凶悪なテロリスト達が中学校の全校集会の最中に乱入して立て篭もりを始めたので、屋上でサボっていた俺とたまたま一緒だったDQNとオタクとで彼らを殲滅する事にした
中学2年生の頃の妄想のテンプレートを目指して書いてみました。
読み切ることが出来た人は中二病患者です。
面白いと思った人は末期患者です。
俺の名は黒内コウ。
絶対中学に通う、どこにでもいる普通の中学生だ。
まあ、普通と言っても、数年前まで知り合いの小父さんの都合で傭兵をやらされ、各国の紛争や内乱で大暴れしていたこともあったが。
今となってはそんな物は酒の場での武勇伝にもなりはしない。
特にこの学校に入ってからは、平和な日本という国柄のせいですっかり骨抜き状態になってしまっている。
「平和だな……」
学校の屋上の給水タンクの横に寝そべり雲を眺めながら、俺は一人言ちた。
「あー! コウ君、やっぱりここにいた! もう、今日は全校集会だよ!」
……っち。
非日常を満喫していると、幼馴染でクラス委員長の栄ヶ崎がそれを邪魔をする様に声をかけてきた。
「……ああ、ちゃんと参加するさ。先に行っとけよ、委員長」
手をひらひらさせると、「絶対だよ!」と声を上げて彼女は去って行った。
……あいつは何で俺に執拗に構うのか、全く理解に苦しむ。
もちろん全校集会には、出席する気はない。
「おい、それドローンじゃねえか。やべ、まじかっけーんすけど!」
「デュフww
これこそ、未来の遊具にして、4枚羽根機の元祖でござるwww
高度なジャイロと制御装置を内蔵し、放っておいても空中で静止が 」
「や、そう言うのは良いから」
「オウフ失礼www!」
……っち……また、面倒くさそうな奴らが……。
俺はその耳障りな会話を遮断する様に自分の両耳にイヤホンをねじ込むと、聞きなれた洋楽の開始ボタンを押そうとする。
次の瞬間、断続的な轟音が体育館の方から響き渡った。
ドローンが云々話をしていた二人は目を丸くして体育館側を見ていたが、俺はすかさず給水タンクの陰に隠れ、戦闘態勢に入る。
傭兵は、銃声で相手を判断する。
この音は、カラシニコフ小銃。
民族自決と革命の象徴として名高いそれは、その耐久性や利便さも相まって非常にしばしば、……テロリストが愛用することで知られていた。
なんだか面倒なことになってきたな……そんなことを思っていると、携帯電話に着信が入った。
……小父さんからである。
「もしもし、小父さんか。今立て込んでいるんだけど」
「……テロリストの件か。
すまん、あまりにも急で手が回らなかった」
……ほう、流石に情報が早いな。
電話の前で平身低頭する小父さんの姿が思い浮かんだため、俺は嘆息してフォローを入れる。
「……良いって。それで、要件は?」
「現在、警察、消防、自衛隊に動くように手筈を取っているが、間に合いそうにない。
このままでは、少なくない数の死者が出る。
唯一の良い知らせは、テロリストが占拠した学校が、黒内君の学校であることだけだ」
「……まさか、俺に動け、と?」
「黒内君……君が戦いを好まないのは百も承知だ!
それでも、このままでは、無駄な血が流れてしまう……!」
いや、戦いを好まないというか、単純に面倒くさい。
そう話を続けようとして、何故だか委員長のことが頭に浮かぶ。
俺は頭を掻いて小父さんに話を続けた。
「痛風ラーメン」
「え?」
「だから、痛風ラーメンのトッピング全部乗せだよ。
奢ってくれよ、小父さん」
「あ……ああ、分かった、替え玉も付けよう!
