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第二十一話  模擬戦

 

  


 体育館へ移動し、ロイさんが強力なシールドを張り巡らした。

 俺は胸の高鳴りと戦いの緊張感で、じわりと汗が出てきた。


 ロイさんが、大小さまざまな岩人形を5体作り上げた。

 人形にもシールドを張る。


「さて、準備は整いました。まずは、蓮君と壮君。

 あらゆる能力を駆使して、一体を倒してみてください。

 私は、手出ししません。動かない岩人形をできるだけ早く倒すということを念頭に。」


 蓮と俺は、二人でアイコンタクトをとり、昨日の戦法でいくことにした。

 ダッシュで、岩人形の足元にかけより、手を触れる。


「―― 防御無効! 」


 その瞬間、シールドの青い膜が消える。

 ロイさんが驚いた表情をしていた。


「――刃の雨。」


 次の瞬間、蓮が体の一部を硬化した刃を透明化し、岩人形に向かって一斉攻撃した。

 見えない無数の刃が、岩人形を貫通し、木っ端みじんに崩壊した。


 ロイさんが、パチパチと拍手をし、「お見事!! 」とにっこりわらう。


「無効化能力に、透明化と硬質化ですか。いや、実にすばらしい。

 お二人の連携もぴったりですね。

 では、続いて敦も加わり、3人で残り4体を破壊してください。

 今度は、動かしますよ! 容赦しません。3人でかかってきなさい! 」


 そういうが早いか、岩人形が一斉に襲い掛かってきた。

 3人横並びに立っていたので、敵を取り囲むようにして、三角形の形をとった。


「蓮! おめーが一番頭が切れる! 指示くれるか? 」


 敦が叫ぶ。


「了解! 俺が指示を出す! まずは俺と敦で、サイコキネシスで4体同時拘束!

 そのあと、壮! 防御無効化してくれ! 無効化したら、敦と俺で一気に殲滅する! 」


「そう、うまくいくかな? 」


 ロイさんが、ニヤリと笑う。


 蓮と敦が、4体同時拘束に取り掛かる。


「残念だが、サイコキネシスは私も得意でね。たぶん現存するネフィリム中で私が一番だと自負しているよ。」


 ロイさんの目が、青白く光った瞬間、敦と蓮の共同拘束が破られた!


「クソッ! 」 敦が苛立つ。

 と同時に、人間の擬態を解き、本来のネフィリムに近い姿に変貌した。

 大きさは4mほどになり、肌は赤黒く、硬い鱗のようなもので全身おおわれ、分厚い筋肉の塊のようだった。

 手足は鋭く長い爪をもち、カァッと口を開けると大きな牙がむき出しとなった。

 まるで、鬼や悪魔のようないでたちだった。


「サイコキネシスがダメなら、物理攻撃しかねぇ! 

 俺が、あの4体をぶん殴って引き倒す。攻撃自体はきかねえかもしれねぇが、一体を羽交い絞めにする。

 その隙に、防御無効化しろ! 残りの3体は、蓮! お前の『刃の雨を』降らせ続けろ!

 シールドはな! 連撃に弱いんだ! 一体ずつ攻略するぞ! 」


 というと、俺と蓮にシールドを張り、敦が4体へ突進した。

 1体、2体・・・とぶん殴り、吹き飛ばしていく。

 体は大きくとも、その動きは素早く、敦の体術はすばらしかった。

 大きな敦の拳が岩人形に当たるたびに、轟音と振動が響き渡り、体全体がふるえた。

 3体目が倒れたとき、蓮が「刃の雨」を降らせた。と同時に爆発も起こし続けた。


 敦が格闘の末、4体目を後ろから羽交い絞めにした。

 俺は、足元にかけより岩人形に触れる。


「―― 防御無効! 」


 大きな声で叫ぶと同時に、その場から一気に離れる。

 瞬間、敦の右腕が岩人形の頭に振り下ろされた。

 強大なパワーを持ったネフィリムの強い一撃に、岩人形はなすすべもなく、轟音をたてて崩れ去った。


 蓮の「刃の雨」と爆発の煙で、視界不良になっていたが、煙幕の中から残り3体が3方向に分かれて飛び出してきた。

 一体が蓮、もう一体が俺、もう一体が敦に向かっていた。


「マジかよ、ちきしょう!!!!! 」


 敦が悔しそうに叫ぶ。

 どうしよう! 

