5、
「来るのが早すぎる……」
「オーランド?」
「……いや。いこう」
息を整えて膝に手を当ててぐっと足に力を籠めて立ち上がったオーランドを支えるように広い背中に腕を回したカレンは足並みをそろえて、処置室にオーランドを寝かせた。
「起きてたの?」
「……リチャードさんの声で起きただけだ」
横たわったオーランドと少し話して、カレンは深くため息をついた。重たいそれに、オーランドの眉が寄った。
「カレン」
「なあに?」
「俺はもう大丈夫だ。しばらく、いや、疲れているから、おそらく長く眠るだろう。お前もその間に休め。明日、事情聴取に軍部のバカが来たら俺の処置で忙しいとでも言って断れ」
「どうして?」
「俺も付き添ったほうがいい。俺が動けるようになるまで、一人で出かけるのはやめてくれ」
「……」
「……心配しているんだ。シャナもやられた、今度はこの医院の襲撃。確実に、俺に関連するものが傷つけられ壊されようとしている。おそらく間接的でも直接的でも俺を攻撃することが目的だ。屋敷にはジャックがいるから心配はないが、次は手薄なお前がシャナのようになるかもしれない。……立て続けに起これば、いくら俺でも後悔はしないことはない」
体を半分起こして、カレンの手をつかんで、真剣な目でそういうオーランドにカレンは目を見開いて、ぐっと眉を寄せてそっぽを向いた。
「……わかった」
ぽつり、とつぶやいたその言葉に、オーランドは、満足したようにうなずいて、体を横たえた。
「オーランド?」
「なんだ?」
「……」
何も言わずにうつむいたカレンに、オーランドはゆるく笑って、硬く握りしめられたカレンの手の甲を手のひらでさすった。
黙ったままのカレンのこぶしがふっと緩む。
するりと冷たい指をすべり込ませてやわらかく、握る。
そして、オーランドは目を閉じて、ため息交じりにつぶやいた。
「寝ていいか? ……このまま」
オーランドのその言葉に、驚いたようにカレンが顔を上げた。オーランドは、もう目を閉じて、緩やかな呼吸に胸を上下させている。
カレンは、答えの代わりに、その手を握り返した。ほんの少しだけ、オーランドから握り返される力が強くなったのを感じて、カレンは目じりを拭うのだった。