そうだ、それと、首謀者は出来れば生かしておいてくれ!」
「まーた無茶ぶりを……」
「毎回、本当に申し訳ない!」
「いや、良いって、そっちはそっちで仕事してくれよ」
俺はそう言うと、電話を切る。
改めて体育館に目をやると、迷彩柄のマスクで顔を隠した男達が外にいるだけで10人以上確認できる。
恐らく一人でも殲滅は可能であるが……面倒だな。
「おい、DQN、オタク」
俺はまだ現状を掴めていない二人に声を掛けた。
「協力しろ。これは、戦争だ」
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体育館では数人の死体と、無抵抗で床に這いつくばる教師・生徒達を見つめ、私は溜息を吐いた。
「目標の制圧、完了しました」
「遅い」
平和で腑抜けた日本の教師、学生を鎮圧するのに40名掛かりで3分もかかるとは。
テロリストの隊長である私は、部下達のあまりの不甲斐無さに呆れる。
既に失われた私の右目からも涙が出てきそうだ。
「銃殺した体育教師と男子生徒は高く吊るしておけ、反抗・逃走予防だ。
部隊の20名は引き続き鎮圧を継続。
残り20名は校舎内に残る生徒を捕獲せよ。
替えは沢山いるからな、殺しても構わん」
「了解しました!」
部下は去っていく。
「おい……隊長の右目って……」
「ああ……なんでも昔、凄腕の傭兵に潰されたらしいぜ……部隊ごと、な」
後ろから、声を殺しているのだろう会話が聞こえた。
……全く、戦争の最中に仲良く世間話、か。
前の部隊なら、処刑ものだな。
「貴様ら、聞こえているぞ」
「……ッ!申し訳ありません!!」
ふと、突然、無くなった右目が疼いた。
例えるならば、幻肢痛の様な疼き。
こんなことは今までなかったが……なんとなく中学校舎を眺めたその時。
『こんにちは、テロリストの皆さん。
ようこそ、絶対中学校へ』
……突然、校内放送が流れだした。
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『貴方達には選択権がある。
一つは、今すぐ武装を解除し速やかに投降するか……』
「ちっ、中学生の分際で偉そうに喋りやがる。
全員ぶっ殺してやろうぜ」
俺達の放送を聞いて、拳銃を持った10人程度の覆面男が放送室へ向かっている。
『それとも部隊壊滅の憂き目を晒すかである……』
「そこまでだ、糞餓鬼共め!」
放送室に飛び込んだ10人は、俺達を見つけられないでいる。
それはそうだ。オタクの持っていたトランシーバーを即席で改良し、遠隔から放送しているのだから。
「っち、誰もいない?」
「それにしても、なんだか煙くないか?ここ」
煙いのではない。
それは、家庭科室から失敬した小麦粉が、あたり一面に散っているだけだ。
「コポォwww」
オタクが大喜びでボタンを押すと、放送室内で火花が散って。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!!!!!
「な!? ぐおおおおああああああ!!」
……大爆発を起こした。
突入したテロリスト達はひとたまりもない。
全員火達磨で叫び声を上げながらて一頻のた打ち回った後、一人残らずその生命活動を止めた。
「……エゲツいな。なんなん、あれ」
「ヌフウww粉塵爆発でござるよww」
DQNの質問に、まるで自分の手柄の様にオタクが答えた。
粉塵爆発……ある一定の濃度の可燃性の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象である。
こんな単純な罠に引っ掛かるとは、歴戦の傭兵である俺からしてみれば、お粗末以外の何物でもない。
先程もドローンを無音に改造して体育館の中に侵入させ、テロリストの人数が40人であることを確認出来たのだが……。
そもそもそんな物の侵入を許すとは、やはりこの国はテロリストすら平和ボケしているようである。
そんなことを考えながら、テロリストの拳銃を回収していると。
「いたぞ!奴らだ!!」
「よくも仲間を!殺してやる!!」
轟音を聞いて他のテロリスト達がこちらへ向けて発砲してきた。
俺達はあらかじめ作っておいた机のバリケードに隠れ、拳銃を向ける。
「ドプフォwww反動で拙者の顎の脂肪がwwwこれは射撃ゲームとは全く違いますなwwww」
「んな事も知んねーのかよ!もっと脇締めて打て、オタク!」
……二人の漫才に溜息をつくと、俺はバリケードから飛び出し直接敵を狙いに行く。
「お、おい、黒内!」
「生徒が出てきたぞ! 殺せぇ!!」
「な、なんだぁ? 当たらねえ! こいつ、弾を避けていやがる!?」
残念ながら、俺からすればこんな物は茶番以外の何物でもない。
拳銃の向けられている方向を見れば、弾が飛んでくる位置なんて分かるし、分かれば避けることなど造作もない。
手慣れた手つきで隠し持っていた瓶を彼らの上に投げ込むと、テロリストの一人が思わずそれを銃で破壊した。
「な、なんだこれは、ぐわあああああ、痛い!?」
……投げたのは、理科室で失敬した濃硫酸。
まともにかかればそりゃあ痛いだろう。
混乱した10人は抵抗らしい抵抗も出来ず、俺はたちまち彼らの制圧に成功した。
……もちろん、殺害と言う形で、だが。
「黒内、お前、マジでエゲちいな」
「チート乙wwコポォww」
二人が、そんなことを呟いた。
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ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!!!!!
