9話 カエデの能力 2
「さっ休憩も終わりですよ、カエデ、初めて下さい」
「よし!やるか!そんじゃルークには魔法を掛け直して、『コンファム』!」
俺とルークに魔法掛け直し、さっ張り切ってやろう!
─ ルーク─
前は中途半端だったけど、今度はちゃんと見れるな、あん時はヤバかった……て、今思い出すと別に逃げる必要なかったな……
「コホン、では初めます……」
「カエデ、魔法陣は必要ないのですか?」
カエデ、張り切りすぎて魔法陣の用意忘れるなんておっちょこちょいだな。
「あっ大丈夫ですよ師匠、前回試した時も使ってなかったから、というより……まっ見たら分かるよ」
あれ?そうだったか?前は魔法陣を書いてたはずだよな?
「ルーク、本当に情報量多いから気をつけろよ!」
「大丈夫だって!ヤバかったら、カエデに掛けて貰った片目だけ目をつぶれば問題ないぜ!」
カエデは、心配し過ぎだな。
「それでは詠唱を始めます……『我、ここに新たな理を清浄する空間を顕現する……』」
カエデが、そう言うといきなり片目が光で見えなくなり、目に痛みが走った。
「ギャアアア目がぁぁ!!」
「大丈夫ですか!?ルーク?!」
「『ヒール』!『マインドヒール』!ルークくんこれで大丈夫?」
「やっぱり……やらなくて良かった。」
なんだこれ?カエデの言ってた通りすっげえ量の何かが目に入って来る感じだ……片目だけにして良かったぜ。
「………………」
やべ、カエデが無言でこっち見てる、詠唱中は呪文以外を話すのは、まずいからな、後で怒られそうだ。
「わりー、カエデ、続けてくれ」
「『我、空間に改める理をなす、ルーンを連ねる……』」
痛みは引いたが、まだ見えづらい片目をつぶって見る、そうか、あの時の光ったのはこれか。
「カエデはここまで出来るように……まるで聖女ジュリーが神聖魔法を唱えた時と同じですね……」
「ええ……同じね、しかもまだちゃんと修得した訳じゃないのに、これは隠さないと本当にまずわね……」
「これが、カエデの魔法……」
師匠達も驚いてる、魔法陣を魔法で描くなんて聞いた事もないし、魔法陣からは知らないルーン文字が溢れてまるで雪のように降り注いでいる。
そして次に呪文を唱えた、カエデが手を一振りした瞬間、カエデの目の前にルーン文字が並んでいるこれは以前見た時と同じだな。
「『流れを乱す不浄を払い………清き流れに戻っ……す!』
『トゥルース・オルタレーション』!」
カエデが途中つっかえながらも、詠唱が完了すると同時に
カエデの前に並んでいたルーン文字が入れ替えられ、2列並んで浮いている。
「上手く要ったようですね、お疲れ様です、カエデ」
「2つも同時に魔法を校正するなんて、凄いわ、カエデさん」
「呪文を唱えてた時、カッコ良かったよカエデ」
「途中邪魔して悪かったな、カエデこれで……カエデ?」
「『相応しき者と共に真の姿を示めせ、『スペルギフト』!」
「「「え?!」」」
カエデが今まで聞いた事のない魔法を唱えると、完成していた魔法を形作る、ルーン文字が師匠の体に溶け込んでいくように流れていく……なんだこれ?!
