#1‥身近に潜む非日常
やっとバトルシーン。今回は封縛巫女パートです。そしてちらっとシセイカイザー側も動いたりします。お楽しみ下さい。
給食
それは戦争のような学校生活で唯一のオアシスであり、全ての中学生の生きる希望である。
青鳥中の生徒達も例外ではない。
「「「カレーだああああああ!!!」」」
今日の献立は朝のHRでの定刻通りカレー。数ある給食メニューで1番テンションが上がるメニューである。
「合掌。いただきます!」
「「「「いただきまぁああす!!」」」」
忍達の所属する1-2の教室もテンションは絶頂に達していた。
「カレーカレー♪」
ルウも白飯も大盛りにしている鶴岡は早速ルウをライスにぶっかけた
「あらららら!」
だが、皿が浅かったためルウがお盆へとこぼれていった。
「あらら…」
向かいの忍は苦笑いを浮かべている。
「おかわりとかして二回に分ければいいのに」
鶴岡とは対照的にきれいにカレーをつぎわけた俊がカレーを口に運びながら冷たく言う。
「早くいえよ…」
鶴岡はがっくり肩を落とした。
そんなこんなで半分まで食べすすめたところで
「忍、牛乳もらうぜ。」
そういってまだ封を開けてない白と青のパックを忍のお盆から取った。
「うん。」
と忍が言おうとした瞬間、誰かが鶴岡の太い手首を掴んでいた。
「どうして人のものを取ろうとすんの?」
「お前…」
またしても輝だった。
「俺は忍から許可をもらって牛乳もらってんだよ。」
実際その通りである。忍はどちらかというと牛乳はあまり好きなわけではないのでいつも鶴岡などにあげているのである。
「ほんとに?そっちが許可を取っているつもりでも忍くん嫌がってるかもよ?」
その意見も間違いではないだろう。鶴岡は実際忍の返事も待たずに牛乳を取っていた。
「いや…全然気にしてない、から…」
忍が話に入ろうとしたが、
「あ”ぁ?それ忍が走塁ミスしただけで大声あげて罵倒したやつの言うことか!?」
「それとこれとは別でしょ?大体あんたは…」
「あぁなんだよ!?」
「あわわわわ」
二人の間で忍はうろたえていた。
すると横から俊がそーっと手を伸ばし、忍の牛乳を取った。
「あ…」
忍が何か言おうとすると、口元に指を置き、シーッっと言うようなジェスチャーをして牛乳を飲み干した。
だが鶴岡は気づいてない。
そして今度はルウの中に入っていた豆類を鶴岡の皿にぶち込んだ。
それでも気づかない。
トドメにサイドメニューの海草サラダも鶴岡の皿にぶち込み、一袋でも十分しょっぱい小袋のドレッシングをかけた。ちなみに鶴岡の皿に元から入っていたサラダにはもうドレッシングがかかっているためさらにしょっぱくなってしまった。
「あはは…」
忍は苦笑いを浮かべるしかなかった。
鶴岡はまだ気づいてない
そして俊はまたシーッと言うようなジェスチャーをして、ごちそうさまとつぶやいて自分の食器とお盆を下げた。
今日は平和な一日だった。
表面上は…
♂♀
俊はお盆を片付けると、トイレに直行した。
そして洋式の個室に入った。だが、用を足すためでない。
ポケットから今朝とは別のケータイ端末を取り出し、通信機能を起動させ、ケータイで話すように通話を始めた。
「もしもし_______
はい。あいつで間違いないんですが。_______
ホントにあいつなんですか?_________
はあ_______
はあ_______
でも自分で言うのも何ですけどあいつまだ中一ですよ。あんな奴に________
はい_______
はい______
間違いじゃないんですね?_____
だったらそっちも準備しててくださいよ。_____
『シセイカイザー』システムをこれ以上ゴミ屑にしないために______。」