校舎裏からの轟音で、私は思わず眉間に皺を寄せ目を瞑り頭を抱える。
学生数名相手に校舎内で爆発物を使うなど何を考えているのだ、私の部下は。
……まあ、前向きに考えよう。
日本政府に対し2億ドルの身代金を要求したところだから、先程の爆発も良い威圧にもなるはずだ。
そこまで考えてから、何か違和感を感じる。
大きなものではないが……場合によっては致命的な可能性も含まれる様な違和感を。
「たいちょー、ちょっとお願いさせて貰ってもいいっすかー」
私が考え込んでいると、チャラそうな部下が私に向かっておかしな敬語を使って話しかけてきた。
思考を阻害され、私は苛立たしげに彼を見つめる。
「……なんだ、言ってみろ」
「何人か連れてパコってきていっすかー」
自分でも顔を顰めているのが分かる。
見渡すと、部下の内の10人程が下卑た笑みを浮かべていた。
……頭痛がするが、仕方あるまい。
「……5人までだ、殺すなよ。外の倉庫を使え」
「さっすがー。たいちょーは話が分かりますね! よし、お前ら、来い!」
既に選んでいたのか、何人かの少女達が無理矢理男達に連れて行かれる。
「ああ、委員長の栄ヶ崎さん!
学園のヒロインの美ヶ崎さん!
イギリス人とのハーフの志ヶ崎さん!
ロリ巨乳の出ヶ崎さん!
態度もおっぱいも大きい井ヶ崎さん!」
「離して! 誰か、助けてぇ!」
女子生徒達は必死に抵抗するが多勢に無勢である。
私は他の生徒達が暴発しないように拳銃を向けるが、誰も動こうともしない。
「じゃあ、ちょっと楽しんできますわー」
5人の女子生徒を連れて、10人の部下達は体育館を出て行った。
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「……それで、コイツをドローンに搭載して使う」
「デュフフォwww」
「最後に、DQNと俺が残りの敵を掃討して終了だ」
「俺は突撃だけで良いんだな。
おっけ、秒で済ますわ」
俺は体育館内での残り20名のテロリスト制圧作戦を二人にレクチャーしていた。
コイツらはなかなか動きがよく、意外と理解が早くて助かる。
「突入時間はヒトヒトマルマルだ」
「ヒトヒト?」
「ヌフww11時のことでござるwww」
「じゃあそう言えや!」
DQNは無知を誤魔化す様に叫ぶと、3人はそれぞれの持ち場に向かう。
オタクはドローンを持って屋上に。
DQNは校舎を大きく迂回して体育館の裏口に。
そして、俺は体育館の正面玄関に向かう。
廊下を走っていると。
何人かの女子生徒を連れたテロリストたちが倉庫の中に向かうのが見えた。
そして、女子生徒の中には、委員長の姿もあった。
……ふぅ、やれやれ。
俺は溜息を吐いて時計を見る。
時間は10時54分を指していた。
作戦開始まで5分程度か。
「十分だな」
俺は一人言ちると、4階の窓から飛び降りた。
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「なあ、ここにいない奴って誰か知ってるか?」
「たまたまサボったラッキーな奴か?
