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053 集う魔術師たち

 Fランクパーティ【シュウィラーレ】を結成したその日から、目まぐるしく時が過ぎていった。



 午前中はランク上げのために依頼をこなし。

 午後からは、パーティ対抗戦のため実力の底上げを行なった。

 主に主力となるレオの近接戦闘の鍛錬。

 ヌゥ指導のもと、近接が得意なエヴァやアマリリスと模擬戦を行い、体に戦い方を叩き込んでいく。




「――ヌゥさん、素材の売れる売れないの基準ってなんですか?」




 レオたちが戦力の増強を行なっている傍らで、フランもヌゥから解体技術を身につけていた。

 着実に成長していくフランに、ヌゥはさまざまなことを教授する。

 レオの知らぬ間に、フランの総合値が底上げされていった。



 そして、




「エヴァ、まだ寝ない?」


「――何よ、あんた。まだ起きてたの?」




 フラン宅の庭にて、呼びかけられたエヴァが三叉槍の動きを止めた。




「ん。ヌゥは三時間も寝れば十分」


「便利な体質ね、それ。羨ましいわ」


「ほぼ遺伝。それで、エヴァは槍兵と戦ってた?」


「……わかるの?」


「ん。かなり凄腕。エヴァより強い」


「兄貴よ、私の。出来の悪い、でも槍を握らせれば敵なしの、脳筋」




 ふわっと、エヴァが顔を綻ばせた。

 それも束の間で、すぐに顔を引き締めたエヴァは槍の切先を下におろした。




「エヴァにもお兄ちゃん、いる?」


「ええ。あんたはいないの?」


「ヌゥにも、いる」




 縁側に腰掛けたヌゥがいった。




「弟もいる。弟は、すごく出来がいい。兄は優秀だけど、ヌゥの方が強い」


「へえ。どこ出身なのよ、あんたは」


「帝国」


「そうなの? そう……驚いたわ。あんた、帝国の人間だったのね」


「帝国、嫌い?」


「お年寄りはね。昔は東エルドグラ統合国(うち)と百年近く戦争してたでしょ?」


「ピエルパオロにも負けて?」


「……次それ言ったら殴るから」


「ん」


「でも、次は勝つわ」


「がんばれ」




 その後も二人の夜会が続き、




「兄さん、ぅぅぁ、だめです、そこは――っ!」




 上階では、フランとレオの夜会が繰り広げられていた。








 約束の日を迎え、レオ一行はE級指定迷宮【ドラゴン・スカー】に集まっていた。

 



「――わあ、なんかすごい数の人がいますねえ。たいちょーさんが招待したんですかあ?」




 アマリリスが、迷宮に集まった冒険者を見渡していった。

 頬を掻きながら、問いかけられたレオは否定する。




「いや、俺じゃない。というか、俺に知り合いの冒険者とかいないんだ。なぜだか、避けられていてな。話しかけても無視されたりするんだよ」



「あ~……そうなんですかあ。そういう時もありますよたいちょー! ほらあ、これ見て元気出すんだゾ☆」




 両肘で挟み込まれ、浮き出す巨乳。

 きょうもきょうとて、大胆な赤いドレスを身に纏ったアマリリスに、男どもの視線が集まっていた。




「ありがとう、マリィ。元気が出たよ」


「……あれえ? なんか、いつもと様子が違いますねえ~。体調悪いんですかあ、たいちょー?」


「いや、女に耐性ができたのよ。もうその程度の色気じゃブレないわ、そいつ」


「ええ~。そんなのおもしろくないですよーエヴァさぁん!」


「だからってこっちに抱きつかないで、気持ち悪いわ」


「やんやん、不完全燃焼ですぅ。エヴァさん壊させてくださーい」


「一週間前のことまだ引きずってるの、あなた?」


「これ終わったら、また壊し合いましょうね?」


「お断りよ」




 エヴァとアマリリスが肌を寄せ合うことによって、さらに注目を集めていた。

 アマリリスほどではないが、それなりに露出の高い服を着たエヴァ。

 密着し、擦れ、さらにはエヴァの心底嫌がる顔もまた、そそられるものがある。




「――逃げずに俺の前に現れたこと、まずは褒めてやろう」




 そして、そんな声と共に現れたのは、白金の騎士甲冑をまとったヴィンセントだった。

 黄金の髪を風に揺らめさせた美丈夫の背後には、完全武装したローラン、ミリアンと他に三人の男女がいた。

 


 全員、強い。

 瞬時に悟ったレオは、中でも一人の男――白髪の青年を注視した。




「ああ? なにみてたんだサルが。――はン、もしかしなくともてめえが身の程知らずのジョーク野郎か? あぁ?」




 短い白髪に褐色の肌。どことなくヌゥを想起させるその男は、鋭く尖った眼力でレオをねめつけた。

 



