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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
1章:彼にとって日常とは
9/146

1、

 そして、オーランドの出勤停止が明ける直前、三日目のことだった。


「旦那様が抜け出したようです」


 起床の時間帯、それぞれが忙しく働き始めるこの時間帯、屋敷のそれぞれの場所で働いていたメイド、執事、そして非番のメイド、執事、全員を広間に集めて重々しく、執事頭のギルが口を開いた。


 毒を食らって体調不良、はそうそうないことだが、最低限の仕事しかしていないといえども、書類仕事を放棄した将軍各位の書類仕事を代行しているオーランドは、それなりに忙しい。


 そのために、寝不足でふらふらになったり、倒れたり、熱を出したりと体調を崩しては屋敷に送り返されることもしばしばあった。


 だが、休ませようと働く執事メイドの努力むなしく、仕事があると言って、監視の目をかいくぐって抜け出して、軍舎にいたところを捕獲され、送り返される、ということを日常的に繰り返していた。


「……」


 またか、と目で言いたげな、執事たち、きょとんとしているメイドたち。それぞれの反応を見ながら、ギルは深くため息をついた。


「ジャックが、バートラム様のところに向かいましたから、軍部に出仕に行ったのであれば即刻送り返してくれるでしょう」

仕事狂ワーカーホリックもここまで来たら迷惑だよねー」


 のんきな執事見習いの少年がけらけらと笑いだす。


 それを少々乱暴に黙らせたのは、ジャック。


 オーランドが抜け出したのに気付いて早朝にバートラムのところに向かい、帰ったところで、この集会に出くわしたのだった。


「見つけ出してベッドに叩き込むのが最優先の仕事です。行きそうなところ、街、軍部、そして、別邸にそれぞれ班分けして回りましょう。担当の時間になったら街から帰って、それぞれの仕事をするように。くれぐれも仕事をおろそかにしないように!」


 厳しい口調で告げられる、その情けない最優先任務に、一同がそれぞれあきれた顔を見せて、そして、この時ばかりは困った主だと、肩をすくめたのだった。

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