2、
まだ続きます。
「くそ、全然濡れやしねえぞ」
「唾でもつけとけ」
「不感症かよ。この欠陥品が」
口々にいう言葉にシャナは何も言わなかった。
やがて無理やり突っ込まれた時も、べとべとになるまで犯しつくされた時も何も言わずに、その暴力の嵐が去るのを待っていた。
「薬はどこだ? 兄者」
「あ? んなもん持ってきてねえよ」
「俺、持ってますぜ」
あまりの無反応さに興が冷め始めたのだろう。男たちが舌打ち交じりにそんな会話をし始める。だらしなく彼らは尻だけ出していた。
「にしても、本当に胆の据わっている女だこと。声を上げれば近くの誰かが見に来るとか、考えねえのかね」
「そんな場所をあなた方が選ぶとは考えられません」
冷静なシャナの言葉に、男たちの額に青筋が浮かぶ。しょせん、彼らは、女の悲鳴を聞きたい種族なのだ。
「なにを偉そうな口きいてんだ、このくそアマが!」
平手だった手がこぶしを握り、シャナの頬をとらえる。
「……っつ」
口の端が切れ、顔をゆがめたシャナに、男たちは、にやりと笑ってそれぞれ思い思いの折檻をくわえ始めた。
「ぼこりすぎて殺すなよー。生暖かい穴なだけじゃ興が冷めちまう」
笑みを含んだ、この状況を楽しんでいる声に、シャナはギュッと目をつぶって歯を食いしばった。
男たちの荒い息がこだましていた倉庫の中は、今や、殴る蹴るの暴行の、鈍い音が響いていた。
高く振り上げられたこぶしが頬を、そして、別の男の足がシャナの腹をとらえたその時だった。
「……!」
鋭い風を切る音とともに、ドッと何かが当たる鈍い音がその場に響き渡った。
そして、一人の男が眉間に小ぶりのナイフを生えさせて後ろに倒れる。
その音に、そして、起こった出来事に男たちの体がこわばり、飛んできた方向を一斉に見つめる。
視線の先からは、一人の男が物陰からぱっと飛び出てシャナをかこっていた男に飛びついていた。
オーランドだった。
「なんだ、貴様!」
その問いに答えることなく片刃の剣の柄に手をかけ、走り、抜きざまに、声を上げた男たちを一刀両断にしていく。
一人しとめ、返す手でもう一人しとめ、足をくるりとさばいて振り返り様もう一人をしとめ、最後に残った男の眼前に切っ先を突きつける。
「なんだ、来たじゃねえか。遅かったなあ? 将軍さんよお?」
「ほかにいろいろ仕事があってな。お前たちにかまけてる時間を作れなかった」
息を乱さずにそういって、ちらりと肩越しにシャナの状態を見て、かすかに眉根を寄せた。
「ひでえもんだろう? そこの嬢ちゃん。俺たちに犯されてひいひいいって、腰振ってたぜ? 淫乱そのものの姿だった」
事実とはおおよそ違うことをへらへらとしゃべった、切っ先を突きつけられている男はにやりとその口元から出っ歯をのぞかせる。
「さすが、貴族様のメイドってもんだ、性奴隷も兼ねてるなんざ、一体御幾らのメイドいや、セイドってか……?」
「……」
ぺらペらとしゃべる男にオーランドは静かに青筋を立てていた。




