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第八羽:過去語り 勇者合宿とカモガワ①

 1984年4月、僕は勇者になった。

 いや、違うか。勇者の育成機関『勇者機関学校』に入学したのがその月なだけで、実際の、一人前の勇者として認められるのはもっと先である。ただ、天使細胞に適合した時点でほぼほぼ勇者になるしかないので、『勇者機関学校』に正式入学して、見習いとはいえ勇者免状を受け取ったこの月に『勇者になった』と言ってもあながち間違いではない、と思う。

 『勇者機関学校』に正式入学する前に2週間の『勇者合宿』があった。その2週間の間に勇者としての基礎知識を学ぶのである。

 この時、僕は団長の粗雑な愛情と団員達の羨望とに包まれて意気揚々、新しい道を歩みだした、というわけではなかった。僕には幸福を台無しにする、何か悲しい宿運が定められているらしく、2週間の勇者合宿で僕は輝かしい未来のスタートを曇らせる、ある忌まわしい事件に遭遇したのだった。

 勇者合宿の初日して、僕は自分に向けられる異様な気配を察知した。僕はその気配の正体が分からなかった。初めて体感するこの気配の意味を僕は実害を受けてから初めて理解するに至った。

 僕に向けられていたのは不潔な人に向けられるような、強い嫌悪感だった。

 『勇者合宿』に参加する勇者見習い達は僕とカモガワを除けばみな勇者家系の子女たちである。

 

 勇者家系――天使が手ずから選んだとされる『絶対勇者』の末裔達。彼らはみな、国に手厚く守られた貴族である。

 

 勇者家系の子供たちは自分達の出自と、そして勇者選定に合格したことに対して強い誇りを持っていた。彼らは神に選ばれた完全無欠の超人種だと思っていた。刷り込まれた狂気的ともいえる選民思想。彼らは許せなかった。とるに足らない平民出の僕やカモガワが勇者として選ばれたことに、平民出(ぼくたち)と同じ釜の飯を食べることに、平民出(ぼくたち)と隣の席に座ることに、平民出(ぼくたち)と同じ空気を吸うことに、平民出(ぼくたち)と対等の存在として扱われることに、そして将来的に平民出(ぼくたち)が自分達と同じ正式な勇者を名乗ることに。

 貧しい身なり、洗練されていない作法の一つ一つ、自分達に対する敬いのない態度――僕たちの一挙手一投足が彼らを苛立たせた。


 それこそ、殺意を抱かせるほどに。


 合宿始まって早々に僕はリンチにあった。トイレで用を足している時に突然後ろから頭をぶん殴られた。僕はぶっ倒れた。その僕を覆面を被った5人が取り囲んだ。覆面連中は皆、勇者機関で配給されている模擬刀を持っていた。赤樫で出来た模擬刀は頑丈で、頭部などに打ち込まれると、普通の人間なら命に関わる。最初の一撃で脳震盪を起こしていたためほとんど抵抗出来なかった僕を覆面たちは滅多打ちにした。彼らはおそらく僕と同級だろうが、まったく正体はわからない。ケガをして倒れている僕を教師が見つけて医務室に運んだ。天使細胞によって自己治癒能力が促進されていた為、僕は半日の休養で医務室から出ることが出来た。

 医務室から戻ると私物がなくなっていた。勇者選定試験に合格した祈念にと団長からもらったインディゴのワークシャツとカーゴパンツが盗まれていた。それから靴。翌日には靴は一足残らずさらわれていた。

 貧しい生まれが多い傭兵団では、実のところ盗みは日常茶飯事のことだった。あまりにもよく起こるので、傭兵団の仲間たちは半ば諦めていた。ただ、その盗みにも暗黙の了解のようなものがあって、盗みが誰か一人に集中しないよう、まんべんなく行われた。今日はAという人間のシャツが盗まれた、ではしばらくAの物は盗まないでおいてやろう、じゃあ、次に盗むとすればBが隠し持っている干し肉だな、とたとえばこんな感じである。

