008 隠密する魔術師
「エヴァ……一発目であたりを引いたっぽいぞ」
「ふふん、やるわね私。あとはこっちのものよ」
地を這ってしげみにかくれ、息をひそめるレオとエヴァ。
岩壁にあいた巨穴のなかに、場違いなほど豪奢に建てられた屋敷がかくれているのを発見した。
屋敷の煙突部に赤色の旗がゆらめていた。
趣味のわるい骸骨のデザインだ。盗賊の本拠地ですと示しているかのようで、滑稽にすらおもえる。
「人質がいるから慎重に行こう。……ところで、気がついていたか?」
「ええ。だからこう、とおくから双眼鏡で様子みてるんでしょ」
「準備が良すぎるな。どうして双眼鏡なんて持ってるんだ? しかも二つなんて」
「私、野鳥とか自然をながめるの好きなのよ。だから普段から持ちあるいてるの。二つある理由にかんしては、旅先で出会ったひとと趣味を共有するためよ」
「なるほど」
「あまり興味ないでしょ?」
「いや、そんなことはないぞ。いい趣味だな、今度俺にも野鳥やきれいな景色をみせてくれ」
「もちろん。――っと、本題に入りましょう。あんたが言ってるのって、林に紛れ込んでる盗賊のことであってる?」
「そうだ。盗賊の割に、しっかり警備しているようだぞ。擬態もしてる」
いくつか周囲にひとの気配を感じる。
数ヶ月ものあいだダンジョンにこもって修行していたおかげか、気配を感知する術が自然と身についていた。
「こっちに気が付いているヤツはいないみたいだが」
「間違いなく、このまま進んだらバレるわよね」
「右の範囲に四人。左に五人ほどか。けっこうな数が出てる。よっぽど慎重な首領なんだろう」
盗賊が身を潜めている場所を双眼鏡で確認する。
「まずは、巡察している盗賊を処理しようか」
「了解。左側は任せなさい。終わったらここでまた合流しましょう」
「ああ。……ていうか、わかるのか? どこに隠れているのかとか」
「鼻がきくのよ、私。そこは任せなさいって、下手うたないから」
「疑ったわけじゃない。エヴァができるっていうなら、できるんだろうさ」
「……。なんか……最初からそうだけど、やけに信頼してくれるわね?」
「裏切りたくないから、信頼してるだけだ」
「……? どういうこと?」
「これが片付いたらな。行くぞ」
「……わかったわ。なんかおもしろそうだし、じっくり聞かせてもらうからね」
その言葉を最後に、レオとエヴァは左右にわかれた。
姿勢を低くしたままの状態で林を進んでいき、時には木で身を隠しつつ、標的に近づいていく。
「まずは一人目」
「!?」
葉っぱや木の枝で擬装していた盗賊の背後にまわり、肩に手をおいた瞬間、着火。
あまり目立たないように、しかししっかり焼けるように火力を調整して燃やす。
しかし、やはり火は目立ちすぎるようだ。
「――どうし……たッ!?」
近くにいた盗賊がこちらに気がつく。しかし、レオの方が速かった。
騒がれるまえに肉薄したレオが男を押したおし、顔面から燃やした。
喋る間もなく頭部が燃え尽き、すぐさま火を消す。
「…………大丈夫な、ようだな」
どうやら、今度は静かに片付けられたようで、林は静かなままだ。
その調子で林の中を移動していき、警戒中だった盗賊のすべてを焼殺に成功した。
「静かに殺す方法を模索しよう。炎は目立ちすぎるな……」
合流地点に戻ったレオは、茂みに隠れながら思案する。
その数分後に、エヴァが無傷のまま戻ってきた。
「待たせた?」
「いいや、今来たところだ。――異常はないか?」
「当たり前でしょ。あんたはちょっと危うかったぽいけど?」
「炎しか使えないんだ。隠密も不慣れで、正直緊張したよ」
「ふぅん? ま、良しとしましょう。――さて、どう攻めていく?」
「そうだな……警戒網が無くなったとはいえ、馬鹿正直に入っていくと人質を盾にとられる可能性がある」
「そうね。ならやっぱり、内側から攻めていくしかないわね」
「……というと?」
「じゃじゃーん」
エヴァが広げたのは、盗賊団が一律して着ていた団員服だった。
「なるほど。それを着て潜入するんだな?」
「正解。二人分あるから、これを着て中から攻めていきましょう」
ということで、レオとエヴァは早速着替えることにした。
すこし距離を置いて、互いに背中合わせのまま服を脱ぎ始める。
「うしろ。向いたら殺すから」
「わかってる」
「……ねえ」
「なんだ?」
「もう、そこでうしろ向いてくれたら殺せたのに」
「……新手の遊びか?」
「嫌がらせよ、ばか」
衣が擦れる音にドキッとしながらも、レオは心を無にして団員服を着用した。
着替えやリュックは近くの茂みに隠し、わかりやすく目印を作っておく。
「――もういいわよ。着おわったから」
「ああ。……あまり似合わないな。しかもサングラスしてるし」
「あんたも、ひとのいいツラしてるから似合わないわ。趣味わるいし、ダサい。サングラスはほら、それっぽいでしょ?」
「それ、自分で言うか?」
「うっさい。トレードマークなのよ、これ」
「そ、そうか……。じゃあ、とっとと助けに行こう。フラン……だっけか? きっと不安にしてるだろ」
「ええ、そうね。きっと……怖い思いをしてるだろうから。無事だといいんだけど……」
「……そうだな」
頷いたレオを先頭に、二人は茂みをかき分けて本拠地へと乗り込んだ。
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