第3話:運で勝ったらダメですか? 先生??
「よーし、今日は実戦訓練だ。模擬戦で実力を測るぞ!」
教官の声が響き渡ると、訓練場の空気が一変した。
全員がそれぞれ、得物を手にし、やる気に満ちている——もちろん、俺以外。
俺は片隅で、小さくなっていた。
だって、俺だけスキル《強運》しか持ってない。
剣技も魔法も使えないし、基礎体力も平均以下。
にも関わらず——
「ユウト=ナガセ。対戦相手は、ローガス=バルディアだ」
うっわ出た。上位クラスの次期騎士団長候補。完全に晒し者ポジション。
「へぇ、あの“運だけ男”が俺の相手か」
「ふん、少しでも実力を見せれば、クラス上がれるかもな……奇跡が起きればな!」
ざわつく観客。見下す視線。
でも俺、こういうの前世のソシャゲで何度も見た。
「引けるわけがない」って言われた後、SSRを引く瞬間の快感。
それに近い何かが、今の俺の中にもあった。
「試合、始めッ!!」
ローガスの剣が閃いた。鋭い突き、圧倒的スピード。
回避? 無理だ。防御? 無理だ。
けれど——
「あっ……!」
俺が足を滑らせ、転んだ瞬間——
ローガスの剣が、俺のすぐ上を通過し、背後の木に突き刺さった。
その反動でバランスを崩したローガスは……自滅した。
顔面から、地面に突っ伏した。
「…………えっ?」
「……勝った……のか?」
「勝った……!? ユウトが……!?」
「運だけで、勝った……!?」
静まり返った場に、ひときわ大きな声が響いた。
「ぐっ……運だけの、こんなヤツに……!」
悔しげなローガス。
だが、判定は出た。俺の“勝利”だ。
その日を境に、俺の周囲の空気は変わった。
「ただの雑魚」から「なにかヤバい奴」へと評価が更新されたのだ。
──けれどこれは、まだ始まりにすぎなかった。
次の“運”は、さらにとんでもない“事件”を引き起こす——。