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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
2章:広がる波紋
16/146

2、

「オーランド様」


 影から呼び止める声。その声に立ち止り、影を見る。足元だけが存在を示すように見えた。


「どうだ?」

「見たことありません」

「新しく入ったものはいたか?」

「それは、二、三名。しかし、叔父上であらせられる……」

「直接はとっていないか。叔父上があの婆の世話役として押し付けたのはいるか?」

「いえ。完全にはなれのほうで……」

「野放しか」

「そうとも言えます」


 口早の報告に目を閉じてオーランドは次の一手を考える。


「ドラ息子のほうはどうだ?」

「相変わらず薬と女におぼれているようです」

「さすがに俺を葬る頭はないか……」

「金づるがなくなるから困る、という考えかもしれません。今懐をまさぐっているところです」

「詳しいことはどうでもいい。情報を頼む」

「御意に」


 さっと影に潜む人影が消えて、廊下に人の気配は、遠くを歩く部下の気配しかなかった。


「……」


 体に入っていた力を抜いて、ぐらりと揺れる体を、壁に手をついて支える。


「……っち」


 まだままならない体に舌打ちをして、執務室へ戻り、片づけるべき仕事を手早く片付け、応接セットのソファーに寝転ぶ。


「オーランド、起きてるかー!」


 バートラムの声に起き上がって扉を開けると、バートラムが飛び込んで、そして後ろを気にしてすぐに扉を閉めた。


「どうした?」

「速報だ。お前のいう出っ歯兄弟の話をしただろう?」

「ああ」

「行方をくらませた。昨日の面会に来ずに、住居に行っても空。逃げられた」

「それがどうした?」

「ほれ、これ」


 バートラムが持ってきた紙には、オーランドに対する恨みつらみが書かれ、そして、呪いの文句が血文字でつづられていた。バートラムの知り合い曰く通常であれば、この術式は発動してもおかしくないという。

 それを聞きながらオーランドは、血文字の文句を見てそこに書かれている、体が腐り落ちるなどということは全くないぞと、バートラムを見た。


「下らねえ」

「下らねえってな、お前これ……」


 立派な呪術の態をなしているその血文字に青ざめているバートラムに対して、オーランドはあきれたようにその紙を眺め、バートラムに突っ返した。


「この世界の人間じゃねえ奴にこの世界の呪術、法則が適用される訳ねえだろう、バカくせえ。燃やしとけ、そんなもん。……俺にゃ効かねえよ」

「どういうことだそれ」

「どうでもいいだろ」

「よくねえよ。このせ」


 オーランドはその言葉に指をバートラムの目に指を突き入れようとした。のけぞったバートラムが壁に頭と腰をぶつけ、文句を言おうとオーランドをにらんだ。

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