そこで通信を切って端末をポケットにしまい、トイレを後にした。
♂♀
「
非日常は何処にでも転がっている。普段の生活に起こりうる当たり前が、もし『非日常からの妨害』だとしたら?そう考えると人間おかしくなってしまう。だからだれもそんな事を考えてない。だから誰も気づかない。
気持ちのいい昼下がりだった。
」
「わっ!」
ドテッ
廊下で、とある男子生徒が前方にこけた。
「ってて…」
「うわ、何もないとこで転ぶとかだっせ~」
同伴して歩いていた男子生徒が彼を見て笑う。
「たけぴー、お前足かけただろ。」
こけた男子生徒は起き上がりながら声の主を睨んだ。
「はっはっは…だーやまが勝手にこけたんだろ」
「でも、確かに誰かに足をすくわれて…」
「きゃっ」
ドテッ
今度は女子生徒がこけた
「もー。足引っ張ったの誰?」
女子生徒は困った顔で周りを見渡した。
廊下には彼女以外にはさっきの男子以外いなかった。少女は一瞬彼らの犯行だと考えたが、彼らは腕の届く範囲からはだいぶ離れていたのですぐにその考えはなくなった。
(気のせいかな…)
少女は曇った表情で立ち上がりその場を後にした。
「見えた?」
「ああ。ばっちり。水色だった。」
たけぴーとだーやまはこけたことも忘れてパンチラ談義をしていた。
だがしかしこの現象はこの学校のいろんな場所で起こっていた
「うわあ!」
ドササササ
図書室で本を運んでいた図書委員が転んで持っていた本をひっくり返してしまった。
「きゃあ!」
ドカ
その本が本を選んでいた別の女子生徒に直撃してしまった。
「いったぁ~」
「ご…ごめん!大丈夫?」
「どぇあああ」
ズサーッ
「ううぅ」
グラウンドだサッカーをしていた少年が派手に転び、うずくまった。
「おい!」
「大丈夫か?」
同じくサッカーをしていた少年達が駆け寄ってきて、その中の一人が転んだ少年が足首を確認した。
「捻挫してる…保健室連れてくぞ!」
「うわああああああああ」
プリントの山を運んでいた男性教師が階段を下りようとしたら、何者に足を引かれて転んでしまった。そして階段を転がりながら落下し、踊り場で止まった。
プリントが階段から踊り場にかけて桜吹雪のように舞って散乱する。
「先生!?大丈夫ですか!」
通りかかった生徒が教師に駆け寄る
「…血が出てる!誰かぁー!救急車!」
♂♀
(お前はもうちょい周りを見ろ!確かに失敗して責められるのが怖いってのは分かるけどな、そんなことでいちいちびびってるからこんな事になるんだよ。)
忍は教室の窓から外を覗きながら午前中の事を思い返していた。
「やっぱ、忘れた方がいいのかな…」
頭の中に渦巻く
トラウマ
過ち
爆音
自分の
熱風
犯した
炎
忘れたい
がれき
でも
渋谷
忘れたら
封魔
いけない
テロ
気がして
裏切り者
でも
封縛師
忘れ
父
ないと
2003
だめだよ…ね」
「さっきからブツブツ何いってるの?」
「うわっ!いつからそこに…」
忍の横には怪訝な顔をした美穂が立っていた。
「そんな事してるから友達いないのよ」
とため息はきながら言う。
「そっちだってずっと教室で本読んでるからあまり変わらないじゃん」
口をとがらせながらサッシに寄りかかる。
「ってそんなことはいいのよ!いいから来て!」
言うが早いが、美穂は忍のシャツの首の部分をひっつかみ輝と一緒に教室を出た。
「ちょっと、引っ張るのは、やめて…」
無理な体勢のまま歩かされていると、保健室の前まできた。
保健室は忍達の在籍する1-2の教室の二つ隣の教室なのですぐについた。
「いてぇ~」
「あででっ!そこ痛いから触るな!」
「ちょっとそこどいて!」
