プロローグ
始めましてー煉獄姫ですww
由来は・・・分かる人にはわかる!
ラノベ大好きです!
誰か熱く語りましょう^^
批判がんがんしてください!
あと感想とかくれるとテンション上がりまーす!
今日は戦闘能力の実技があったから、疲れた。
朝、隣の教室C組で喧嘩があった。理由は、遅刻してきたM君の机の上にK君がいたずらで花瓶を置いておいたから、らしい。
途中で先生が来て、二人を吹っ飛ばした、らしい。
花瓶は割れた。でも二人以外ケガはなかった、らしい。
C、D組合同実技の授業のとき、朝に喧嘩していた二人が校庭でまた喧嘩をはじめた。
校庭は穴だらけになり、怪我人も少しいた。
また二人は先生に怒られていた。
比較的平和な一日だった。
***
「・・・よし」
「なにが『よし』なんだ? ん? 言ってみろ、柊」
いきなりうしろからゴツッ、と頭を殴られた。
別にそこまで痛くはないけど。
座禅とかでもそうだけど、殴るときは事前に予告して欲しい。
心の準備があるのとないのとでは痛みの程度が全く違う。
「・・・何すんですか」
不満を隠そうともせず後ろの人物に顔をむけた。
するとそこには、スーツではなく女性らしいが動きやすそうな私服を身に着けている美人教師が心底呆れた、という風に腰に手をあてて立っている。
「何すんですか、じゃねえよ。なんだこのふざけた日誌は・・・」
もうすでに授業は終わり、夕陽が差し込む誰一人いない教室で俺は今日一日の報告書を書いていた。
これはクラス全員が一日ごとに交代で行うことが担任に義務付けられていて、今日は俺の当番だった。
そしてようやく書き終えた報告書にうしろからケチをつけてくるこいつは、幸か不幸かこのDクラスの担任だ。
長い茶髪がよく似合う、世間一般で言うなら『美人』な教師、高橋麻遊。
黙ってれば間違いなくモテる。
そう、黙ってさえいれば。
現にこの人をよく知らない人間のなかには、憧れ、というにはあまりにディープ過ぎるような、最早信仰さえしているファンクラブまである。
だがその本質は、傲岸不遜にして大胆不敵。天上天下唯我独尊、我が道をゆく、だ。
中にはこの人の本質をしっている奴だっているが、それはこの人の美貌が本性を補ってあまりある、というよりは、『だからこそイイ!』というおかしな方向性を持つ方々だ。
そんなもの俺の理解の及ぶところではなく、くわしい活動内容は知らないし、知ってはいけないと俺の本能がアラームを鳴らすので、このことは考えないようにしている。
「小学生の日記じゃねぇんだよ。あ? しかもなんだ、仮にもクラスの報告書であるはずなのに登場人物が3人だぞ? しかも内一人は私、教師だ」
随分言葉遣いが荒いんですね、などとは言わない。
そんなことを高橋に言った日には間違いなく学校裏にある墓地にお墓が一つ増えることになるからだ。
蛇足だが、実際にこの教師を呼び捨てで呼ぼうものなら、放課後、長い個人授業が待っている。
けっしてピンク色の展開ではない。
しいていうなら鮮血の色、さらに言えば内臓的な意味でのピンク色だ。
そんな俺の心情はおかまいなしに高橋は続けた。
「そしてさらに致命的欠陥を言うなら、その小学生日記の主人公である二人の生徒はDクラスですらない」
「・・・Dクラス担任が自ら関わったんですから、それはもう立派なクラスの出来事でしょう」
そう言うとまた同じところを殴られた。
「残念だったな、あの『制裁』は生活指導の教師としてのものだ。Dクラスはいっさい関係ない。よってこの報告書は書き直し」
そして高橋は一つ指を鳴らす。
すると俺が必死に20分かけて書いた報告書は、1秒で灰になった。
「・・・え、んな、え?」
俺が呟いた言葉もあっけなく虚空に消える。
「な、何すんですか!? 何も燃やすことはないでしょう!?」
といってもまぁこの人の傲岸不遜ぶりは今に始まったことではないから、すぐに諦めモードに入った。
もうこの人とも8ヶ月の付き合いだし、引き際は心得ている。
が。途中で絶対に看過できないワードが紛れ込んでいた気がする。
『制裁』ってなんだ。
別に大罪人を処刑するわけでもないだろうに。
・・・。
・・・・・・。
・・・深く考えたら、負けだと思う。
