予告:第二羽
僕は語る。
過去を語る。
僕が生まれたのは北部の、うら寂しい岬の突端にある村で、
僕は10人兄弟の7番目で、
一番下の妹が生まれて3か月後に死んだ。
毎年一人ずつ、兄弟たちが姿を消していった。
「遠い親戚の家に行ったんだよ」
両親はそう言った。
10歳の時に大きな熊みたいな男が僕の家にやってきた。
僕は……、売られたのだ。両親によって、この男に。
「お前はラッキーだよ。俺んとこに来れてよ」
とラッキーマンズ傭兵団の団長はそう言った。
そうして僕は傭兵になった……。
「お前は本当にラッキーなんだぜ。俺んところじゃ、適度な運動で健康的な生活が送れて――、うまい飯が食い放題で――、何よりもラッキーなのは長生きできないことだな。戦場でさくりと死ねる。こんな腐りきったご時世、長生きしたって苦しいだけだぞ。病気してベッドで死を待つだけなら、戦場で矢にあたって即死した方がよほどマシだろ、な。お前は本当にラッキーマンだよ」
戦場ではよく仲間が死んだ。まるで朝に生まれ夜に死ぬ虫けらみたいだと思った。
僕は一度だけ団長に詰め寄ったことがある。
「死ぬことがそんなに許せないのか? いや、何もかも許せないんだな。貧しいこと、貧しさ故に起こる戦場、怒る民、それを食い物にする貴族、食い物にありつけない無力な自分、自分の目につくものすべて。だが怒ったところでどうなる。悲しんだところでどうなる。何にもならないのさ。だいたいよ、何をしても、どうあがいても俺たちのやってることは無駄になる。俺も、お前も、お前を売った両親も、兄弟も、貧しいものも、富めるものも、みんなみんな行きつくところは死だ。死しかない。みんな犬みたいな惨めな死が待っている。みんな平等に、みんな惨めに、なあ、惨めじゃないか、どんな努力も研鑽も称賛も意味がなくなる。これほど惨めなことはないぜ。ただ救いがあるとすれば、だ、みんな最期は一所に集まるってことだな。ちょっとした同窓会みたいなもんでな。親も兄弟も仲の良かった友達もいつか会える。遅かれ早かれ」
そうして15歳になった時――、
僕は……、勇者になった。
第二羽 8月7日公開予定……。