 シールドがある限り、3人それぞれ単体で来られたら手が出せない!!!!


 俺の目前まで岩人形が迫り、右腕が大きく振り上げられた。

 絶対絶命の中、俺は叫んだ。


「―― 時間停止!!!!! 」


 停止した時の中で、俺は必死で考えた。

 どうしたらいい? 俺にこのシールド付きの岩人形を拘束することはできない。

 でも・・・敦なら・・・敦なら物理的に2体だったら抑え込めないか?!


 蓮は、体系変化で岩人形を足止めできる!


 俺は、持てるすべての力を使って、俺の目前に迫っている岩人形をサイコキネシスで敦の元に動かした。

 息を止めながらの作業だったが、無我夢中だったために、俺はなんなくそれをやりとげた。

 そして、蓮を攻撃しようとしている岩人形の真上に飛んだ。


 次の瞬間、息を大きく吸うと同時に叫んだ。

 止まった時間が動き始める。


「敦!!! 2体を抑え込んで!!!

 蓮!!! 液状化して足元を固定して!!! 」


 二人は、瞬時に理解してくれた。

 ロイさんは、何が起きたのか理解できずに、一瞬岩人形の動きが止まった。

 その瞬間を俺たち3人は見逃さなかった。


 蓮は、液状化して岩人形の体表を包み込み、動きを封じた。

 敦は、両腕で2体の頭を抱え込み、地面に叩き付けた。


 俺は、まず蓮の岩人形の防御を無効化し、そのあとすぐに蓮は武器化して、スピアでとどめを刺した。

 そのあとすぐに、敦が抑え込んでいる一体を蓮が液状化で拘束し、俺は二人が拘束している人形をほぼ同時で防御無効化した。瞬時に、二人が人形を粉砕した。


 息をつかせぬ戦いは、これにてようやく終了した。


 俺は、息があがってしまい、はぁはぁいいながらその場にへたりこんだ。

 ロイさんは3人の息の合った連携と殲滅力に、驚いたようだった。


「すばらしい・・・。一体何が起きたのか・・・。

 一瞬わからず、私は集中力を失いました。壮君、君は時間を止めることができるんですね?

 恐ろしい能力です。シールドが張られてなければ・・・、時間が停止した世界では、あなたが神だ。

 いやはや・・・、長く生きてきて、こんな能力を持つ者に出会ったのは初めてです。

 にしても、3人の連携は素晴らしかった。

 お互いを信頼し、言葉を交わさずとも相手の意を理解して、行動できる。

 友情とは何物にも代えがたいですね。」


 にっこりと笑ってロイさんが、ほめてくれた。

 俺たち3人はお互いの顔を見合って、ちょっと照れた。


「私の岩人形を相手にして、ここまでやれるのなら、明日は特に問題なくクリアできるんではないかと思います。

 地球に来ているネフィリムは、私と敦以外にいませんし、敵は全員レプタリアンです。

 レプタリアンは、そこまで強くありません。能力も似たり寄ったりです。

 たまに、ネフィリムと同じくらいの戦闘力を持ったレプタリアンもいますが、ごく稀です。

 十数人いたとしても、軽いシールドを張られてるくらいと思われますから、3人の今の力をもってすれば、なんなく打ち破れるでしょう。

 ただ、戦いの上で気を付けたいのは、廃墟となった倉庫とはいえ、人目を気にする必要はあります。

 あまり大きな爆発音を立てると、人間に目を付けられますので。

 一応、侵入の際は、私が建物にはシールドを張りますから、攻撃自体は思い切りやっていただいて構いません。

 使う能力としては、サイコキネシスと物理攻撃とパイロキネシス当たりで十分でしょう。

 明日が楽しみですね。」


 穏やかな表情の中にも、明日の勝利の確信を抱いているそんなロイさんになんとか応えたいと思った。


 俺は、3人の可能性にワクワクしていた。

 強い! 俺たちならやれる! 


 3人互いに目を見合って、誓う。


 アイツらを殲滅してやる!!




 

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