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051 戦斧を味わう三叉槍と魔術師

 訓練所へと移動した一行。

 その中心で、二人の女性が対峙していた。




「兄さん……エヴァさん、大丈夫でしょうか?」


「マズイな」


「や、やっぱり……! なんか、雰囲気が違いますよね……、他の人とは、なんだが異質というか……」




 三叉槍を構えるエヴァと、妖艶な容姿にそぐわない斧を握るアマリリス。

 肩に担いだ戦斧を軽々と持ち上げた赤ドレスの女性は、にこりと微笑んだ。



 立ち振る舞い。風格、視線……どれをとっても、並の者ではない。

 彼女がエヴァに匹敵するのか、上回るのかはまだわからないが、恐ろしい相手だと認識した。




「異質、か。確かにそう感じる……だが……なんだろうな。この親近感は」


「同じ黒髪だから?」


「いや、そんな単純なはずは……」


「兄さん、もしかして惚れました?」


「いや、そんな単純じゃない!」




 ヌゥとフランが「本当かよ」と口を揃えていった。

 



「どこかで会ったことがある? いやそんなはずは……しかし」




 腕を組んで、あごに手を当てて。

 過去の記憶を探ってみるも、彼女と出会った記憶はない。

 だが、なぜか。

 彼女には、初めて会った気がしない。




「アマリリス・スィリ・クレア・フォン・カーディナリス……どこかの令嬢か? それとも」




 名前からして貴族だと推測できるが、いよいよ接点がない。

 レオは村人出身で、貴族との関わりは皆無。

 メラクに来てからも、今は亡き【ノイトラ】の面々としか会話した記憶はない。




「……考えたところでしょうがないか」




 ただの錯覚。

 そう片付けて、レオは二人の戦闘に集中した。




「兄さん、すごいです。たった一回の自己紹介で、あのながい名前全部おぼえちゃってますよ……」


「素直にすごい」








「それじゃあ、始めましょうか」


「はい、お手柔らかにお願いしますぅ――エヴァさん」




 ほぼ同時に地面を蹴った二人。三叉槍がうねり、戦斧が轟いた。

 互いの得物を伝って衝撃がはしり、しかし意に返さず間合を詰める。




「ふふ。ふふふ。エヴァさん、エヴァさん。とっても強いんですね、ぜんぜんEランクには見えませんよぉ!」




 破竹の勢いで軌跡をえがく戦斧。見た目から感じる重量をもろともせず、細腕で振り回す様は異質にして異常だった。




「そう? あなたはまあ、タグ通りって感じかしら」


「ふふ、Bランクって結構、お高いんですけどねえ」


「どっかのアホのせいで、基準がめちゃくちゃなのよ」




 対するエヴァは、姿勢を低く構え、獣のように獰猛で、しかし流麗たる槍術で戦斧をいなす。

 決して戦斧の間合には入らず、攻め込ませない。

 三叉槍という長いリーチを活かして、己の間合で戦うさまは、さすがとしか言いようがない。




「――ところでエヴァさん? どうしてさっきから寸止めなんですかあ?」


「っ――」




 大振りのフルスイング。

 隙が大きい動作ゆえの、必殺を秘めた一撃に息を詰まらせたエヴァ。

 この隙を突くべきか否か。

 生じた迷いから抜け出すかのように、エヴァは後方へ跳んだ。




「……どういう、意味かしら?」



「いえ~。今もそうですけどぉ……殺す気ならもう、十回は私のこと殺せましたよねえ? どうしてやっちゃわないのかなあって。その槍で、肌をぐさって刺して血がドロドローって、そういうの、きらいなんですか?」




