表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
小編:カレン・ウィードリイの悔悛
114/146

2、

「……俺のまねなんかしなくていいよ」


 そんな声が、聞こえた気がした。


 ふっと目を覚ますと、窓からは、月明かりが差し込み、白衣を脱ぎ、シャツも緩めたオーランドが、傍らについて、カレンの看病をしていた。

 窓もない仮眠室から、見覚えのある部屋に寝かせられているのを見て首を傾げていると、オーランドが覗き込んできた。


「起きたか?」

「今何時?」

「もう夕飯時だ。よく眠ってた」

「……よく寝た」


 寝汗で凝った髪を梳きながら、オーランドがふっと表情を緩めた。


「あんまり無理はするな。女の体は無理に敏感すぎる」

「でも……」

「少しぐらい休んでも、連中は死にやしねえよ」


 殺しても死ななそうな連中ばっかりだからな、と笑いながら言うオーランドに、カレンもそれは否定できなかった。


「…………。軍部の医者もなかなか使えるようになってきた。これからは詰所の医務室を解放して、医者のまねごともできるようにするつもりだ」


 ぽつりと、オーランドが漏らす。その言葉のないようにカレンが目を見開いて、オーランドを見つめていた。


「いつまでに?」

「近いうちにだ。最近俺が忙しいのはそれのせいでな。三つの詰所に三人ずつ付けて、日勤でやらせる」

「じゃあ、うちはいらない?」

「そんなわけないさ。でも、売り上げは減るだろうな」


 冗談めかして言うオーランドは、カレンの髪をゆっくりと撫でている。


 その感触が、いつになく優しくて、カレンの涙腺も緩くなりそうになる。


「売上なんて……」

「わかってるよ。そんなん度外視してるのは。国にも事業として通してもらってな。補助も出るから、軍部の診療では基本的に金はとらない」

「……」

「お前がいらないわけじゃない。でも、お前ひとりで背負う必要はないんだと、俺は言いたい」


 リチャード医師が、辺境への赴任を希望したあたりから、お前はずっと忙しさにかまけて自分のことは後回しだっただろう。


 そういいながら、オーランドはカレンを撫でていた。


「それとも、何かを忘れるために仕事を入れているとか、言わないよな」


 その声に、一度頭が理解せずに、カレンは眉をよせて、その意味を考えた。


「罪悪感を忘れるために仕事してたら体壊すぞ」

「……っ」


 目を見開いたカレンに、オーランドはそっとため息をついた。


「シャナに自分は無力だって獄中で言ってたと聞いたからな。十中八九お前のことだからそうじゃないかと思ったが、やっぱりか……」


「……」


 うつむいたカレンの髪を変わらずに撫でながらオーランドは目を閉じた。


「軍人はな、何も人を殺すためにそこにいるんじゃない」

「……それはもうわかってる。」

「じゃあ、なんで軍人を志望する若者が多いと思う? 貴族の連中はただの安定の職だからという。だが、平民の軍人の志望は横ばいどころか右肩上がりだ」

「……国を護るため?」

「連中に国という大枠で物事をとらえられていたら、もっと国の貴族の連中も頭よくなるだろうな」


 皮肉って笑うオーランドにカレンは眉を寄せた。

みんなまだ騒いでてくどいようですけど、5年ですね。

あのときのことは、5年たっても鮮明によみがえってきますね。高校二年生の高校入試の休み期間。一か月後には三年生っていうタイミングで起こってしまった大震災。

部活中の出来事で、外にいるのは寒いということで開放された食堂の中で、まだ状況が理解できていないお気楽ものどもに呆れた思いを抱いたのが、思い出せます。

袴履いてる状態だったから、先生の目を盗んで崩れそうな部室棟に戻ってジャージなどの私物を取りに行ったっけ←

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