 でも今回の盗難はまるっきり性質が違う。僕とカモガワを除けばみんな裕福な家の出で、そんな連中が盗みを働くなんてことは少なくとも僕の認識の中ではありえないことだった。

 盗まれたものは後日、まとめて僕のロッカーの中に詰め込まれていた。どれもこれもズタズタに引き裂かれていた。僕はめまいを覚えた。

 心当たりがなくもなかった。周囲の金持ち勇者達はみな、僕を汚いもののように避け、また、こちらから接触しようものなら、まるでなにか性質の悪い病気にでも感染するとでもいう風な、強い拒絶を露わにした。

 僕を気に入らない貴族連中が僕をここから追い出そうとしてこんなことをしたのだ。

 それにしてもどうして貴族連中は物を粗末に扱えるのだろう? と僕は思った。とにかく物がない家で育った僕は服でも靴下でも擦り切れるまで使った。それは傭兵団に入ってからも変わらない僕の習性だった。そんな人間からしてみると使えるものを破壊して元の持ち主に返すことはよくわからなかった。盗むのは分かる、それを売ってお金に換えるのもわかる、でも使える物をただ単純に壊すことは本気で理解できなかった。

――ただ、この謎は貴族連中と生活していくうちに解決していった。

 勇者家系の子女達はちょっと汚れたり、デザインが飽きたからといった些細な理由で着れる服や履ける靴を捨てた。食べ残しも酷かった。勇者見習いは空気元素をエネルギーにする天使細胞のおかげで食事は不要だったが、それでも今までの食事の習慣は捨てがたく、合宿所では食堂が用意され、各人好きなものを頼んで食べられるようになっていた。彼らはそれが作法とでもいうように、必ず食べ物を残した。妹を栄養失調で亡く、自分もまた苦しい飢えを何度となく体験したことのある僕はこの光景に心が痛んだ。裕福な家柄で小遣いもお菓子も衣服も家元から潤沢に送られてくる勇者見習い達は、使えるものを捨てたり食べ残しをしたりすることに何ら痛痒に感じていないらしかった。

 焼却場に山積みされた服やアクセサリーは僕にとっては宝の山だったが、貴族子女達にとってはそれはやはりゴミなのだ。団長にもらったシャツやパンツは何度も洗って使える貴重なものだったが、彼らの目にはきっとチリ紙ほどにしか見えなかったのだろう。チリ紙なら捨てられる、いくらでも、いくらでも。

 身の回りの物がなくなって困った僕は、一度だけ彼らが捨てた服やら靴やらを拾って着たことがあった。焼却場にあったものを拾って着たのだ。翌日、僕は教師に呼び出された。そこには同期の勇者見習いが二人いた。彼らは僕の履いている靴とパンツを自分のものだと主張し、盗まれたのだと教師に言った。

 教師は、

「君の履いている靴とパンツは彼らのものだというが本当かね?」

 と言った。

「わかりません。ゴミ捨て場にあったものを拾ってきたものなので」

 と僕は正直に答えた。

「と言っているが実際のところはどうなのかね」

 僕が盗みを働いたと訴えてきたのは二人の少年である。彼らは僕を見た。嫌悪に目を細め、怒りに瞼を痙攣させながら、

「嘘です、こいつは盗人です」

「家が貧乏だからって人の物を盗んでいいと思っているのか!」

 と僕を口汚く罵った。

 拾ったという僕と、盗まれたという少年たちとの議論は平行線でまるっきり決着がつかなかった。こんな僕たちのやり取りを教師は退屈そうに眺めていたが、やがて、

「君たちの主張はよくわかった。もうここまでにしよう」

 そう言って教師は僕が着ているものを少年たちに返却するよう求めた。僕は教師から借りた体操着と靴を着て、拾って着たものを少年たちに渡した。少年たちは僕が着用していたパンツと靴を受け取ると近くにあったゴミ箱へ乱暴に突っ込んでその場を立ち去った。僕は力が抜けてその場にへたり込みそうになった。