 ゾワリと、背筋を舐められたかのような不快感にエヴァは顔を歪めた。





「理解、してるのかしら? これはパーティに入るか否かの試験よ。あなたを殺したら本末転倒じゃない」



「あ、そうでした! でもでもぉ———ぺろ」




 戦斧の刃部分に付着していた血を舐めとるアマリリス。

 今頃になって、肩の部分が掠っていたことに気がつき、エヴァは舌打ちを鳴らす。




「壊して壊す。壊されて壊す。そういうのって、本質が現れると思うんですよ」


「おしゃべりが好きなのね。私の嫌いなタイプよ」



「そうなんですかぁ? これは失敬、てへっ☆

 ――でも、理解し合うために必要なことだと思いますよ、エヴァさぁん」



「理解……理解、ねえ。する必要ってあるのかしら? 仲間だから知る必要ってある? 最低限の了解だけで十分――今でいうところの、強いか否か。それ以上は邪魔なだけよ」



「わあ、こわ~い。でも好きですよ? エヴァさんみたいな、気のつよ~いひと――私のお兄ちゃんみたい」




 戦斧を後方へ構え、姿勢を落とすアマリリス。

 それにならい、エヴァも重心を傾ける。




「壊したいなあ。ちょっとだけ興味が湧いちゃった。萎えちゃうまえにぶっ壊しますね、エヴァさん」


「趣旨、間違えないでよね」




 とはいいつつも、三叉槍に相応の殺意を乗せて、エヴァは地を蹴った。

 くうを穿ち、螺旋する槍の一撃。

 対するは、




「あはッ☆ そういうところもそっくりなんだから。かーいいな――エヴァさんは♡」




 一瞬。

 エヴァの動きに合わせて、戦斧を揺らしたアマリリスが、レオをみた。




「―――」




 重なる赤い瞳。

 ニコッと、何かを示唆するかのように、嗤って――




「っ―――!!」




 刹那、イメージはできていた。

 ほぼ無意識下での出来事——当然のごとく、レオはイメージを形作っていた。



 剣を握りしめ、振り下ろす。

 無論、彼我との距離を覆すほど、剣のリーチは長くない。



 しかし――ならば喰らえよと、思考イメージが吼えた。



 なんのためのソレだ。

 再現してみせろと、そそのかすイメージに付随して――詠う。





「――【絶喰一閃】――ッ!!」




 

 音を置き去りに、振り抜かれた刃は戦斧と三叉槍を弾き、軌道をずらした。

 二人の得物は空を切り――圧力が風となって壁を叩きつけ、髪を撫でた。

 そして、




「おい――殺し合えなんて、言ったおぼえはないぞ」

 



 レオの静かな怒声が訓練所に響いた。









 剣を持っていた――確かに、そんな感触はあったと、レオは反芻はんすうした。

 咄嗟のことで視認はしていないし、たった一瞬のことだから目撃者もいない。

 だが――あの時、レオは確かに二人の得物を同時に弾いた。




「……俺の、新しい魔法か?」




 しかしとかぶりを振って否定した。



 レオには、炎系統の魔法しか扱えない。

 それは昔、魔女と名乗る女から告げられた真実だった。

 その通りに、レオはいくら練習したところで炎系統の魔法しか扱えず、芽吹く様子もなかった。



 相反して、炎系統の魔法はすぐに扱えるようになった。




「仮にさっきのが魔法だったとして、剣を生み出す魔法なんて聞いたことがない」




 だが、あれは幻想なのだと切り捨てるには、件の結果が大きすぎた。

 風系統の魔法が得意なピエルパオロならば、あるいは同じ結果を残すことができるかもしれない。

 しかし、あれを成したのは間違いなくレオ自身で。

 だからこそ、有り得ないことなのだと——




「ふぅ——やめよう。疲れた。いくら考えたって答えはでない……いい加減寝るか」




 シーツの上に体を倒して、瞳を閉じる。

 難しいことを考えるのは、己の領分じゃない。

 そう弁えて、ふと瞼の裏で少女の顔が浮かんだ。



 赤いドレスを妖艶に着飾った、血生臭い女。

 アマリリス・スィリ・クレア・フォン・カーディナリス。

 