DQNとオタクと…後は黒内かな」
「黒内って、黒内コウか? あの、あんまり目立たない奴……」
生徒の何人かがボソボソと会話を始めたため威嚇しようと近づくと、信じられない名前が飛び出してきた。
「おい、貴様ら。今、何と言った」
「ひぃ! すすすすみませんっ、黙りますから!」
「黙るな! もう一度言え、誰がここにいないって!?」
「え……えっと、DQN君と、オタク君と、黒内コウ君の3人です」
黒内コウの名前に、部下達がざわめき始める。
「お……おい、マジかよ、嘘だろ!」
「『最強の殺戮兵器』、『疾黒のコウ・クロウチ』の異名を持つ、あの黒内コウが!?」
「……っち!貴様ら、鎮まれ!!」
私は部下達を一喝しながら、先ほどの無くなった右目の疼きに納得がいっていた。
……私の右目が、自身の敵を取りたがっているのだ。
そして同時に、先程の違和感の正体に気がついた。
部下達には重火器を一式持たせているが。
先ほどの爆発を起こすほどの武器は、果たしてあっただろうか?
……そして、結論にたどり着く。
「……っく、粉塵爆発か……!!」
これが黒内の仕業だとすれば、校舎内に突入した部下達は今頃、全滅しているだろう。
……ここでも私の邪魔をしてくるか、黒内ィ……面白い、面白いぞ……必ず殺してやる、必殺だ!!
私は既に失っている右目に笑みを浮かべながら鉈ほどもある巨大な愛用のナイフを愛おしく撫で回した。
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「いやぁぁ! やめてええぇぇ!」
倉庫の中からは少女達の悲鳴が聞こえる。
俺はどうやって入れば効率的に敵を倒せるか考えていたが。
「助けて、……コウ君……!!」
……委員長の叫び声に思わず、真正面からの突入を敢行することになった。
倉庫の中は咽るような熱気に包まれていた。
「なんだてめぇは!?」
テロリストたちが銃を俺に向ける。
「……はぁ、最悪手の正面突破をするとは、俺もヤキが回ったようだな。
まあ、お前ら程度には最善手なんだがな」
そう呟くと、俺は彼らに向かって走りだした。
「相手は丸腰だ、打ちまくれ!!」
彼らは俺に向かって発砲するが、こんな部屋の中で打ちまくるのは悪手だぞ。
「うお、なんだ!? 弾丸が跳ねて……痛てえぇぇ」
跳弾。
しかも、相手の拳銃の動きを読んで、それをコントロールできる俺にかかれば、拳銃を持ってなくても敵を制圧することができるのだ。
痛がっているテロリスト達にその辺に転がっていた消火器を噴射して目潰しをする。
転げまわる彼らの頭を、消火器の金属部分を使って潰していく。
鏖殺完了だ。
俺は一息つくと、少女達に目をやる。
服の一部を破られている者もいたが、幸い、まだ『コト』には及んでいなかった様だ。
「コウ君……」
「貴方は、同じクラスの窓際席で物思いにふける横顔が綺麗と女子から密かに人気のある、黒内君……」
「いつも一人だけどそれで孤独と言う訳では無くその雰囲気がとても似合っていると上級生の女子の間でも評判の黒内君……」
「前髪の絶妙な長さのせいで両目が見えないけど、磨けば光る男子とのことで下級生の女子の間でも評判の黒内先輩……」
「いつも目立たないふりをして、でも何かを隠しているような、時折見せる寂しそうな瞳が母性本能を擽る黒内君……」
思い思いに俺への印象を挙げているが。
やれやれ、孤独やら寂しそうやら、散々な印象のようだ。
「酷い評価だな……。
まあ良い、今日あったことは誰にも言わずに忘れてくれ。
……俺は静かに生きたいんだ」
俺がそう呟くと、女生徒らはぽかんとした後、暫らくして真剣な顔で頷きあってくれた。
「よし、良い子だ。お前らはそのまま裏門から逃げろ。……委員長、頼めるな?」
何故かポーッと俺を見ている委員長に声をかけると彼女は慌てふためいて
「う……うん、任せて!」
と元気に返事をした。