「これは……間違い有りません……私はカエデが直した魔法を修得したようです、魔法名のみで発動可能です、カエデは此処まで……」
普通は、
魔法陣+詠唱、詠唱、魔法名のみ、無詠唱
の順に魔法を使えるようになっていくのを、カエデは魔法名のみで発動可能までにした……俺でも解るこんな事もし知られたら大変な事になる……
「あの……これって凄い事何ですよね?」
「アリスちゃん……普通は新しい魔法を覚えてから、簡単な魔法で才能があっても魔法名のみで発動出来るように成るのは3ヶ月はかかるのよ……しかも今回の魔法は上級の中でも難しい部類……それを一瞬で修得出来るなんて知られたら、カエデさんは……」
「俺の取り合いで争いが起きるかも知れない……か、まあそうだと思ってたよ、最近新しく覚えたから使ってみたけど、これ、どんな奴でも上級魔法士に慣れるって事だからな~」
「カエデ……その魔法には制限などはないのですか?」
そうだ、こんな魔法がなんの制限なしなんて有り得ないだろ?!
「制限……特に、あっ!一応適性がないとまずのと、多分、使える魔力量がないと発動せず気絶すると
思います」
「適性……ですか?」
「カエデさん、適性ないとどうなるの?」
「適性?」
適性って言うと使える魔法の属性の事だよな?
「アリスは知らないと思うから、詳しく説明すると、人には使える属性が違う、それは扱えるルーンも限定される、魔法陣を使った場合は例外だ、ここまでは解る?」
「うん、そこまではミレーヌさんに説明して貰ったからわかるよ。」
それは俺も師匠に教えて貰ったからわかる、魔法陣は魔力さえあれば、自動で使用属性に変換してくれる物があるから例外なんだな。
「そこで俺の魔法で例えば、火適性がない者に火属性上級魔法、
『インフェルノ』を覚えさせると無理やりルーンを身体に叩き込む事に成るから、他の魔法まで使えなくなるか、制御できなくなり、暴発してしまう……かも知れない」
「それは、制限というより注意事項ですよ……カエデ」
「そうね……逆に利用できそうな魔法よ」
「かも知れないってどうなるか、わからないの?」
掛けられたら、魔法使えなくなるなんて、恐ろし魔法だな。
「さすがに試してみないと、わからないけどさ……」
チラ
「おい、なんで俺を見るんだよ?!嫌だぞ、そんなの!」
「だよな……掛けても永久に魔法が解けないかも知れないし……、うん今度魔法使える、盗賊にでも会ったら実験してみるか……」
え……えげつねー、
「てかそんな危ないこと冗談でも怖ええぞ!」
「さて、カエデの魔法がどのくらい非常識な事が分かったかな?アリス」
師匠……無視?!
「なんとなく分かりました……そういえばカエデはどんな属性の魔法が使えるの?凄く強い魔法が使えるんでしょ?あれ?どうしたのみんな、苦笑いして……カエデ?!」
「オレ、魔法構成に関する魔法以外、発動シナイ……」
落ち込みながらもカエデが説明したが、そうなんだよな……カエデは魔法の発動、一歩手前まではできるけど、そこらどんなに訓練しても攻撃魔法は発動しなかった……
分かったのは変わりに誰かに発動して貰うしかない事だな。
「そっそうなんだ……そうよね凄い魔法をもう持ってるんだから、当たり前よね、変な事聞いちゃったね」
「は~俺も先代の魔法と同じなら良かったんだけどな、なんでこんな魔法使えるんだろう……」
「先代?」
「カエデの前に呼ばれたカエデのご先祖の事です、召喚されたのは、約200年前……『創生の賢者』と呼ばれ、あらゆる魔法を使え、新たな魔法を簡単に作りだせたので、各国から要請されたくさんの魔法を作りだしましたが、最後は、最初に話した通りです」
最後は魔王に作った魔法の一つを利用されたんだったな、その魔法の事は秘密らしいから、俺も知らない……けど。
「俺はカエデの魔法は十分その先代より凄いと思うけどな。」
「だよね、その先代さんも凄いと思うけど、なんかカエデの魔法ってもっと凄い事出来そうだし。」
「カエデの魔法はこれからも、常識はずれに強くなっていくのは分かりますね」
「私はカエデさんが人間辞めないか心配ね……」
だから別に今ままでいいだろ。
「みんな……それは、慰めてるのか、呆れてるのか、いまいちわからないんだけど!」
「まあまあカエデ、これでカエデの自己紹介は、終わりですよ、アリスの自己紹介がまだちゃんとしてないの忘れた訳じゃないですよね?」
「「あ……」」
俺とカエデはすっかり忘れてた……
「カエデ、ルーク酷いよ……」
「いけませんね、女の子を悲しませるなんて……明日が楽しみです
」
師匠が笑顔で恐ろし事を言いだす……ん?!アリスの口元が笑ってる?!師匠気づいてくれ!