 ――結果として、レオは彼女をパーティに歓迎した。



 色々と思うところはあったが、瑣末に過ぎない。

 実力は申し分なく、性格もさほど悪くなさそうだ。

 これであと一人、集めれば土台に乗れる。フレデリカ争奪戦に参加できる。




「あと一人に関しても、ヌゥが任せてくれといっていたが……」



『——一人、あてがある。任せて欲しい』




 ヌゥのあてとは一体だれなのか、不明だが賭けることにした。

 なんだかんだ言って、彼女は期待を裏切らない。




「あとは、エヴァとマリィの仲だが……まあ、なんとかなるだろ」




 アマリリスはエヴァと多少、ウマが合わないようだがそれは後々解決していければいい。

 それにさほど深刻というわけでもない。

 最初から仲良くいられる人間など、そう多くはないのだから。

 あのエヴァとヌゥだって、当初はあまり仲が良くなかった。





「それにしても……おっぱい、すごいな……」





 褒め言葉が陳腐なことばに成り下がってしまう程に、芸術的で爆発的な胸だった。

 いつか、あれの下で眠りたい――邪な妄想を加えながら、寝返りをうったところで、




「――兄さん? 起きてますか?」




 ドアをノックする音。ついで、フランの声がドアの向こうから聞こえてきた。




「フランか?」


「はい。あの……よろしいですか?」


「あ、ああ。どうした?」




 ドアを開けると、そこにはシーツで体を隠したフランが立っていた。




「は、入っても、いいですか兄さん……?」


「ああ。いいぞ……なんで、シーツをくるんでいるんだ?」


「そ、それは……うぅ」




 部屋に入ったフランが、赤面させながら俯いた。

 首を捻ったレオは——次の瞬間、絶句した。




「——兄さん! その、わたしのおっぱいは嫌いですか!?」


「――!?」




 バサッと、シーツを広げたフラン。その奥は、下着だけだった。

 全体的に幼さが残る肢体を彩る、桃色の下着。

 その秘奥で、形よく盛られた胸部。

 大きくはない。だが、小さくもない――絶妙でいてちょうどいい隆盛りゅうせい



 痴女まがいな義妹の行為に、しかし件の兄は一言も声を発することができず、食い入るように肢体を見つめていた。




「に、兄さん……その、やっぱりわたしのおっぱいでは、だめでしょうか……?」


「いや……いや、いや、そんなワケない。そんなワケ、ないじゃないか……!」




 生唾を飲み込んだレオが、フランの言葉を否定した。

 



「フラン、おまえのおっぱいも素晴らしい。きれいだよ、とても……」


「兄さん……! さ、触っても……そこまでいうのなら、触っても、いいんですよ?」


「ふ――フランッ!? 何をいってるんだ!?」


「え、エヴァさんのおっぱいはさわれて、わたしのおっぱいは触れないんですか!?」


「うぐっ……ふ、フラン。しかし、おまえはまだ未成年だぞ……!?」


「結婚できないだけでしょ!? わたしぐらいの女の子は、もう大体経験済みなんです!!」


「なっ――!!? ふ、ふ、フラン……おまえ、経験が……あるの、か?」


「あ、あ、あるわけないじゃないですか!! これから兄さんが奪うんですよわたしの初めてを!」


「うば――っ!?」




 シーツを捨てたフランが、ベッドに腰掛けて、挑発するように足を組んだ。

 艶かしく動いた素足に、視線が釘付けとなる。




「兄さん……わたしのこと、嫌いですか?」


「……いや」


「兄さんは一度も、わたしにいってくれてませんよね」


「………」


「好きだってこと。愛情はしっかり伝わってきます。でも……やっぱり言葉にしてくれないと、それを示してくれないと、不安です」


「フラン……」


「兄さん」




 両手を伸ばすフラン。

 瞳を潤ませて、声をかすられせながら、懇願した。


 

 

「来て……好きです、兄さん……」


「―――」




 後日。

 同居人二人から「深夜、うるさくて眠れなかった」と苦情を浴びせられ、赤面し悶える男女の姿が散見された。



「おもしろかった!」



「続きが気になる!」



「早く読みたい!」



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