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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
小編:秘密の会食の話。
124/146

3,

「強引ですね」


 ぱたんと扉が閉まったのを見て、ため息交じりにセザールがシャナを振り返る。シャナは、荷物をがさがさと漁ると、目的のものを手に取って、上目遣いにセザールを見上げた。


「じゃないと、あなた、仕事の話って逃げてしまうじゃないですか。また、こんなに手を冷やして」


 手荷物のハンドクリームを出して、セザールの手をほぐしていく。


「確かにあなたの手より自分の手が冷たいのはわかりますが」

「その手で首筋に触れてみてください。鳥肌立ちますよ?」


 空いた手で言われたとおりにして肩をすくめたセザールに、シャナはふっと笑って、もう片手を温めるようにほぐしていく。


「とりあえず、座りましょう」


 ソファーに座らせて、手をほぐして、シャナはふと、セザールの首筋に手を伸ばし、肩をぐっと握った。


「肩も凝ってますね」

「ええ。オーランドや兄、バートラムのように動く仕事ではありませんから」

「……そういえば、バートラム様が兄というのはどういうことですか?」


 肩をもんでほぐして、うなじまで手を当てていく。


「もともと、我々の世代、僕とレーナートだけじゃなくて、三兄弟だったんです」

「……、そうだったんですか?」

「ええ。あなたはもしかしたら、貴族から遠かったせいで、そういう話を聞いたことがないのかもしれない、でも、もともと、兄、ベルド、僕、セザール、そして、弟のレーナートの三兄弟でした」

「でも、一番上のベルド殿下については一切……」

「ええ。兄は、……正確には兄の名は、死んだものになっています」

「死んだもの?」

「兄が24のころ、つまり、ぼくが16の時、事故で死んだと聞かされました」

「……でも、実は死んでいなかった?」

「……ええ。詳しいいきさつは教えてくれていないのですが、なにかがあって、兄なりに何か思うことがあったのでしょう。まあ、あの、お母上ですから」

「……あの?」


 その言葉にふっと笑ってセザールは肩をすくめた。


「父上、先代の陛下が国母とするのをためらうぐらい強烈な御人といえばいいのでしょうか。……それこそ、敵とみなしたら、消さないと気が済まないぐらい野心の高い、そして、自分の息子を溺愛していた」

「……」


 苦笑を漏らして、セザールは遠くに視線をさまよわせた。


「僕らも幾度となく標的にされてね。僕の母は身分が低いこともあって、僕が王になる可能性が限りなく低いといわれていたので、まだ、ましな当たられ方をされていましたが、レーナートの母上、……僕に母というものを教えてくれたあのお方は、……」


 辛そうに口をつぐんで、そして、ためらいがちにかすれた声がつぶやいた。


「レーナートが10のとき、ちょうど、兄上が死んだとされた日の2か月後に、階段から突き落とされて亡くなりました」


 その言葉に、シャナは鋭く息を吸い込んだ。


「本来、このような醜聞は王家ではタブーです。ですが、真実を教えておきます」

「……はい」


 これは機密扱いという暗黙の了解だ。うなずいたシャナに、セザールは、立ちっぱなしなのを気付いて自分の隣にシャナを座らせた。

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