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6.

 なんの嫌がらせだろう。


 そっと視線を動かすと甲冑に花輪が飾られていた。


 壁に貼ってあるメモには「黒騎士、花がある間は動くな!ヤバイから!ばれたらヤバイから!すまん、こじらせた! あと、女なんだから個人情報簡単にさらすな!ちなみに俺は首都圏在住、お前の一歳上だ、多分」の文字。


 近づかなくとも見えるよう、デカデカと書いてある。


 意味不明なのだが、切羽詰まった感があふれている。そして、フェアじゃないと思ったのか、自分の個人情報を追加しているあたり、律儀な人間だ。


 それにしても、この個人情報になんの問題があったのだろう。


 白騎士と同じく、住んでる地域と年齢しか書いてなかったのにと思いつつ慎重に視線を巡らす。


 台座周辺にも花が飾られているようだ。


 人の気配が近づいてきたので、思わず息を止める。肺も何もないんだけど。


 麗しい美青年が視界に入った。多分、これまた神官長。


 するすると近づいてきた神官長に愁いをたたえた灰青色の瞳でじっと見つめられ、硬直した。


 美形のどアップは迫力だ。


「今日もお目覚めではないのですね」


 呟いて、金茶色の長い睫毛をふせる。


「いつになったら貴女と言葉を交わすことができるのでしょうか」


 指をそろりと兜に這わせ、切なげに溜息をつく。


 いや、言葉を交わすも何もしゃべれませんけどと思いつつ、なんだか嫌な汗が流れるような気がした。


「貴女にお会いして、この想いを告げるだけを願い、お待ちしているのに」


 ヤバイ!


 この人、なんだかヤバイよ! ヤバイって、白騎士、これのこと?!


「この輝き、このなめらかな肌。貴女はあの時と少しもかわらずお美しい。許されるならば、全身くまなく私の手で磨き上げて差し上げたいのに。男に生まれた我が身が悔しいばかりです」


 信仰から甲冑愛にこじらせたー?!


 甲冑の精神安定機能もフォローしきれなかったのか、恐怖のあまり意識が飛んだ。


「終点です」


 運転手さんからの無情な宣告に再び意識を飛ばしかけたが、泣く泣くバスを降りて携帯電話に手を伸ばした。


 待ち合わせに遅れる旨を友人に伝えるといい年して居眠りして乗り過ごすなとお説教された。返す言葉もございません。


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