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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
小編:秘密の会食の話。
125/146

4,



「レーナートはその日から、屈託なく笑うことなく、王になると邁進してきました」

「……セザール様も……?」

「ええ。彼を支えるために、ほとんど引継ぎを終えていた内政以外にも、影のほうに手を伸ばして、自分とレーナートを守ることができるようにしました」

「……」


 そっと、シャナはセザールの手を取って握った。そんなシャナにセザールはふっと目元を和ませて少し、甘えるように、シャナのほうに体を傾けた。


「それから、4年間で、レーナートは玉座につき、僕もこの城の中ではだれにも何も言わせないぐらいの権力を得られました。しかし」

「……内乱が起こったと」

「ええ。外部の情勢に気を取られている間に、内政が、内側から壊す馬鹿どもが沸いていることに気付けていませんでした」


 当事者から語られる6年前の戦争の事情に、シャナの表情が真剣なものになる。


「そして、颯爽と現れたのは、兄でした。2年間で軍学校を卒業して、士官学校まで行ったと」

「……それは」

「かなり優秀な成績をとっていないとできないことです。通常、軍学校を卒業するのに3年はかかる。それを、本人の自己申告じゃあ、1年半で卒業してやったといっていましたから、最低でも2年ほどで卒業してしまったんでしょうね」

 

 国の内部を動かす人間として、軍学校に入ってくる人間をもチェックしておかないといけないことを失念していたのは、痛恨の極みでしたが、と唸るようにいうセザールに、シャナは、そっとセザールの手を擦っていた。


「……たぶん、自分を死んだとした時から頭にあって、そのために軍学校に入ったんでしょうね。兄には、僕がそのめんどくさい外部しか見ないで、どうにかひねれる内部をないがしろにするとわかっていたようです。軍服を着た兄が、隠し通路から出てきて、警戒に当たらせていた影に捕まえられて僕の前に突き出されたとき、どんなに驚いたか」

「というかそれ……」

「ええ。僕が気づかなかったらあの人の首はつながっていませんでした。本当に危ないことをする」


 ぼやいたセザールだったが、再会はうれしかったのだろう。だが、すぐに苦虫つぶしたような顔をした。


「それから、兄が、内部を一つずつつぶしてくれたという手土産をぶら下げてくれて、あとは軍部の派遣だけ。僕は得ていた情報を兄に託しました」

「でも、それだけなら」

「オーランドを巻き込んだのは兄でしょう。同期だと言っていましたので。……まあ、バルシュテイン伯爵の名前は軍部では大きい」

「……そうなんですか?」

「ええ。表や軍部に関係ない連中はあまり知られていないことですが、なかなかバルシュテインの名も古くてね、この国の建国、いや、この国の前身である皇国の起こりからその名があるんです」

「え?」

「つまり、王家とともに歩んできた、軍門の一族なんです。……この国が蛮族しかいなかったとき、皇国の王の弟と心を通わせた蛮族の一族の女族長」

「……夢物語みたいですね」

「あながち、夢物語でもないんです。その証拠があなたたち兄妹であるわけですからね」


 懐かしそうに目を細めたセザールの表情に首を傾げながらシャナはすぐ隣にあるセザールの肩に頭を預けた。


「そうですか」

「ええ。そうです」


 うなずきながら自然によりそったセザールは微笑んでシャナの髪に頬を寄せた。甘えるようなしぐさにシャナはふっと表情を緩めて目を閉じた。

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