6,
安定の朝チュン(笑)
そして、翌朝。
「開けなさい! ロラン!」
金切声のような声にセザールは起き上がって、ため息をついた。
シーツにくるまるように丸まって背中を向けているシャナの髪をなでて気づかないふりを決め込む。
「ロラン!」
ばたばたと、今が騒がしい。居室の扉は突破されたらしい。さて、どこまで見せつけてやろうか、と考えていると、シャナがぱしぱしと瞬きを繰り返していた。予想外にうるさかったらしいな、と苦笑しながら、ローブを羽織る。
「セザールさん?」
「さん付けなんて、よそよそしいですね、恋しい人」
寄り添うように横たわるとくるりと体をセザールのほうに向けて胸にすり寄ってくる小さなシャナにセザールは笑みを深めた。
「誰ですか? 外……」
「母ですね。普段何も干渉してこないのに、ここぞという時に出てくる」
「へっ」
「まあ、大丈夫でしょう。あなた、ここにドレスないでしょ」
「っ!」
そこでようやく意識が回復したらしい。体を隠すように丸まったシャナに、軽い声を立てて笑ってセザールは侍女が気を利かせてワゴンの上に置いておいた毛布をシャナの上にかけ、ベッドから離れて立ち上がった。
「このまま出て、母上に説明しましょうか?」
相変わらずおちょくるようなその言葉に、シャナのもろい頭の血管はぷつっと行くのだった。
「セザール様のバカ!」
と、ベッドから立ち上がり、高級なベッドのマットレスの反発力を最大に生かした回し蹴りがセザールの頭に炸裂したのだった。
「ぐあっ」
おおよそ、ともに朝を迎えた恋人たちではない声を上げて昏倒したセザールに、きれいな形で着地したシャナは憤然と鼻を鳴らして、目に見える場所に引っ掛けられていた簡単な外行きのドレスに袖を通して、人が来るのを待つのだった。
そして、間もなく、セザールの母に扉は突破され、セザールの母を押さえるためにいたオーランドとバートラムが床に倒れ伏しているセザールと、ぷんすかと怒っているシャナを見て、大爆笑し始めるのだった。
シャナの格好。いわずもがな。そんな恰好で回し蹴り(笑)