「いくら捨ててあるからと言って拾ったものを着用することは勇者として品位に欠ける行為だからやめなさい。それと物をよく失くすと言っていたが、それは君の不注意ではないのかね。私物はちゃんと管理するように」

 教師はまるで僕に非があるような言い方をしたのでびっくりした。でも少年たちとのやりとりで疲れ切っていた僕はもうそれ以上何も言えなかった。罪もないのに罰せられる……。何という不条理、そして徒労……。

 勇者見習い達は一致団結して僕をいたぶろうとしていた。そして教師はそんな僕に無関心だった。 

 この後も僕は陰惨な嫌がらせを何度も受けた。食事に虫の死骸を混ぜられる。どこからともなく石が投げられる。冷水をバケツ一杯ぶっかけられる。敵の目的は単なる憂さ晴らしだったので何をどうしようと彼らの嫌がらせを辞めさせることは不可能に思われた。

 リンチも繰り返された。彼らは手に手に鈍器を持ち、僕を容赦なく打ち据えた。僕は抵抗しなかった。彼らの気の済むまで殴られてやることにしたのだ。

 傭兵団で苛烈な訓練と模擬戦闘をやらされていたことに加えて天使細胞の回復力もあって僕は痛みとその恐怖に鈍くなっていた。僕はリンチを受けながらも心の奥底でどこか平然としていた。僕はリンチする連中の動きが手に取るようにわかった。余裕で回避して反撃することもできたけれど、そうしなかったのはただ単純に面倒だったからだ。僕を好き勝手なぶっている連中に制裁を加えたところで、火に油を注ぐだけだということは目に見えていた。

 軽い眩暈にも似た失望の日々が続いた。今まで同じ釜の飯を食い、団長にしごかれ、戦場を走り回り、たまに女を買いに行く仲間たちは、性質の悪い連中が多かったけれど物を粗末にしたり、寄ってたかって殴る蹴るとか、そんなことはしなかった。傭兵団と勇者合宿の連中では人種が違うのだ。僕は遠い異国へやってきたような気分になって、早くも傭兵団のことを懐かしく思った。それから実家のことも。故郷ではきっと僕が勇者になっていることも知らずに家族たちは貧しい暮らしをしているのだろうな。

 時折、昔の夢を見た。

 嫌がらせとリンチは繰り返し行われた。

 リンチ集団がある時、僕に向かって、

「これは天罰だ」

 と言った。なるほど、と思った。貴族達の世界では勇者家系以外の人間が勇者になることは不当であり、罰を与える正当な理由となるらしかった。きっと特に深い意味もなく言い放たれた言葉だったのだろうが、これを聞いた時、僕は迷いの森から抜け出せたような解放感を覚えた。

 僕は囚人だった。僕には理解できない奇妙な罰に捉われた一人の囚人。囚人である以上、耐えるよりほかにしようがない。

 一週間もすれば懲罰(リンチ)懲罰(リンチ)でなくなっていた。やはりこれも慣れてしまったのだ。盗難防止にも努めた。ロッカーに鍵をかけていても壊されてしまうので誰にも見つからない自分専用の隠し場所を見つけて対処した。注意深くさえしていれば、リンチ以外の嫌がらせ防げたので、そうなると後はもう気楽なものだった。

 勇者見習い達に手ひどくやられると僕は就寝時間を見計らって宿舎の外に出た。合宿所から歩いて少し行った森の中に小さな湖があるのだ。勇者見習い達は虫や蜘蛛の巣を嫌って森の中までは入ってこない。

 『勇者合宿』が始まって8日目の晩は月が綺麗だった。満月。月に薄い雲がかかっていた。強い月の光が周りの星々を脅かしていた。地上は月の冷たく冴えた光で木々も地面も青一色に染まっていた。

