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精霊の愛し子と精霊使い  作者: ありま氷炎
二章 精霊使い
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2-4 新たな目的

「ソライも取り戻す!」


 結局それ以上の移動は無理とカゼサンが判断して、森の中で休むことにした。

 休むといっても人間であるメイラのみだ。

 空を風の精霊と共に飛ぶのは、生身である彼女だ。その体力を奪うには十分で、泣きつかれたメイラは食事も取らず眠りに落ちた。

 朝日と共に目を覚ました彼女は、集まった精霊たちを一同にそう宣言した。

 散々泣いてメイラは、祖母が亡くなったことを受け入れた。そして彼女の精霊を解放することを心に決めたのだ。


『おーし!ちょっとうるさい精霊だったけど、まあ懐かしいといえば、懐かしいからな。久々に小言を聞くのもいいかもしれないな』

『はは。照れちゃって。本当は会えるのが楽しみなんでしょ?』

『馬鹿言うなよ!』


 メイラの言葉に賛同するヒーサン。そしてそれを揶揄うミズサン。けれども彼女の気持ちもヒーサンと同じだった。メイラに名を与えられ個体になった精霊たちにとって、最初は戸惑うことばかりだった。そんな精霊たちを導いたのがソライだった。人間に例えるなら、精霊たちにとってソライは先生たちのようなもので、小言がうるさいと言いながらもみんな彼女に懐いていた。


「フィン。やはり私が到着する前に、邪魔をする人たちをどうにかしたほうがいいと思う。だから、ヒーサン、ミズサン、ツチサンと一緒に王宮へ先に行ってくれない。もし精霊鎖を破壊できるならそうして」


 メイラに頼まれ、フィンは精霊たちを一覧する。


『フィンは来なくていいよ。オレたちだけで』

『うん。フィンはここにいて』

「ダメだよ。フィンは王宮に以前いたんでしょ?道とかいっぱいしってるはず」

『王宮で、ガルネリが囚われていた場所ならわかります。おそらく、ティエンはそこにいるはず。その前にたくさんの精霊使いがいると思いますが』

『たくさん。たくさんの精霊がいるってことだな。昨日見た感じだと、二つか』

『精霊鎖はいくつあるの?』

『ティエンと捕えたボイラーという男は、水と火の精霊を使役してました。おそらく残りは五つだと思います』

 『ってことは、たった七つ。そのうち一つはソライだろ?少ないじゃないか』

『少ないといいますか?他の精霊たちはあなたたちの倍以上を生きてます。手強いですよ』

『手強いねぇ。楽しそうじゃねーか』

『ははは。思いっきり喧嘩できそう!』


 ヒーサンとミズサンは楽しそうに声を上げていた。


「じゃあ、フィンのいうことをちゃんと聞いて、頑張ってきてね」

『はあ?』

『なんでワタシがコイツの言うことを聞かないといけないの?』

「ヒーサン、ミズサン。命令だよ。今回はフィンが隊長だから」

『隊長?!』

「フィン。よろしくね」

『命令だったらしかたない。メイラが到着するまでだ。風、頼んだぞ」

『イライラするけど、我慢するわ』

「じゃあ、決まりね。フィン、よろしくね」

「……はい」


 まさに人間そのものの動作、肩を落としながらフィンは返事をした。


『さあ、隊長行こうぜ!』

『隊長さん、行きましょう!』

 

 悪ノリしているのか、素直なのか、フィンのことをそう呼び、先を急がせた。


『はい。行きましょうか。メイラ。到着をお待ちしてますよ。もしかしたら、あなたが到着する前にティエンを助けられるかもしれない』

『おう、それはいいな』

『うん、そうしましょ』

 

 ご機嫌らしく、二人はウキウキしながら息の合ったところを見せている。

 本人たちはまったく気がついていないのだが、フィンが現れてから二人はいつもの口喧嘩をしていない。


『それでは、王宮で』

『またな。メイラ!』

『またね。メイラ!』


 フィンが先に飛び、その後ろに二つの精霊が続く。

 それを見送り、メイラは風の精霊に呼びかけた。


「さあ、カゼサン。私たちも行こう。ツチサンはどっちについてもいいから」

『オレはメイラの後を追う。あいつらがいれば十分だろう』

「そうだったらいいけど」


 メイラは自身の精霊の他、ソライとフィン以外の精霊を見たことがない。

 好戦的なヒーサンとミズサンだが、メイラには絶対服従だ。

 だから、彼女は精霊たちがいかに危険な存在かということを知らない。


『さあ、メイラ。行きますよ』


 風の精霊カゼサンは、メイラの手を取ると空に昇っていく。


「進め〜」


 新たに決意を固め、一行は再び王宮へ向かった。



「なんと、精霊の愛し子か!」

「はい」

「精霊鎖も残り七つになってしまった。絶対にその精霊の愛し子の精霊も奪うのだ」

「あなたの意のままに。陛下」


 ボイラーは真紅の布で覆われた玉座に座る、チャイシン帝国の皇帝の首を垂れた。





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