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第七話  覚悟

 


 

「なんか、こう改まると何から話せばいいか困っちゃうね。」


 蓮がどうしようかなって顔しながら笑う。

 なんか久しぶりな気がした。ちゃんと笑ってる蓮。

 毎日見てたはずなのに。

 なんだか話しづらそうだったので、俺から切り出すことにした。


「実はさ、森さんからちょっと聞いたんだけど、森さん・・・あの日あの事故の現場、目撃しちゃったんだって。

 んでさ、車に跳ねられた直後の俺を見たそうな。血だらけで死にかけの俺ね。

 そりゃそうだよね。店内ではねられて、ふっとんで壁に激突して、無傷でいられるはずないもんな。

 森さん、血だらけで重症の俺を見て、怖くて逃げちゃったんだって。

 でも、翌日けろっとして登校したもんだから、あのときあんなにびっくりしてたんだよ。

 にしても・・・なんで傷だらけの俺が、無傷の状態で生還できたのかな。

 やっぱ、蓮には不思議な力みたいなのがあるのかな? 」


 蓮は、ゆっくりうなずいた。


「俺が、回復させたんだよ。俺のしゅの一番特殊な能力がそれ。

 俺自身にも備わってるけど、自分以外の生物にも適用できるんだ。

 今回のあの事故についていえば、一瞬でも力を使うのが遅かったら壮は死んでた。

 理由はあとで話すけど、本当はこの力を極力使いたくなかったんだ。

 でも、もう考えてる暇なんてなくて、目の前で壮の命が消えかけてて。

 即死じゃなかっただけ、神様に感謝しないとね。

 さすがに、完全に死んでしまったものを生き返らせることはできないんだ。」


「そんな便利な力なら、ガンガン使っちゃえばいいじゃんか!

 完全回復させちゃうと不自然になるなら、適度に回復させるとかうまい具合にできないの? 」


 俺の能天気な質問に、蓮は苦笑しながら答える。


「できるよ。

 でもね、この能力を狙ってる他のしゅがいるんだ。

 簡単にいえば、超回復能力ってのは不老不死だからね。

 この能力を解明して、手に入れたいんだよ、不老不死を。

 まあ、欲しがる気持ちはわかるけどね。でも、こっちはたまったもんじゃないよ。

 好きで手に入れた能力じゃないのに、もって生まれた能力なだけなのに、生まれたときから狙われ続けるんだよ。

 ひどい話だよ。

 で、さらに厄介なのが、この能力を自分自身に使うのは問題ないんだけど他者に使うとそいつらに見つかるんだよ。

 他者を回復させるときは、相当なエネルギーを使うから、そのエネルギーをあいつらどうも察知するらしいんだな。

 せっかくの回復能力だから、他者にこそ使いたいのに、使ったらアイツらに捕まるリスクが急激にアップするっていうね。本当に歯がゆいよ。」


 蓮は、悔しそうに唇を噛んだ。

 それから立て続けに、蓮の種の過去を話し始めた。


「俺の種は、そいつらから逃げるために、宇宙で離散したんだ。

 そいつらは、この力を得るために、数千人の俺らの同胞を実験材料にしてきたからね。

 このままじゃ、種が根絶やしにされるってのを恐れてね。

 住んでた星を捨ててきたらしい。

 まあ、もともと流浪の種だったらしいから、星を転々としてたらしいんだけど。

 正直俺は、地球で生まれ育ったからそのあたりのことは詳しく知らないんだ。

 全部、両親から聞いた話ね。

 何隻もの宇宙船に分かれて、分散して、星を移動してたらしいんだけど、

 アイツらが両親の乗ってた船を襲ってきてね。

 両親も捕獲されそうになったらしいんだけど、間一髪脱出ポッドで、逃げ出せたんだ。

 で、たまたま地球にそのポッドが落ちたってわけ。

 落ちたのは、現代じゃなくて、正式な年代は不明らしいんだけど。

 というのもポッドが海に落ちて、そのまま沈んでしまったらしくてね。

 目覚めるまでに数百年かかったっていってた。

 目が覚めてからも地球の生物体系を理解するのも時間かかって、いろんなものに擬態してみたけど、最終的に人間に擬態するのが一番地球で生きるにはいいってことに気づいたんだって。

