4 孤独感
赤い太陽が地平の奥深くまで沈むのを見送ってから、列車は停止した。
列車に、夜間の運行はないのだそうだ。
だから、僕らは二つ目のプラットフォームで野宿をすることになった。
列車はプラットフォームに停車したままで、まるで模型のように、冷たく静かにそこに佇んでいる。
火を焚く道具もないので、リュックにしまっていた懐中電灯をふたりで囲む。
時折、懐中電灯の明かりが点滅した。
僕がかねてから思っていることなのだが、夜にはみえない波があるのではないか。
その波は夜全体をうねっていて、押しては引くことを静かにくりかえしている。
夜の電灯の点滅なんかも、その波の影響だ。
そして、夜の波は心にも到達する。
波は静かに心に入り込んで、心の水面を揺らす。
だから、夜になると星なんかを求めて、空を見上げてしまうんだ。
僕は冷たいプラットフォームに仰向けに寝っ転がった。
色彩を欠いた夜空は、満点の星空とは言い難い。
いつか見た一等星も、その光を鈍くしていた。
僕の隣で、懐中電灯が点滅している。
僕はふと考える。
今僕の隣にあるこの懐中電灯の光が、何光年も先の惑星に届くことはない。
いま僕が仰向けで夜空を眺め、思索を巡らせていることを、誰も知らない。
僕がどんなに苦悩に藻掻いても、惑星の軌道の一つすら変わりやしない。
その孤独感の何たることか。
隔絶されたこの世界で、
僕は寝ころがったまま、ひとつ、ながい背伸びをした。