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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Gratuit .

作者: ✘恢 •.

「……ちょっと、ちゃんと出てよ」


『すみません、つい』


「……つい、なに?」




傷害事件の現場となった学園の廊下。


端から端の距離でのLINE通話、である




「こっちにはバタフライナイフ、そっちは?」


『こちらには……ゴム、ですね』


「ゴムって、なに?」


『いえ、だから、コンドー……』




ものすごい速さでブーツを駆け鳴らして来た彼が


サッと保管袋を手渡してきた、赤面つきで。




「……どうも」


「通話で言うことないじゃん……」


「今更、処女のフリですか?」


「……!」


「……可愛いですね」




カメラで現場写真を残し、メールで送信し


検視キットを取り出しては指紋を採取したり


何本もの綿棒を器用に袋分けては、印を書き込んだり


足跡にアルミ粉を振りかけて、待つ真剣な横顔に見惚れた


仕事の正確さも長年のキャリアを物語っている。




「……なにか?」


「え?」


「紅茶でも飲みます?」


「……それより学園側、なんだって?」


「ニュースになるのは痛手だけど、事件にするそうです」




ぺりっ、と足跡採取用の用紙を


次々と床に貼り付けていき


何十枚とモノトーンのクリアファイルに


ファイリングしていく素早さと手先の器用さ。


そういえば、スマホの液晶保護シートも


手袋をはめて真剣に貼り付けていた様を思い出し


自分のスマホと黒の手袋を交互に見た




「……職業病?」


「手袋はめると、仕事モードになるんです」


「だからって……あはは」




思わず笑い出し、煙草を吸いに行くべく現場を後にする




-




「お姉さんって警察の方ですか?」




携帯灰皿を持ちながら、吸っていると


突然、声を掛けられ 肩を震わせた




振り向けば自分より体格のある、上品な雰囲気で美麗の男子生徒だ


ぎこちなく微笑を浮かべて、尋ねる。



「……お姉さん?」


「まさか、お兄さん?」


「……そう、だけど」


「あはは、俺、犯罪とか興味あるんですよ」


「えっと……それで?」


「LINEやってないかと、思いまして」




間空いを詰めようとする相手に反して、離れる


格闘の基本中の基本だ


携帯灰皿を閉じ、仕舞うフリをして


スマホに手をかけた時、逆に着うたが流れ出した




「もしもしっ」


『まさかLINE交換とかしてませんよね?』





Fin .

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