 湖に着いた。湖面に満月が堕ちていた。湖水を一すくいすると水面が動揺し、水面の月が溶けるように歪んだ。湖水で顔を濯いだ。水は甘く冷たかった。月のしずくを掬い取っているような錯覚。顔やら体やらの打ち身や切り傷はすでに天使細胞によって治癒していた。服が血と泥で汚れていたので服を脱いで水で洗った。

「やあ、大丈夫かい」

 岸の木陰からカモガワが現れた。彼は裸足になって湖面に足を漬けた。僕と目が合うとニッと笑った。この世の明るい部分しか知らないような、無邪気な、少年らしい、透明な笑顔だった。

 カモガワは僕と同じ、勇者家系出身者でないにもかかわらず、勇者選定試験に合格した少年である。彼とは選定試験で合格して数日後の勇者説明会の時に知り合い、そしてちょくちょく話すようになった。

「ずいぶん手ひどくやられたみたいだったけど、大丈夫だった?」

 そう言ってカモガワは僕の体を無遠慮に見た。連中にやられたケガはすでに治癒済みである。そのことをカモガワに告げると、

「君のその身体の傷はどうしたんだい。貴族連中にやられたのとまた違うみたいだけれど」

 カモガワが言っているのは僕の全身に刻まれた古傷のことだった。

「これは鍛錬中の時についた傷だよ」

「鍛錬中って?」

「ああ、言ってなかったっけ? 僕はラッキーマンズ傭兵団っていうところで戦場の小間使いみたいなことをやってたんだんだけど、365日戦場にいるわけじゃなし、戦争(しごと)のない時は結構ハードな訓練を団長にさせられてて、その時に結構ケガをするわけ」

 傭兵団では筋トレだけじゃなく、木剣を用いた実戦形式の立ち合いや、団長手製の危険なフィールドアスレチックをやらされたりした。毎日何かしらケガをした。疲労骨折もよくやったし、命に係わるケガをしたこともある。成長期に行われた危険な戦闘訓練のせいで僕の体は激流に晒された岩石のように固く、小さく、引き絞られていて、その身体の上に大小無数の傷跡があった。僕の身体が彼には珍しく映ったようだった。

「すごいね」

 と彼は嘆息混じりの感想を一言呟いた。

「そんなもんかな」

 と僕は言った。続けて、

「僕の周りはみんなこんな身体だったよ。ごつごつしてて、傷だらけで」

「戦場って言ったよね。やっぱり戦場とかでもケガとかしたりしたの?」

「いや、このケガはみんな鍛錬の時ので戦場の傷は一つもないね」

「そうなんだ。その、好奇心で聞くんだけど、これって聞いていいのかな」

「別に聞かれて嫌なことなんて何もないよ」

「君は人を殺したことはあるのかい」

 僕はきっぱりと、

「ないね」

 と答えた。ラッキーマンズ傭兵団では正式に戦闘に参加できるのは15歳以上と厳格に決められていた。それより以下は戦場での武器携行も禁止されていたし、戦闘区域外で待機していることも多かったのでやはり人殺しせざるを得ない状況に追い込まれるということはほとんどなかった。そのことを説明するとカモガワは小さく嘆息した。おそらく安堵したのだろう。同期の友達が人殺しというのはあまり気味のいいものではないだろうし、僕自身も敵兵を何人殺したとか言って自慢する傭兵団の先輩が放つ、どこか不吉な血の気配はあまり好きじゃなかったので彼の安堵する気持ちはある程度理解できた。

