためだね。

 ただ、やり方がすごく合理的で、好戦的なのが欠点でね。

 殺してでも奪えってのが、基本なんだ。

 その中でも特に、強くてレプタリアンの中でも凶暴な種が、『ネフィリム』って呼ばれている巨人族でね。あまりに凶暴で、お互い共食いしはじめるほどなんだ。

 地球上にいるのかまだわからないんだけど、こいつら筆頭に他のレプタリアンと組んで、俺らを襲い始めたんだ。

 ラスボスみたいなもんだね。

 ただ、体が大きいから現代の地球ではちょっと目立ちすぎるし、シェイプシフターの能力は高くないから、地球になかなか来れないんだと思う。宇宙では無双してたらしいけど。

 実際、地球上で活動しているのは人型に擬態できるレプタリアンで、ネフィリムが宇宙から指示してるって考えるのがいいだろうね。

 だから、ネフィリムとの直接対戦にはならないと思うんだけど、他のレプタリアンとの直接対戦は今後必ず出てくるから戦えるようになってないとダメだね。」



 蓮の口からスラスラとでてくる敵の情報に、圧倒されながらもなんとか自分を奮い立たせた。

 蓮も今まで話したくても誰にも話せなかったことを、遠慮なくすべて話せることに快感でも覚えたのか、普段の口数の少ない蓮からは想像もできないくらい饒舌だった。


「レプタリアンにもいろいろと種があって、対戦して相手を確認するまで、正直どんな戦闘能力やスキルを持っているのかがわからないんだ。

 見た目も人間に擬態してるから、なかなか見分けがつかなくて。

 匂いとか雰囲気でわかる場合もあるらしいけど。俺にはまだ難しくて。

 両親いわく、今まで戦ってきた奴らは、だいたいが体が武器になるのが多くて、手足が触手とか鎌状になるとか、鋭い爪で掻き切るとか。後は口や手足から酸に似た液体を噴出して、相手を溶かす奴もいたって。

 ただ、こういうやつらの知能はちょっと低めだから、だいたいなんとかできるんだって。

 戦い方が一辺倒で単純なんだってさ。まあ一番身近なので言えば、映画のエイリアンみたいなやつだね。

 問題は、ビームとかレーザー光線みたいなのを発する系と強い念動力つまりサイコキネシスを使う系だってさ。

 念動力で体全体を抑え込まれて、ビームやらレーザー撃ち込まれてやられることが多いんだって。

 相手の念動力を打ち破るさらに強い念動力をこっちが持ってないといけないね。」


 蓮は、そのあと少し黙り込んだ。唇をかみしめ、何か考えてるようだった。


「俺もサイコキネシスの能力はあるんだけど、弱いんだよな・・・。」


 と言い終わらないうちに、紙とシャープペンがふわりと宙に浮いた。

 目線を俺の方に向けると、ベッドから俺が浮き上がった。


「わぁぁぁぁああ!! 」


 俺はあまりの出来事に、手足を空中でバタバタ動かした。

 しばらくして、すっとまたベッドに腰かける形で着地した。


「突然ごめん。物を少し浮かすとか動かすとかはできるんだけどね。

 巨大な物体を動かしたり、相手を強く拘束したりってのは、練習する場所や相手がなくてやったことないんだ。

 親相手にやっても親のほうが強いからね。

 でも、これからはちょくちょく壮君に技かけて行こうと思う。」


 そういうと、S気たっぷりに蓮がニヤリと笑った。


「やっ!!!やめてよ~~~!!! 俺対抗できないじゃん!!