 で、他者に対する回復能力は封印して、人間そのものになって、地球で生活し始めた。

 俺は、両親が地球にやってきてから誕生したんだ。

 だから、種は違えど、ある意味、地球生まれの地球育ちの地球人ではあるんだ。

 生きてる歴史もまだ14年。壮君と同じ。

 うちの両親は何千年かもしれないけど、もう忘れたっていってた。長すぎて。」


「そりゃそうだよね。不老不死なら年齢数えるの意味ないもんね。

 なんかほんと蓮君の話は不思議だけど、なぜか納得してる自分がいるよ。

 それにしても、ものすごい危険を覚悟の上で、俺を助けてくれたんだね。

 本当にありがとう。自分がヤツらに狙われるのがわかった上で、助けてくれて。」


 俺は、蓮の苦悩の決断に改めて感謝した。

 蓮は、ちょっと困った顔をしながら空を見て、はあーと大きく息を吐いた。


「助けたことに、俺はなんの後悔もしてない。

 俺や両親が狙われることになるのも仕方ないって思ってる。

 ただ、焦ってちょっと助け方をしくじったことを後悔してるんだ。

 あれ以外に本当に回復させる方法はなかったのか。

 壮君を助けるのは二度目だったのに。もっとうまい方法はなかったのか何度も考えてしまう。

 でもまあ、今回はあまりに重症で、時間もなかったし、手っ取り早く回復するには・・・あの方法しかなかったのかなって。」


「あの方法って? 」


「俺の体の一部を壮君に移植した。」


「・・・・・・―――?!!!!」


「今の壮君は、半分人間で、半分宇宙人になったんだよ。」


 俺は、またまさかの超展開に開いた口がふさがらなかった。

 蓮と俺は、宇宙人と人間という間柄で、全く別の生き物として対峙しようとしていたところに、まさかの俺が半宇宙人にいつの間にかなってたとか・・・!!!


「壮君に謝りたかったのは、そこなんだ。

 壮君に断りもなく、俺が独自で判断して、そうしてしまったこと。

 これは一つの賭けだったんだ。

 これまで他者への回復は、軽ければ俺の回復能力だけを使えばできたんだけど、さすがにあそこまで重症となると回復が間に合わなくて、一か八か俺の細胞の一部を壮君の体内に流し込んだんだ。拒絶反応を起こして、死が早まるかもしれないとも思ったけど、もうやるしかないって思って。

 幸い拒絶反応はなくて、俺の細胞が中から壮君の細胞を回復させて、同時に俺が外から回復させていったって感じかな。外からの回復も爆発的なエネルギーを使わざるを得なかったから、確実にヤツらのセンサーにはひっかっかっただろうね。

 だから、翌日、アイツらの仲間がさっそく拉致しにきた。

 俺と壮君を間違えたのか、俺の細胞が融合して、組み込まれた壮君自身を狙ってきたのかは今はわからない。

 正直、相手が今後どう出てくるのか。それが俺は不安で不安で仕方ないんだ。

 あと、人間と俺らの種が融合したとき、どんなことが起きるのか。これも未知数だから壮君の身に今後どんな異変が起きるのか正直、皆目見当がつかない。」


 本当に申し訳なさそうに蓮が頭を下げた。

 俺は蓮の肩をぽんとたたき、励ました。


「蓮君。蓮君は俺を助けるために必死だったんだよ。

 いろんな犠牲を払って、大変な災いが降りかかってくるのがわかっていながら、俺のことを思って、精一杯がんばってくれたんだよ。俺は本当に本当に心から感謝してる。俺の身にどんな異変が起ころうがかまわないよ。

 この今の半宇宙人の俺は、蓮君との友情の証だからね。誇りにするよ!

 これから先、どんな奴らが襲ってきても、俺ら二人で戦おう!

 俺、めっちゃ弱いし、役立たずかもしれないけど、一人よりは二人が心強いよね!

 何か俺にもすげーー能力とか目覚めればいいのにな!そしたら、蓮君を守れるのに。」



 無邪気な俺に、蓮君は笑いながら泣いていた。

 そんな蓮を見て、俺も泣きそうになった。


「壮君で・・・ほんとによかった。

 これからは、なんでも話す。ちゃんと相談する。

 だから一緒に戦ってほしい。きっと俺たちだけでなく、家族や友人も狙われる可能性が高いから、全員を守らなきゃいけないから。俺、がんばるから。」


「うん!!!!」


 俺は、強くうなずいた。


「作戦練らないとね!!

 あと敵の正体をもう少し教えてほしい。

 蓮君の他の能力も。

 それで、向こうの出方次第でどう立ち回ればいいか考えられる。」


「うん、そうだね。

 ちょっと見られるとマズイから、壮君俺の部屋においでよ。

 もう少し詳しく能力の説明とかするから。」



「オッケー!!」


 俺は、軽く返事をして、屋根づたいに蓮の部屋に入った。

 とんでもない秘密を抱えて、世界の行く末を握っているような感覚になっていた。

 どんな戦いになるのか、ゲーム内ぐらいでしか戦ったことのない俺に何ができるのか。

 不安と期待で胸がいっぱいになりながらもぐっと両手を握りしめて、覚悟を決めた。



 迎え撃ってやるよ!

 どんな敵が来ても!


 時間は16時を過ぎていたが、まだ陽はのぼっており、空は明るかった。

 衝撃的な話ではあったが、ちゃんと受け止めることができたのは、この春の陽気のおかげだったのかもしれない。



 戦いが始まる―――


 気を引き締めて、蓮の話をさらに聞くことにした。










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