あの日の出逢いに。
夜の間に静かに積もった雪が朝日を浴びて木の枝から落ちる。
…ドサッという音で目が覚めた。
薄暗い部屋のベッドの上でぼんやりと目を開けた私は、再び襲ってくる眠気と戯れる。
「せっかくの休みだからまだ寝てたい…」
またとろりと落ちてきた瞼をそのまま閉じ、夢の中へと落ちてゆく
今ならきっと貴方に逢える
またさっきの続きを見たい
笑顔で私を見つめる貴方に逢いにいくの
…そう言ってしまえばその通りになる気がした。
あの日、貴方に出逢わなければ
こんなに苦しむ事もなかったのに。
あの日、貴方に出逢わなければ…
きっと私はこんなにも自分の胸が高鳴る事を知らずにいただろう。
カタカタと風に揺れて音を立てた窓。
その音で再び目を開けた私は、柔らかい布団の中で猫のように身をよじらせ朝から逃げる。
どうしてこんなにも起きたくないのだろう?
夢の中にずっといられたらいいのに。
起きてしまったらきっと辛い現実と向き合わなければいけないから。
だって貴方は他人のモノ。
私には到底、手の届かない存在。
その笑顔を独り占めに出来たらどんなにいいだろう?
明るく朗らかに話す声。
風にサラサラと揺れる髪。
貴方を見つめたら苦しくなるのはわかっているのに見つめずにはいられない。
こんなにも好きなのに貴方は何も知らない。
もしも、あの日の出逢いに名前を付けるのなら…
そう。これは甘い呪い。