「アナスイ、あまりビビらせるなよ。始まる前に逃げらてしまったら、無駄足になる」


「はンッ! 腰抜けとやりあう俺様の時間がもったいねェぜ。ちょっくら味見してくっから邪魔すんなよ、ヴィンセントォ」


「待ちなさいなぁ、アナスイ~。試合前にそんなこと――」


「るっせえよ、ここでくたばるような雑魚と戯れてやるほど俺様も暇じゃねェんだよ」


「……待つんだ……今は……まだ」




 パーティの静止を無視して、白髪の男がレオに近づいてくる。

 獰猛さを押し隠そうともせず、狙いを定めた肉食獣のように――レオの正面に立った男は、しかし、




「……チッ。どうしててめえがここにいる?」


「……」




 レオと白髪の男――アナスイの間に割り込んだのは、メイド姿のヌゥだった。

 頭二個分も高いアナスイを見上げて、ヌゥは感情の見えない瞳で、声音でいった。




「あーくん。背と一緒に態度も大きくなった」


「……その名で呼ぶんじゃねえよ、クソが。ぶち殺すぞ」


「お姉ちゃんにその言葉遣いはありえない」


「俺様の方が三つも上だ――ッ! ……チッ、シラけちまったぜ」




 踵を返していくアナスイ。どうやら、ヌゥと知り合いのようだ。

 



「知り合いか、ヌゥ?」


「近所の幼馴染、的な子。ちょっと前まではおとなしくていい子だった」


「そうか……だいぶ、キャラ変したんだな」




 苛立たし気に元の位置へ戻っていくアナスイ。

 ホッとした様子のミリアンとローランが、視線をこちらへ送り、顔を固まらせた。




「れ、レオくん……? 人数、ひとり足りなくない~……?」


「まだ……来てない、だけ……?」


「――あ」




 二人の指摘に、レオもまた、表情を強張らせた。

 完全に、完璧に忘れていた。

 己の鍛錬に夢中で、アマリリスのキャラが濃厚すぎて、もう一人の空席を忘れていた。




「あー…………ヌゥ?」




 正面の、ちいさな背に問いかける。

 白髪褐色肌のメイド少女は、ぎこちなく、ゆっくりと後ろを振り返った。




「――あ」



「あ――じゃないでしょッ!? え、え、待ちなさいよちょっと! ここまで準備して、戦えもせずに終わり!?」



「たいちょー? ごめんなさい、私ぃ、実は気づいてたけど言わなかったんですぅ。だってぇ、たいちょーはしっかり物事を考えてる人だからあ」



「あー……」




 呆然と、言葉を濁して、なんとなくSランクパーティ【シャフリーヴァル】を見やった。




「ん……? ん? おい、貴様。まさか、え……?」


「いいジョーク持ってんじゃねェか、あの野郎。傑作だぜ」


「【燃える黒(ザ・シュヴァルツ)】と戦えるいい機会だと思ったんだが……」


「レオくん……」


「……何も言えない……」




 さまざまな感情を混ぜた視線がレオを貫き、途方もなく彼は空を見上げた。

 雲ひとつない晴天。

 透き通った青が、キッパリとフレデリカを諦めろといっているかのように晴れていた。




「……じゃあ、帰ろっか」




 抑揚のないレオの言葉に、




「あー、えと、たいちょー? お疲れ様でしたぁ。あの、元気出してくださいねえ?」



「れ、レオ……大丈夫、ポジティブにいきましょう。あの努力は無駄じゃないし、家ではフランも待ってるから」



「……レオ、ごめん」




 三人がレオの肩や背中を叩いて、慰めながらメラクの方角へ歩き始めた――その時だった。





「――あはっ、もしかして遅刻しちゃったかな?」





 純白の影が、帰ろうとしたレオたちの元へ立ち塞がった。

 いつもに増して調子のいい声音トーン

 どこか気取ったような声色の彼は、目深に被った軍帽のツバを上へ押し上げた。




「待たせちゃったかな?」



「おまえは……ピエルパオロ!? どうして、ここに?」




 顔を驚愕に染めるレオへ、薄く微笑んだピエルパオロはヌゥを見た。




「ハハッ、もしかして彼女から聞いてない?」


「ヌゥのことか……?」


「うん。喜んでいいよ、レオ。きみたちの勝利を告げに来たんだ」




 帽子を脱ぎ捨てた、帝国の傭兵ピエルパオロが高らかにそう、宣言した。



 ――ピエルパオロ、参戦。



 


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