みると保健室の前には小さな人だかりができていた。
その人だかりのほとんどが打撲、捻挫、骨折してた。
「あーもう勘弁してほしいわ…」
二人が見てると、人混みの中から鶴岡が出てきた。
「あ、鶴岡くん。」
鶴岡は頭に大きなたんこぶをこさえていた。
「聞いてくれよ忍。普通に歩いてただけなのによ、誰かに足引っ張られて転んだんだ。だけど俺の近くには誰もいなくてよ…」
「これって…」
忍と美穂は顔を見合わせた。
美穂は黙ってうなずいた。
「ん?お前らどうした?」
「鶴岡くん。お大事に。」
忍達はそれだけ言い残してその場を去った。
「え?お~い!どういう事だよぉ~!」
♂♀
二人は体育館と校舎の間にある渡り廊下の所まで来ていた。
ここはこの時間滅多に使われることないので人気が全くなく、校舎からの喧噪以外何も聞こえない。
「やっぱあれって偶然じゃないよね…」
顔を歪ませる忍
「そうね。きっと偶然なんかじゃない。」
そして二人はポケットから長方形のお札のような紋章の入ったカードを取り出した。
「学校の敷地内に隔離世界を呼び出せるようになってるよね。」
「大丈夫。こんな事もあろうと思って仕込んどいたわ」
二人はカードを構えた
「「解縛転身!!」」
そしてカードを、忍は左目に、美穂は太ももに貼り付ける
二人の姿は光に包まれる。そして光がおさまると、忍と美穂は巫女姿になっていた。
忍の姿は、ミニの赤い袴に赤と白のノースリーブの着物、白地に赤のハイカットのスニーカー。髪は茶色から空色に、左目に貼り付けたカードは医療用の眼帯になっていた。
「封縛名『希望』」
美穂の姿は、袴と着物までは同じだが、肘から手の部分にかけて白地に赤の袖があり、ハイカットは赤地に白、髪は黒のおさげから真っ赤なロングヘアに、太もものカードはガーターベルト型のホルスターになっていて、ナイフが装備されていた。
「封縛名『火憐』」
そして二人の腰には共通して髪の色と同じ色のカードケースが装備されていた。
彼らこそ、封魔からこの空ヶ丘市を守る『封縛巫女』なのである。
「隔離世界解放!」
二人は右手を天に突き上げ、叫ぶ。
すると風景は緑色の絵の具を溶かした水をかけたように緑に染まる。
だが、これは空間を変化させたわけではなく、現実世界から封魔と巫女を切り離しただけである。
封魔は現実世界に現れることはそこまで多くなく、この隔離世界から現実世界の何かしらの場所から被害をもたらすのである。
「よし、いくわよ!」
「うん!」
二人は緑に変色した校舎へ駆けていった。
♂♀
「人をコケさせる封魔ってことは足下から攻撃してくるのかな」
「子鬼とかかもしれないから足下に注意したほうがいいようね」
二人は下を向きながら歩いた
だが、希望の結わえた髪を誰かが力強く引っ張った。
「ぎゃっ」
勢いのあまり、おもいっきり床に叩き付けられた。
「いてて…一体何が…」
希望が立ち上がった瞬間、消火器が廊下の端から飛んできた。
「うわっ!『ぬりかべ』」
希望はカードケースから鼠色でぬりかべが描かれたカードを取り出し、前方に構えた。
するとカードからぬりかべが召喚されて盾となり希望を守った。
「そこね!」
火憐がナイフを廊下の隅っこめがけ投げた。
だが、天井にナイフが突き刺さっただけでなんの変化もなかった。
「現実では地面からの攻撃しかしないのに…なんで上から…」
足下に目を向けると影が蠢いているのに気づいた。
「クナイ!」
火憐は深紅のカードケースから赤でクナイが描かれてたカードを取り出して、構えた。
するとカードはクナイになり火憐の手に収まった。
「はっ!」
そして火憐は足下の影めがけてそれを投げた
「ぎゃああああ!」
