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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
小編:カレン・ウィードリイの悔悛
109/146

序、

 そんなこんなで、まわる医院も昼時には人がはける。


「今日は遅かったね」

「補講が入ってきてしまってな」


 肩をすくめて、白衣を着たまま昼ご飯を食べる幼馴染の姿に、カレンは首吊り子爵もはすっかり所帯じみたものだとため息をついて、自分が朝に用意しておいた食事を口に入れる。


「カレン」

「なあに?」


 食べ終えたオーランドが、食器をカレンの目の前に置いて、空いた手をカレンの額に伸ばした。かさついて少しだけひんやりとした大きな掌が額を覆う感触に心地よさを感じて目を細めて息を吐いていた。


「……おい」

「何よ」

「医者の不養生じゃあねえのか、コレ?」

「間違ってもあんたに言われたくないセリフね」

「お前も人のこと言えねえじゃねえか。熱あるならとっとと呼べよ」


 このバカが、と毒づきながらも、カレンの具合に気付いていなかった受付を任せた少女が慌て始めるのを見て、肩をすくめた。


「立って歩けて飯食えるだけの元気はある。今日明日寝てりゃ、よくなるさ」

「ちょっと」

「お前、俺がお前ぐらいの熱あったらひんむいてベッドに叩き込むだろうが」

「ひんむいてって言い方ねえ!」

「パンツすら脱がしてくれてベッドに突っ込んでくれた礼はまだだったよな?」

「それ、悪党の言い方だから! 脱がさんでいい!」


 冗談ではあるが、カレンの白衣に手をかけて、もう片手はシャツのボタンを器用にはずいている。その手をあわてて止めて、涙目になってにらみあげると、面白そうな顔をしてオーランドがカレンを見下ろしていた。


「じゃあ、飯食ったらおとなしくベッドに入れ! 薬は後で持っていく」


 時短営業の札下げといてくれ、と受付の少女、エリーに言うのを聞きながら、カレンは口元をへの字にしてため息をついた。


「不貞腐れるな。休むのも仕事なんだろ?」

「……でも」

「ゆっくり休め。俺も半休取ってある」


 ということは夜にはここを出て軍舎に詰めるということだ。


 忙しいのに悪いかな、と思いながらカレンは昼ご飯を平らげて、オーランドの言葉通り、白衣を脱ぐと自分の部屋に帰った。


 独りベッドの上に転がって毛布にくるまると、意外に体は休息を求めていたらしい。


 あくびを一つすると、カレンは眠ってしまっていた。

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