「ねえ、少し聞きたいんだけど、君は誰かを殺したいと思ったことはある」

 なぜこんなことを聞くのだろう、と思いつつも僕は正直に、

「いや、多分ないと思う」

「本当に? 憎いやつはいないの?」

「いない、かな。今言われてもあんまり思い浮かばないから、いないんだと思う」

「ほら、例えば、今日覆面をして君を蹴ったり殴ったりした連中いるでしょ」

 そう言ってカモガワは同期の勇者見習いの名前をいくつか挙げて、

「あいつらはどうなの? 腹が立たない?」

 それは退屈な質問だった。僕は一度だけあくびをした。湖水で漱いでいた服を水面から引っ張り出すと絞って近くの木の枝に引っ掛けた。服が渇くまでまだ時間があったので僕はカモガワの隣に座った。そして僕は、

「腹が立たないと言えば嘘になるけど、抵抗しても無駄だからね」

「強いんでしょ?」

 と、カモガワは僕の目をじっと見てそう言った。笑ってない、真剣な顔つきだ。目が大きく、黒目が小さな子供のように濡れていた。

「強い?」

 と僕は聞き返した。

「喧嘩だよ。鍛えてるなら返り討ちにだってできるはずだ。そうだろ」

 そういうふうに考えたことはあった。でもそれは無駄なことなのだ。僕はカモガワにそう言ったのだが、彼は承服しなかった。カモガワは僕の裸の両肩を手でがっちり固定して、顔を近づけ、

「君だったらできるよ。一度連中をぎゃふんと言わせれば、もう苛められることなんてないよ。これは本気で言ってるんだぜ」

 と切実な様子で僕の奮起を促した

 僕は知っていた。カモガワもまた勇者見習い達に脅かされていたのだ。ただカモガワは僕と違って人懐っこい犬みたいに恭順していたから僕のようにリンチや盗難は免除されていた。ただ、その代わりに僕のイジメには加担させられていた。

 実のところ、僕の私物を執拗に盗んでいたのはカモガワだった。一度だけ、カモガワが僕のロッカーを漁る姿を目撃したことがあった。

 僕を好き勝手苛めた後に何食わぬ顔で現れるカモガワを僕は滑稽だとは思っていたけれど、憎んではいなかった。カモガワだってどうしようもなかったのだ。僕もカモガワもどうしようもないものに支配され、苦しめられていた。ただ、どうしようもないものに対してただ耐えるだけの僕に対して、カモガワは上手く取り入ってイジメの標的にされないようにしている、というところだけは違っていた。僕はカモガワの方が賢いと思った。僕は単純にカモガワほど器用に立ち回れなかっただけなのだ。

 このアプローチの差はおそらく僕たちの生まれに関係することだと思われる。貧農出身の僕と都会の商人出身のカモガワ。農民は常に自然という回避不可能の怪物に脅かされていた。日照りも長雨も雪も霜も台風も津波も土砂崩れも、それ等に対して人間はあまりにも無力だった。それはもう人間の想像を超えた何かであり、その災禍が落ち着くまで純粋に耐えるしかないのだ。一方で商人の相手は役人やら商工組合といった組織である。商人はこれらの組織と上手く折り合いをつけないと商売ができない。農民のようにただ耐えているだけでは滅ぼされてしまう。

 僕はカモガワの渉外能力を羨ましく思った。僕だってできることならリンチやら盗難に遭いたくなんかなかった。でも仕方ない。僕は苦難に耐えられるだけの健常な体と鈍感な心を与えてくれた親に感謝しながら、ただただ耐えるだけである。

 僕はいつかカモガワに聞いてみたいことがあった。

「もし君の交渉術が効かない、自然災害とか、もしくは魔臣やら魔王やらと出くわした時、君はどう対応する?」

 単純な好奇心であるが、結局は聞けずじまいだった。

 


 合宿中にカモガワから何度か反旗の誘いを受けたが、僕はその全てを突っぱねた。

 カモガワが僕に提案したのは『奮闘』であって『共闘』ではなかった。彼は一度も「一緒に戦おう」とは言わなかった。もし僕が彼からこの言葉を聞いていたら一緒に戦っただろうか。

 


 そして――、


 

 合宿最終日の前日にカモガワの遺体が見つかった。

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