時間にすると3分程度。
やれやれ、何とか間に合いそうだな。
俺は急いで向かうべき戦場へ足を進める。
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私が奴ならどうするか。
敵をバラバラにしての各個撃破。
そして、不意をついての強襲。
しかし、周りに生徒がいる状態で、武器は使えないはずであるし。
……いや、使える武器が一つあったな。
私は何気なく体育館の天井を見ると。
その武器をぶら下げたドローンが空中で無音の静止を行っていた。
私は驚きのあまり、言葉を失う。
ドローンを見つめる視界の端で、体育館の備え付けの時計が、ちょうど午前11時を指していたのが、何故か印象的だった。
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時間はヒトヒトマルマル。
「フォカヌポウwww」
屋上からオタクの声が響いたため、体育館に突撃を敢行する。
オタクがドローンに搭載した武器は、テロリストの一人から奪った……閃光弾。
使用直前にドローンから音を出しテロリスト達の注目を集めた後に使用した。
学校の先生・生徒は這いつくばって無抵抗のポーズをとっていたので効果は無いが、テロリスト達には十分な効果があったようで、全員が目を抑えて床に突っ伏している。
テロリスト達が無力化したことを悟った生徒達は、全員一目散で体育館から逃げ出していった。
裏口から出てきたDQNと共に、地面を転げ回るテロリスト達に弾丸を撃ち込んで片っ端から止めを刺していった。
……なんとも歯応えのない、七面鳥撃ちである。
「……貴様ぁぁ! 黒内コウだなぁぁ!」
おっと、訂正しよう。
一人だけ、ちゃんとしたテロリストがいたようだ。
眼帯を右目に付けた彼は左目を瞬かせこちらを睨みつける。
「ギリギリで閃光弾に気づいた所を見ると、まあまあの判断力を持っているようだな。
貴様が大将首か?
だが、お仲間は壊滅している。残念ながら作戦は失敗だな」
「ああ。だが、もうどうでも良い。
お前を殺したという箔が付けば、例え捕まったとしても何とでもなる。
どこぞの組織が私を刑務所から攫ってくれるはずだ」
なるほど。
確かに俺を倒せるとなれば、例え捕まえられていても欲しがる組織は多いだろう。
「お前、私の事は覚えているか?この右目はシリアで貴様に……」
「ああ、そういう奴多いから気にしない様にしてるんだ、俺。
悪いがお前の事は覚えてないし、これからも覚えるつもりはない」
そう答えると、テロリストは目で見て分かるほど憤慨した。
「さて、お喋りはこのくらいにして。お前、投降はしないのか」
「……勿論、拒否する!!」
男は鉈の様な大きなナイフを取り出す。
「マチェットか」
「どうした、掛かって来い。その拳銃で、俺を打つが良い。
もっとも、初撃で私を撃ち殺せなければ、次の瞬間死ぬのは貴様だがな」
確かにコイツを拳銃で撃てば終わりだが。
「いや、やめておこう。
300m以内の距離なら100%ヘッドショットをする自信はあるが。
……お前は生かして捕える様、小父さんから言われているんでな」
「……はあ!?」
俺はカラシニコフをその辺に投げ捨てると。
胸ポケットから削ったばかりのエンピツを取り出して、相手に向けた。
「ほら、遊んでやるから、全力で掛かって来い」
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おかしい。
どうしてこうなった。
私のマチェットによる斬撃を、奴のエンピツが何度も受け止める。
エンピツはへし折れるどころか、傷すらつく気配がない。
「受け止めているんじゃない。
力を込める瞬間にエンピツでマチェットを抑えに行っているだけだ」
理屈は分かるが、それは相手との絶望的な技量の差が無いと不可能である。
私のナイフ技術は世界でも5本の指に入ると自負している。
