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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
とある執事の回想
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とある執事の回想

「いっ」

「お前は死んだ。ってことでいいんだな」


 息を詰まらせるジャックにフードの男はそう問いかけた。


「……抜けさせてくれるんですか? 頭領」

「抜けるだなんて。死人に抜けるもくそもねえだろ」

「……」

「奴の依頼の出所はこっちで粛清をかけておく。火の粉はお前が払え」


 その言葉にジャックは声も無くその顔を見る。フードの中の灰色の瞳がまっすぐとジャックを見据えていた。そして、珍しくその目が笑んでいることに驚いて息を呑む。


「お前は仕えるべき主を見つけたんじゃないか? 違うのか?」

「……そうですね」


 ギルの腕の中でぐったりとしているオーランドを見てジャックはうなずいて、改めてフードの男を見た。


「お暇を」

「行け。俺はお前を不幸せにするためにこっちに誘ったわけじゃねえからな。お前みてえなまっすぐなガキは本当はこっちにいちゃならん」

「まっすぐ?」

「ああ、いくらたっても目が腐らない。こんなキナ臭い仕事やってりゃ、ガキなんてすぐに腐る。腐らねえガキはいずれこっちじゃやってらんなくなる。いいじゃねえか。俺ももう十年もして、現役引退したらぜひとも再就職先になってもらいたいわ」

「その時まで生きてりゃな。おっさん」

「お、真面目に考えてくれるのか?」

「どうなっているかわからんが、有能な人材は嫌いじゃない」


 貴族でいられているかわからんが。というオーランドにフードの男は大した問題じゃねえよと笑う。

 これでも彼は、王族に仕える暗殺者の頭領だ。

 その手の貴族たちからはのどから手が出るほど欲しがられている存在だ。


「あんたなら力の正しい使い方、わかってんだろ」

「こんなクソガキがか?」

「そういう目をしてるよ」

「間違った時、自由に殺せといえるだけだ」

「それを言える貴族が何人いると思う?」


 その言葉に、オーランドは子供の顔にらしからぬ皮肉気な笑みを浮かべて肩をすくめた。


「いねえわな」

「ならば、庶民と変わらなくとも正しい鞘を持っている人につこうと、思うんだがなあ。抜き身の剣ではぶつかったときに刃こぼれしてしまうし」

「安全なケース代わりかよ」

「金払ってくれるな」

「その時になって金を払える稼ぎがあるとは保証できん。今のうちに貯金しとくべきだな」


 真面目な顔でそう指摘する子供の姿に、フードの男は毒気を抜かれたようでカラカラ笑い立ち上がった。


「さて、あまり昼の光は似合わないものでな。闇に帰らねばならん」

「……頭領」

「なに、あと十年十五年もすれば、また会えるさ。じゃ、チビ助や、その時はよろしく頼むな」

「覚えてたらな」

「あんただったら覚えてるさ」


 そういって、ジャックの頭領だった男は一瞬で姿を消した。

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