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「何よなによ。あんた、みんなになにかしたの! この淫乱!」
「なんで、何かがそれに結びつくのか。あんたの頭のほうが真っピンクでしょうに」
ぷつ、と何かが切れたようなシャナが、おおよそオーランドが言いそうな言葉をぼそぼそと並び立てていた。その言葉にまたもや吹き出しそうになる男たち。
「なっ。貴族である私になんていう物言いなの! 衛兵! とらえなさい! 不敬罪よ!」
「いえ、ですから……」
「朝早くから何を騒いでいる。お前は」
応接間に入ってきたのは現男爵当主のハゲ散らかったおやじだった。
「どうしたんだい? この女は?」
「私とロラン様の恋路を邪魔する女ですわ? 直接言って聞かせようと思って」
「……ほう? こんな小汚い女がか?」
「……」
小汚くて悪かったなと、言いそうになる口を閉ざして面を伏せる。
「話は常々聞いているよ。君、あのお方と会っているそうだね?」
「……私が勤めているお店に、兄の知り合いとして出入りしているだけです」
「どーせ、そういうお店でしょう! この淫乱ビッチ!」
「……お前は黙っていなさい。店に勤めているということは、本当に市位の娘だね。じゃあ、あのお方とは釣り合わない。おとなしく引き下がりなさい」
「……私は、私の意志でセザールさんと一緒にいるわけではありません。引き留めたわけでもございません。あの人は、私を選んでそばにいようとしている」
「うるさいうるさい黙れ!」
「お前ごときが、王族であらせられるあのお方をあの人呼ばわりか!」
激昂するポイントは一緒らしい。
金切声とどなり声を一度にくらわされて、シャナの眉が寄る。
「……ええ。それがどうかしましたか? そんなこと、周りが言うのではなく、それが不愉快であれば、彼のほうから注意が来ます」
「そんなことは!」
「少なくとも、私が知る彼は、そういう方です」
きっぱりというと、顔を真っ赤にさせた親子がシャナに迫っていた。
「この子を地下牢へ」
「……しかし」
「私の命令に従えないか?」
「……っ!」
兵士がシャナをじっと見つめる。シャナは、そっとため息をついて口を開いた。
「甘んじて赴きましょう。しかし、後悔なさることはないように」
この後に待っているのは処刑だろう。
シャナは、衛兵に、丁寧にとらえられて、地下牢へ運ばれて申し訳なさそうに手錠をはめられたのだった。