影は悲鳴をあげて蠢いた。
「正体を現したわね。」
校内で転倒さわぎをおこしていた犯人は『かげぬい』
あらゆる影を自由自在に移動して人間に被害を与える封魔である。
今回校内で起こった事件も、人の影を転々として、影の中から足を引っ張りコケさせたのだろう。
「なんでこんな事したの?」
希望が蠢いている影に問いかける。
「復讐さ…」
影は淡々と話す。
「俺は昔、ある屋敷に仕えてたんだ…。仕事をまじめにこなしていて、主人からの評判はよかった。でもな、それを妬んだ仲間の一人が俺が家宝の皿を運んでる時に足をかけて俺を転ばせた。おれはそのせいで打ち首の刑さ。お前等に分かるのか…この悔しさが!」
影は震えていた。
「だからって…こんなの間違ってる!」
希望は拳を握りしめて叫んだ。
爪が皮膚にくいこんで痕ができるほど力を入れている。
「たしかに、悔しいのは分かるけど…みんなは関係ないでしょ?こんなのは復讐って言わないよ」
希望は封魔を優しく諭した。だが、
「うるせえ!お前に何が分かるんだ!」
叫び、影の中から希望を殴った。
「ぐわっ」
希望は吹き飛ばされて壁に激突した。
「分かる筈ないでしょ!」
その瞬間火憐がかげぬいを踏みつけた。
「お仕置きが必要なようね…」
火憐はカードケースから赤と黒のカードを取り出した。
「鉄槌。」
カードはモーニングスターとなり、火憐の手に収まった。
「自分の行いを後悔するのね」
そう言ってモーニングスターを自分の影めがけて振りかぶった。
どがあぁあん
「ぎゃあああ」
床の砕ける音と一緒にしゃべる筈のない影がうめき声をあげた。
「私達に仕えて復讐の続きでもするがいいわ」
火憐はカードケースから、今度は無地のカードを取り出した。
「封縛!」
カードをモーニングスターの下敷きになっているかげぬいにかざした。するとかげぬいはカードの中へと吸い込まれ、封縛された。
カードは無地から灰色になり、かげぬいか描かれたものになった。
「ちょっと、かわいそうじゃない?」
希望が火憐のカードをのぞき込みながら言う。
「でも、こんな自己中な封魔はこうするべきなのよ。」
火憐はカードをしまって希望に向き直った。
「あなたは甘いの。」
希望は一瞬黙った。
「……普段はおとなしくしてるくせに。」
と口をとがらせながら言った。
「「解縛」」
希望は眼帯を、火憐はガーターベルトを外し、元の姿に戻った。
同時に隔離世界も解かれ、いつもの校舎に立っていた。
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のチャイムが鳴った。
「じゃ、掃除にいかなきゃね。」
「だね…」
二人は何事もなかったかのようにそれぞれの持ち場に駆けていった。
♂♀
同時刻、暗いモニタールーム
大きなモニターを一人の女性が眺めていた。
「へえ~あの子が桜と俊が言ってた適合者。」
モニターには未だ鶴岡と口ゲンカをしている輝の姿が映し出されていた。
「けっこうかわいいのね。」
そう言ってモニターをなでた。
「さあ、今日から大暴れしてもらうわよ…『セイリュウカイザー』」
モニターから外した視線の先には空色のカードメモリと同色のブレスが置いてあった。
To be continude
今回はちょっと学校あるあるとかを入れ込んでみましたが、分かりましたか?カレー。自分はめっちゃテンション上がって大盛りにして鶴岡同様にこぼしてしまう事がしょっちゅうありましたw。さて、バトルシーンはこんなもんでいいのやら…。かげぬいは影を伝って移動できるのでけっこうチートですけど影に固定されればうごけなくなるのが弱点ですね。
感想、意見、ダメ出し、お待ちしています!