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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
7章:燃え上がる炎と記憶
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7,

 そして、神殿の家宅捜索が終わり、謹慎中ながら軍舎に戻って、バートラムとセザールと合流する。


「まさか、あんたらと仕事を共にするとはな」

「名実ともに三指の槍がそろったわけだ」

「嫌な出来事でしょうね」


 それぞれそういって顔をしかめる三人が、それぞれの状況を説明し始めた。


「俺んところは完璧だ。お前の親戚だとは思えないぐらいの手ごたえのない頭の悪いおっさんだった」

「だからこそ親父に家督が譲られたんだ。親父も親父で屑だったわけだが」

「そちらのほうの確認はとれましたよ。手記のほうにも書かれて、なおかつ、懺悔を聞いた神官も特定できました」

「ご苦労。こっちは、まあ、胸糞悪い三文芝居だった」

「だろうな。で、お前んとこの継母は何だって?」

「聞きたくもない。部下に丸投げしてる」

「悪い奴。報告書上がってくるだろうが」

「見ないではんこ押す」

「うっわ」


 顔をしかめるバートラムに、オーランドは深くため息をついて馬の鼻面を撫でる。


「で、あんたらがここまで出しゃばってくる理由は?」


 二人並んでいる様を眺めながらオーランドが首を傾げてみせる。


 金と銀の頭がそろうこと自体まれなことなのに目は同じときた。腹違いながらも似た面立ちをしている二人を眺めながら、ふと、セザールは自分の年下のようだと、関係ないことを考えていた。


「ああ、シャナちゃんをさらったやつ、もしかしたら、戦争の時の寝返りの影、要は粛清対象の取りこぼしだったっぽいから、そして、その出所が神殿がらみのちょっと面倒事らしくて、軍ではさばきづらいから、だな」

「ええ。少し、気になることがありましてね、出っ歯兄弟でしたっけ? 彼ら、釈放されてから、神殿の説教を聞く手筈ですが、今回とっちめられた神殿長じきじき出てきて説教されてるんですよ」

「……大仰だな。小物に」


 少しざらつき始めた顎をさすりながらオーランドが眉を寄せるのにセザールはこくりとうなずいた。


「そうなんです。で、シャナちゃんのことでしょ? それと、貴方のお父様の懺悔を聞いたという神官を特定する際に、どうやら、リチャード、という医者が、カレンさんのお知り合いですね、が、きな臭い神殿長に懺悔をしているようです。さすがに時期と内容までは聞けませんでしたが、市位の男を神殿長が相手するとはとても考えられない。それに、今回のことですし、あなたに比較的近いところですから、何らかの思惑があるのではないかと思いましてね」


 苦虫つぶした顔で、当たってほしくない想像ではあるんですが、とつぶやくセザールに、オーランドも顔をしかめる。


「つまり、神殿が率先して俺のことを……、ということだな? 医者である俺が、積極的に近代医術を広めることで、神殿の無駄な権威はますます失われていく。そして、俺は貴族の端くれだ。貴族特権で安易に手出しできないから、周りをつつくことで、俺の先走りで失脚させ、廃嫡させられたところで魔女狩りで首狩り、ってところが連中が用意したオチか。さしずめ、リチャードは、俺の様子などを奴らに報告するために取り込んだていのいい駒だということだな。だから、あの時すぐ来れたってわけか……」


 カレンの医院の襲撃の際、軍部が一度引き上げて閉鎖が解かれた直後にふらりと顔を出した彼を思い出して眉を寄せたオーランドに、セザールも深刻な顔をして深くため息をついた。


「……そういう風に面倒な方向に考えられるので、政務官としては放置できないということです。まさか、神殿長自ら、一貴族、籍から離れているものの、直系を排除しようとするのは、見過ごしておけない。見せしめとして粛清しておかないと、これから横行してしまいます」


 裏を管理する政務官らしい冷静なセザールの言葉に、オーランドもその通りだとうなずいて、ふと、顔をひきつらせているバートラムを見ていた。


「……おい、リチャードっつったか、ロラン」

「ええ。何か問題でも?」

「……別邸任せたの、彼だぞ」


 その言葉に、セザールの表情が一瞬凍った。その表情にオーランドの目がすっと細まって、馬に乗り込む。


「情報を言う順番がおかしかったようですね。すいません」

「御託はいい。バートラム、案内しろ」

「あ、ああ!」


 バートラムも慌てて馬に乗り込んで、その後ろにちゃっかりセザールが乗る。


「鞍なしでお前大丈夫か?」

「ええ。魔術で浮きますから」


 そんな会話を前で聞きながら、オーランドは、バートラムの背中を追った。

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