「うるさい。教室では私が絶対、私が法律だ。逆らうのなら・・・死」
「先生はさながら独裁者のようです」
そして俺は一から報告書を書き直すことを即決した。
**********
能力犯罪なんて日常茶飯事だ。
自分のチカラに酔った人間は、いともたやすく同じ人間、それもチカラを持たない非力な人間を傷つける。
『SPT』(特殊能力部隊)が出来てからは随分と減ったが、未だにそういった事件は後を絶たない。
それが俺から言わせれば、全くもって理解出来ない。
・・・だから、こんなのを目撃したって溜息しか出なかった。
あれから高橋の付き添いで(さらに3度ほどやり直しをくらった)報告書を完成させ、流石に少しぐったりとした足取りで帰路についていたわけだが、途中でちょっとした悲鳴のようなものを聞いて、
「・・・どうせ帰っても暇だしな」
と言い訳のようにいい、暇つぶしにと向かってみればそこは人気の少ない路地裏・・・的な雰囲気の道で、不良共の格好のたまり場になりそうな場所だった。
そして目の前では、気持ちの悪い笑みを浮かべた小太りの男が、『俺が通う学校の女子と同じ制服』を着た、茶色がかった長い髪の少女を壁に押さえつけている。
だがおそらくそういうことをしようとしてる変態のはずなのに、直接触れてはいない。
にもかかわらず少女が壁に張り付き苦々しい顔をしている様子を見ると、男の方がなんらかの能力をつかっているんだろう。
わざわざ能力を使用することで、反抗しても無駄だということを暗に示しているのか。
ようやく少女の方が声を出した。
「こんなことをして、ただで済むと思ってるの・・・!?」
「おーおー、まぁだそんな強がっていられんのか。いいねぇ、気の強い女の子は大好きだぜ」
「・・・能力犯罪は、重罪よ? わかってる?」
そう、能力による犯罪は確かに重罪。
死刑になるケースだって珍しくはない。
まぁこの男のように根本的に腐った人間がいるからそういった犯罪はなくならないし、真に腐った野郎はやるときはやってしまう。
それにしても、だ。
なにかがおかしいことに男は気付かないのだろうか。
少女の態度があまりにこの場にふさわしくない。
見たことがないからよく分からないが、本来なら泣き叫んだり絶望の表情をしたりしてもいいはずなのに、この少女の表情は違う。
あくまで『苦々しい』であって、何かを失敗したかのような顔だ。
まるで、ちょっと失敗しちゃったなー、めんどくさいなー、とでも言いたげな。
「だからなんだ?」
男はきょとんととぼけてみせる。
そして右手の指を無意味にくねらせ、誰もが生理的に嫌悪感をもよおすであろう、不快な、そして狂ったような笑みを少女に向けた。
まるで全身を舐めまわすかのような視線に、少女も流石に鳥肌を禁じえないだろう。
当事者でない俺でさえ、寒気を通り越して吐き気がする。
「だーいじょーぶ、ばれるようなへまはしないからなぁ。だからちょっとだけ遊んでいこーぜ?」
「最っ低のカス野郎ね・・・」
と少女は男を睨みつけるが、男は意に介さない。
どころか、その小さな反抗さえ快楽の対象らしく、ますますその笑みは深く、不気味になっていく。
さて、ここからどうするつもりだ?
まさか何も手がない訳じゃないよな・・・?
するとふいに少女が一瞬こっちを見た・・・ような気がした。
そして、すうううううううううううううううううっ、と大きく息を吸いこんだかと思うと、
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! たーーすーーけーーてーー!!!」
急に叫び始めた。
男はいきなりの大声に驚き後退するが、当然すぐに正気を取り戻す。
「う、く・・・・、な、てめえ! どんな大声を出したって無駄だ! ここら辺には誰一人いねぇんだよ! びびらせやがって!」
そういい、男が腕を振り上げた。
なんも策はないのかよ! と心の中で毒づき、慌てて飛び出してみると、やっぱり少女はこっちを見ていた。
・・・いたずらを成功させた、悪ガキのような笑顔で。
気配は消していたはずだったんだけどな・・・。
「・・・やれんなら自分でやれっての・・・!」
仕方ないから俺は飛び出した。
今日の報告書当番が不運にも自分だったことを恨めしく思いながら。