序、
題名は適当です。
またの題名をオーランド泣かされるの巻(笑)
秋口のひんやりとした空気が街中を吹き抜ける中、一つの医院は、盛況を迎えていた。
にぎわう待合室の中で、きびきびとした若い女の声が響く。
「はーい、次おいで!」
その声に従って入ってくるのは子供と母親。どうやら子供が怪我をしてずるむけになったらしい。膝と手と顔が見事に泥に汚れて赤く染まっている。
「あらあら、こりゃあ、派手にやっちゃったね! とりあえず。この水で洗ってね」
と、清潔な水で怪我をした部分を洗ってもらい、それから、止血と消毒、傷口に軟膏を塗ったガーゼを当てて包帯を巻く。
「毎回毎回ありがとうねえ。カレンちゃん」
「こんなかわいいけがならいつでも来て頂戴。まあ、怪我しないのが一番いいんだけれども、やんちゃ盛りだからねえ」
そういってカレンは笑ってばいばーいと手を振る子供に手を振り返して、次を呼ぶ。
ここは、街の中にある唯一の医院。
特に専門科はなく、内科から外科まで幅広く診ている。
「カレン。来たぞ」
突然玄関から聞こえるそんな不躾なあいさつに、カレンは眉を寄せながらため息をついた。
「内科やって!」
「りょーかいだ」
と、暇を見て駆けつけてきた幼馴染のいつも通りのアナウンスにほっと息を吐いてから、酒に酔って暴れて見事に木の枝に突っ込んだという大男の手当てを始める。
「さあ? 歯ぁ、食いしばりな」
腹から出した声は、女傑といわれてもおかしくないほど据わった声で、その声に屈強な体を持つ男は、顔をひきつらせ心なしか小刻みに震えはじめた。