6、
シャナも、表情を冷たくして、男爵家令嬢を見下ろしていた。
「何か言いたいことがあるのであれば、どうぞ? 伯爵令嬢?」
「今更そんな扱いしないでください。セザールさん」
「くくく、そーですね。シャナさん」
冷たい声のシャナにそれを面白がるセザール。
目を見開いて、親しげな二人を見る兵士とギリギリと歯噛みしてにらみつける女。
「で? なにか?」
首を傾げるセザールにシャナがそっとため息をついた。
「私から言う言葉はありませんよ。どうせ、処分なさるおつもりでしょう?」
冷やかにそういうシャナに、セザールの笑みが深まった。
「それはどうでしょうか?」
「しらじらしい」
冷たい目をしたシャナにセザールの笑みは深まり、そして、振り向いて片手を上げた。
「私の護衛に引き継いで、君たちは現状の維持に努めるように。彼女は軍部のほうに連行します」
「はっ」
完全にこの邸宅の兵士を従えているセザールが指示を出して、護衛として指した、黒づくめの男が女の首根っこをつかむ。
「もってくときに殺さないように。あとでちょっとやりたいことがありますので」
「……旦那、今度はどんな実験です?」
「この前のは処理に困りましたからね、なに、今度は君たちのねぎらいを込めてしますよ」
「……ミンチじゃないことを祈る」
そういって男は女をまるで荷物のように抱えて一瞬で消えた。
「え?」
「……さて、帰りましょうか? オーランドがかんかんです」
にっこりと笑ったセザールにシャナは、さっと顔を青ざめさせてあとじさるのだった。