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オーランド・バルシュテインの改心  作者: 真川紅美
小編:シャナ・ユベールの奇妙な文通相手
100/146

6,

「さて、もう一匹の害獣の駆除と行きますよ」


 シャナの手を取って、地下牢から上がると兵士に囲まれた。


「私をだれかを知っての狼藉か?」


 腹に響く、どこか威圧感のある声でそう宣言したセザールに、兵士たちは顔を見合わせて、一人、セザールの正体に気づいたように、慌てて切っ先を下して、周りの兵士にもそれをさせて頭を下げた。


「申し訳ございません」

「二度はないと思え。……令嬢は?」

「上の階に」

「軍部に連絡し、急ぎ、こちらに向かうようにと」

「は」


 一人の兵士にそう命令をしたセザールが、残りの兵士を従えて階段を上がる。


「部屋を制圧しなさい」

「は? しかし」

「ここにいるのは伯爵家令嬢を命の危険にさらした未遂とはいえ殺人犯ですよ?」


 きっぱりというセザールに兵士たちが表情を引き締めてうなずいた。


 そして、一人が扉を蹴破るのに従って、ぞろぞろと武装した兵士たちが中を制圧していく。


「なんの真似ですか! おやめください」


 中で待機していた侍女たちのけたたましい叫び声もすぐに収まって、間もなく、制圧が完了した旨を伝える兵士が一人、セザールの前に膝をついた。


「ご苦労。そのまま維持していなさい」

「はっ」


 すっかりと板についている命令の口調も、中に入ってもなお警戒する鋭い表情も、いつもの穏やかのセザールではなかった。


「ロラン様っ?!」


 驚いて飛び上がって、そして飛びつこうとする令嬢に、そばで取り押さえていた兵士たちが、床に押し倒して、身動きをとれないようにする。


「なんの真似でしょうか? これはっ」

「なんの真似? あなたがそれを言いますか?」


 床に押し付けられたままの令嬢を見下ろして、冷ややかな視線を送る。


「なぜ、このような、なんで……っ」

「まず、私はお前に発言を許した覚えはありませんよ。私をそれなりの身分の者として扱おうとするのであれば、それなりの礼儀をもって接してください」


 剣の鞘で令嬢の顔を上げさせたセザールは、すっと目を細めた。


「ろ、ロラン様……、はつげを……お許しを……」


 雰囲気をがらりと変えて、威圧するよりも濃い気配を漂わせたセザールに、押し倒された令嬢は声を詰まらせた。


「許す」

「なぜ、私に、このようなひどい目に? まさか、あの女に騙されて……っ」

「答えは一つ。お前たちが、亡き者にしようとしていたのは、伯爵家の令嬢だからですよ。殺人未遂ということですね。彼女は、首狩り伯爵としてかの有名な、オーランド・ツェザーリ・バルシュテイン伯爵の実の妹である、シャナ・ユベール・バルシュテイン嬢。身分身分というお前なんかより、ずっと、彼女のほうが、私と身分的に釣り合うのは、笑えますよね」

「そんなっ。その女は市位の店で働いていると……。嘘だったの……っ!」

「慈善活動で働く女性がいることを、よもや、知らないのですかね? 彼女も同じような理由で、一般の方々では購入の難しい薬の代用品としてハーブを売る女性です」


 まあ、そんな容姿では、慈善活動のじの字も知らないでしょうがと、くつくつと笑うセザールはちらりとシャナを見た。

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