表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
とある執事の回想
139/146

とある執事の回想

 試すようにオーランドを見ると、オーランドの表情には怯えなどなくどうしたものか、という表情を浮かべている。本当に死が怖くないのか、それともただの強がりか。

 いずれにせよ、十三の子供が浮かべる表情には程遠い。


「帰るのか?」

「いいや。こんだけ行方をくらませてりゃ、どっかでのたれ死んだものだと思われてる。お前に、最低限の護身術を教えたら、どっかに行くさ。まだ生きてる母親と、妹と弟に十分な金もある。それを置いてどっかで死ねばいい」

「死にたがりを助けた覚えはないんだがな」

「そりゃあ、悪かったな」


 当て擦りのように言ったオーランドにジャックは肩をすくめて笑う。


「行くところないなら、俺のところに来ないか?」


 ふっと一息を置いてから、真面目な面持ちでオーランドが言った。ジャックは鼻で笑ってそっぽを向いた。そんなジャックにオーランドは毛布を取っぱらって膝をついて体を起こすとジャックの胸ぐらをつかんで引き寄せた。


「今更表に行けるなんざ思ってねえよ」


 その手を振り払ってそういうジャックに、オーランドは、やけにまっすぐとした目を、投げてよこすのだった。


「連れてってやるよ。引きずりだしてやるよ。死んでなければ俺が……ァ」


 言いかけてオーランドの言葉が突然ブレて、目を見開いた表情を浮かべたオーランドが前のめりになる。


「おい?」


 そのままジャックの胸に飛び込むように倒れこんできたオーランドにジャックが驚いて、細い体を受け止め、その背中の真ん中に生えたナイフの柄に息を呑む。遅れて聞こえたガラスが割れる音に、外からあわてたような足音が聞こえた。


「おい! オーランド!」

「……ぐっ」


 血を霧のように吐いて、それからぐったりと動かなくなったオーランドに、ジャックは割れたガラスの先を見据えて舌打ちをする。


「何事だ!」

「クソガキに医療魔術かけろ! このままじゃ死ぬ!」


 うつぶせになったオーランドの背中からナイフを一息に抜き放って、手を当てたジャックは顔をしかめて、入ってきた白髪の執事を一瞥するとうなずいて、割れた窓から外へ飛び出した。


 そして、窓の外の茂みに潜んでいた暗殺者を、しばらく追いかけて、一瞬開けた森の木々の隙間を縫って、暗殺者の背をめがけてナイフを投げ、その背中に突き立てた。

 見事に命中し、前のめりに倒れ、木に激突して止まった暗殺者の体から、ナイフを抜くと、血しぶきを浴びないように立ち回り首を一刀両断する。


「……」


 鮮やかな切り口を見やり、ジャックは髪を持ち手に一瞬でその場から消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