平凡な僕と、壊れてしまった元vtuberの彼女
壊れてしまった元vtuberがヒロイン。
恋愛。
「来るんだろうか」
僕は、待ち合わせ場所で呟く。
来るのか、来てくれるのか、あの幼なじみは。
元日。
幸せそうな周りの人たち。子供も、大人も。
そして、年を越したばかりだからか(今は昼だけど)、皆どこか心が浮いている。
そして、待ち合わせの時間になった。
「あっ。
来てくれたんだ」
「(コクリ)」
感情の入っていない顔で、幼なじみの少女はうなずく。
うなずいてくれた、それだけでも、僕はいい。安心する。
「おみくじ引こうよ」
「あちゃー、末吉、反応しにくい」
「君は大吉か、よかったじゃん。これから幸せになれるよ」
「お守り。この神社は勉学の神様だから、僕は高1だし、勉強かな」
「恋愛、買っちゃう? ああ、ごめん。生意気だったね」
「本当は先に賽銭じゃないといけないらしいけど。
そろそろ並ぼうか、この凄い列に」
人が多いからか。
幼なじみは反応しない。
感情が入っていない。顔にも、動きにも。
僕が一方的に話かけている。
うなずきすらないから、聞いてくれているか不安になるけど。
待ち合わせ場所の、あのうなずき。
やっぱり、アレはレアだ。
「5円玉、と。
うん? あ、あの、それ、お札だよ? 1万円冊。ど、どうしたの? あ、入れちゃった」
いきなり財布から札を取り出したからビビった。1枚だから、まだいいけど。いや、1枚でも凄いけど?
高校生の僕にはわからない感覚。
先にお願い事をされるから、慌てて5円玉を1枚入れお願い事をする。
願い事は、決まっている。
『いいんだよ!vtuberをやめても! 両親に睨まれても、ファンに嫌われても、僕がずっといるから! 迷惑かもしれないけど、隣にいてもいいのなら! 僕がいるから!』
無理したからだろう、元は暗い子だったから。
キラキラして、面白いvtuberを演じるのは、無理があったのだろう。
陰キャな幼なじみは、人気vtuberになり、そして、壊れてしまった。
久々に会ったら、感情がなくなってしまっていた。
僕の願うこと。
本当の幸せになれますように、この子が。
神社から帰り道、僕はなんとなく聞く。
「どういう感じの、願ったの? 1万円だからすごい気になる」
まあ、反応されないだろうけど。今は人多くないし、て期待もあるけど。
「…キミとずっと一緒にいたい」
ボソボソ、と。
でも、僕には聞こえた。
「1万円出さなくても叶うよ、そんなこと」
僕は微笑んで返した。若干、顔を赤くして。
平凡な僕とずっと一緒。
幸せとは思えないけど、まあ、いっか。
久々に声も聞けたし。生の声を。
また、普通に喋ったり、普通に笑ったりできるようになるといいね。
ありがとうございました。