「ブルーナさん、私は大丈夫ですから、怒らないであげて下さいね。」
「そうですか?考えて起きます」
まさかの保留?!これは覚悟決めるしかないぞ!カエデ!
「くそ……もっと師匠が好きな物買って来るんだった……」
カエデ……
「それじゃ改めて自己紹介するね、私の名前は、四十九院アリスです、両親がイギリスと日本のハーフ同士で小さい頃、日本に住むことになって来たので、見た目は日本人に見えないですよね、元の世界では、学生で弓道部でしたみんなよろしくね」
アリスは、ハーフだったのか、ハーフは一部の種族主義の奴からバカにされるからな、くそ!酒場でカエデをバカにした奴を思いだしちまった!
「アリス、もしバカにする奴がいたら俺に言えよ!ぶっ飛ばしてやっつけてやるからな!!」
「あ…ありがとう?」
「おいルーク、それ言いすぎだぞ、アリス、びっくりしただろうけどこいつは仲間をバカにされるのが嫌いで、ハーフってだけでバカにする奴を思い出しただけだから安心して」
「まあ、カエデは一応東の大陸の人間とエルフのハーフと言う事がなってますし、実際エルフの血が混ざってるかも知れません、カエデの瞳の色や体型はエルフに近いですから」
東の大陸、別名『ユースラ大陸』そこに暮らす人々は黒髪に紫の瞳で街でもたまに見かける、カエデはその人達が持ってる、刀を羨ましいそうに見てたな。
まあ後カエデを初めて視たとき女だと間違えるくらい華奢な身体だったが鍛えて、良く見ればと分かるくらいにはなったと思う。
「ハーフエルフの成長期はまだ10年ある……大丈夫だまだ伸びる」
カエデの心の声が聞こえたが、俺も含め皆、聞かなかった事にする……
「それでは、明日の予定ですがまずカエデ、ルーク、2人がどの程度強くなったか、色々と確認します、アリスは、弓が使えるようなので魔法と弓の練習をミレーヌとしてください。」
「はい!」
「「……はい」」
「アリスちゃん、分かりやすく教えるから安心してね」
そうして話し合いが終わり、アリス、ミレーヌさんは同じ寝室で、師匠は、明日の準備の為私室に、ただ……『さて、色々減点要因が有りましたから、明日はどのようにするか、考えますか、おっとアリスの為に魔法陣を用意してからですね……』と背筋に悪寒が走る事呟いたのは、怖かった……風呂に入ったあとはカエデと明日の相談だ。
「俺達は強くなった……しかし師匠は予測して最初は軽く、そして一気に落としにくるだろう、そこでだ、まだ成功率は低い”あれ”をやる、いや、やるしか生きる道はない!」
「”あれ”か?でもよ、魔法陣が必要だし……あっ!もしかしてカエデ!」
「そうだ、あの時は失敗しないよう、呪文を唱えたから、判らなかっただろうけど、実際は俺だけがコンファムの魔法を使った時できる事だ、十分発動できる」
おお!もしかしたら……
「上手くいけば師匠に勝てなくても、悲劇は回避できる、いける!いけるぞ!」
俺達は、明日への希望を掴みぐっすりと眠る事ができそうだ。
待ってろ師匠!!驚かせてやる!!
次回投稿は一週間前後になります。
さていよいよバトル有りになっていきますが不慣れの為おかしな所が出てくると思います。