第8話:運が、消えた日。ツンデレ令嬢、覚醒す。
「……今、なんて?」
「このエリア、特殊な魔力障壁が張られてるわ。“運”に干渉する力が働かないの」
アリシアの言葉に、俺は青ざめた。
《絶対強運》が、効かない。
それはつまり——
「……俺、ただの一般人ってことか」
すぐに敵が現れた。
3人チーム、武闘派。
逃げるにしても、俺の運は今、オフライン状態。
(どうする……俺、マジで戦えない……!)
「……下がってなさい」
前に出たのは、セリーヌだった。
「ちょ、無理すんなって! 君、マジで不運なんだから!」
「わかってるわよ! でも……あなたが頼りにならないなら、今度は私がやるしかないでしょっ!」
セリーヌは剣を抜いた。
そして一歩踏み出した、その瞬間。
地面が崩れた。
「やっぱりお約束ううううう!!」
——が、
崩れた岩が敵の足元に転がり、バランスを崩させた。
その隙に、セリーヌが渾身の一撃を叩き込む。
「っらあああああああっ!!」
クリティカルヒット! 敵1人、戦闘不能。
「うそ……あたし、当たった……!?」
まさかの、彼女の“不運”が“味方”に変わっている。
「……気づいてないのか?」
アリシアがぽつりとつぶやく。
「ユウト君の《強運》、彼が自覚していない範囲でも、影響してるみたいなの。“隣にいる者の運”まで、少しずつ引き上げてるって……」
セリーヌはまだそれを知らない。
けれどその日、彼女は確かに戦った。
運に頼らず、自分の剣で勝ちを掴んだ。
「次は……もうちょっとカッコよく決めたいわね」
「えっ、今のすごいカッコよかったけど」
「う、うるさいっ……褒めないでよ、バカ!」
──そしてその夜。
ユウトの《強運》は、なぜか突然復活していた。
「え、なんで戻ってるの?タイミング自由なの??」
いや、これはもしかして——
「……彼女の気持ちが、少し変わったから……?」