それを……それをこんな餓鬼に……。
「う……うわああああああああ」
私は我を忘れてめちゃくちゃにマチェットを振るう。
黒内コウはそんな私を興味を失ったような目で見て。
「それじゃあ……逆の方も貰うよ、名前も知らない誰かさん」
……そして、私から永遠に光を奪っていった。
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「平和だな……」
学校の屋上の給水タンクの横に寝そべり雲を眺めながら、俺は一人言ちた。
あれから体育館に機動隊が突入し、テロリストたちを確保した。
その後他の生徒からどうやってテロリストを倒したのか聞かれたが、面倒臭かったのでテロリストと戦ったのはDQNとオタクの2人だけであることにした。
2人もまんざらでもないのか特に否定せず、生徒達の興味は俺から二人に移っていったため、俺は再び屋上で気ままなスローライフを始めることが出来る。
……はずだったのだが。
「あー! コウ君、やっぱりここにいた!!」
「黒内君、私、一緒に食べようと思ってお弁当を作ってきたんだけど……」
「コウ・クロウチ!私と一緒にフィッシュ・アンド・チップス食べよ!」
「せ……先輩!わ……私も、お弁当を……め……迷惑ですか……?」
「黒内コウ!私と食事をとる権利を与えても良いわよ。
感謝して啼泣なさい!!」
……何故だか学校を代表する美少女達が、俺の周りをちょろちょろするようになった。
コイツらの俺への評価が分かっているため、変な期待も持たないつもりであるが……こんなにしつこいと、『こいつら俺のこと好きなんじゃないか』と少し期待してしまう自分が腹立たしい。
「へえへえ羨ましいこって!」
「リア充爆発www」
DQNとオタクが数人の生徒と一緒に妬ましげにこちらを見ている。
お前ら、ドローン操縦しているならそっちを見ろよ、危ないから。
「……お、あっちからもドローンが来るぞ」
「オウフwww拙者のよりも凄い作り込みでござるwww
まるでwww軍用ヘリwww……」
二人は最初は笑顔で、しかし、次第に顔色を青ざめて次第に大きくなってくるヘリコプターを眺める。
「お、来た来た」
バラバラバラ!と激しい音を立てて、自衛隊のヘリコプターが中学校の屋上に着陸した。
「黒内君、学校からの許可も頂いたぞ。今日は痛風ラーメンを奢る約束だったからなあ」
ヘリコプターの中からは日本国内閣総理大臣殿が顔を出し、嬉しそうに笑った。
「トッピング全部乗せの替え玉ありだぞ、小父さん」
俺は彼にそう言うと、ヘリコプターのタラップを踏んだ。
「そんなわけで。お前ら悪い、今日の昼飯は先約があるから。
……また今度な」
呆然としている面々、ヘリコプターの爆音の中、委員長だけが「絶対だよ!」と大声を上げて手を振った。
斯くしてやっと俺にも非日常が訪れた訳である。
ヘリコプターに入ると、小父さんは今回の事件に関して嬉しそうに俺に報告し始めた。
俺はその耳障りな報告を遮断する様に自分の両耳にイヤホンをねじ込むと、聞きなれた洋楽の開始ボタンを押した。
反省
DQNがあんまりDQNじゃなかった。
DQNとオタクがあんまり活躍しなかった。
後半思った以上にマジになってしまった。
あと、普段は別で小説書いてますのでそちらも暇な方は是非。
短編 『ナレーター「転生トラックドライバーの朝は早い」』
http://ncode.syosetu.com/n7629cq/
長編 『豚公爵と猛毒姫』
http://ncode.syosetu.com/n8014ci/
次作出来ました〜!
『この辺りの武闘派893達が幼馴染の委員長を拉致したので、ヤボ用が重なった俺とたまたま出くわしたDQNとオタクとで彼らを制圧する事にした』
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