 怖いわ~~蓮さん。突然Sにお目覚めになるなんて。

 ん――、でもまあスキル延ばすためだったらしょうがないのかな~~。

 仕方ない、練習台になってやるよ。どんどこいってんだ~~!!」


 蓮は笑いながら俺に礼を言った。


「ありがとう。あと俺が今持ち合わせてる能力は、火をつける能力いわゆるパイロキネシスと小さい爆発を起こせたり、稲妻っていうかちょっとした電気を発生させたりできるかな~。どれもサイコキネシスの応用だけどね。

 悲しいのは、どの能力もショボいってとこなんだよね。爆発的な破壊力とかがないんだよね~。

 実は、5歳のとき溺れた壮君助けて、力使っちゃったんだけど、案の定見つかって、すぐさま拉致されたことがあったんだよね。

 その時初めて力を使ってみたんだけど、一撃必殺ってわけにはいかなくて、かなり色々スキルを組み合わせて何とか倒せたんだー。

 ひとまず全滅させることはできたから、それ以上の追手は来なかったんだけどね。

 まあ、用心のために、数か月間は、見つからないように、俺は別の姿で生きてたしね。壮君覚えてるかな?

 拉致あとのショックで入院してるってことにされてたと思うけど。」


 そういえば、幼稚園に蓮が来なくなったときが一時期あった。

 よく事情はわかってなかったから、寂しくてよく泣いてて、敦に励ましてもらってたような気がする。


「まあ、この俺のショボい力をなんとか組み合わせて、頭使いながら戦っていくしかないね。序盤は。

 両親はまあまあ強大な力もってるけど、全員がその場にいるってことは正直そうそうないだろうからね。

 まずは、よく一緒にいる俺たちが二人だけでも一人だけでも戦えるようになってることが重要だね。

 親にも俺にもテレポーテーション能力はないからね。いつでも助けてもらえるとは限らないよ。

 その覚悟はしておいたほうがいい。」


「うん、わかった。俺何にも能力ないから、ひとまず危ないときは全力で逃げるわ。

 今はそれしかできない。足手まといになるかもしれない。なるべく怪我とかしないように気を付ける。

 蓮にこれ以上回復の能力使わせないようにがんばるわ!」


「ありがとう、壮。

 今後、もしかしたら壮にも何か能力が目覚めるかもしれないし、何も変化が起きないかもしれない。

 いずれにせよ、敵が攻めてくるのは間違いないから。

 拉致しかけてきた相手が間違いなく、もう一度来る。

 壮君を人質に取られたりしたら、俺きっと身動き取れなくなるから。

 そうならないように、壮君を守りつつ俺は戦うよ。」


「オッケー!」


 俺と蓮は、パシっと手と手を握り合った。

 いつ敵が襲い掛かってくるかわからないけど、お互いの意思確認ができて、共通目標を持つことができた今、なんだか無敵な気分になっていた。

 この高揚感は、戦いの前の武者震いって奴なんだろうか。

 今は恐怖よりなにより、あの拉致してきた奴らをどうやって攻略するか。

 そのことだけで頭がいっぱいだった。


 二人で、戦いに向けて士気を高めているときに、

 俺の部屋のほうから、母親ののんきな叫び声が聞こえてきた。


「壮~~~、ごはんよ~~~!降りてきなさ~~い!

 降りてくるとき、ちゃんと洗濯物とゴミを持ってくるように~~~!」


 急に現実に戻された感があった。

 あまりに普通の生活感あふれる母親の呼びかけに、俺はかくっとなりながら、「は~~い!」と精一杯の

 返事をした。


「今日のところは、これでお開きにしよう。」


 と蓮がクスクス笑いながら言うので、言う通りにすることにした。


 昨日までとは、まるで違う今日。

 本当のことがわかった今、もう後戻りはできない。


「蓮君、またね。なんかあったらすぐ連絡して!」


「うん、壮君も。」


 お互いうなずき、俺は屋根づたいに自分の部屋へ戻っていった。


 空はいつの間にか真っ暗で、あっという間に時間が過ぎていったことに驚いた。


 次の瞬間、何が起きるのかわからない世界に俺は足を踏み入れたのだ。


 でも、俺は不思議となんの後悔もしてなかった。


 どんな瞬間でもこい。


 どんな明日でもこい。


 迎え入れてやる!











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