049 仲間を集める魔術師①
場所は変わって、冒険者ギルド。
フレデリカと別れ、ギルドにやってきたレオ一行はテーブルに腰掛けていた。
「掲示板って、果たして見られるのかしら……?」
「あ、あまり……今のところ、立ち止まってみてる人はいませんね……」
ギルド内にある掲示板に、パーティメンバーを募集する旨の張り紙を貼った。ちなみに、フラン作のかわいらしくも度胸のある張り紙だ。
「まあ、そんな時間も経ってないしな。時間も中途半端だ。夕方くらいになったらもっと人が集まるだろうから、その時にもう一度きてみるか」
「ええ、そのほうがいいかもしれないわね。この待っているだけの時間も無駄だし。……そうだ、レオ。私と立ち会いなさいよ。剣の天敵ってリーチの長い槍でしょ? いい鍛錬になると思うんだけど」
「確かに、それはいい提案だ。確かギルドの後ろに訓練所があったはずだから、行ってみるか」
「レオ。それも大事だけど、こういう時にランク上げしといたほうがいい」
「ランク上げ?」
「ん。フランたちはまだ、Fランク。魔物退治にはいけないランク」
「それもそうだな……みんなA以上の実力があるのに、Fランクってのはあれだよな」
「あの、わたしはありませんから一括りにしないでくださいね?」
「ふむ……」
腕を組んで悩むレオ。どちらも捨てがたい提案だった。
「私はどちらもでいいわよ?」
「ん、ヌゥもどっちでもいい」
「わたしは、ここで待ってますね? どこにいっても、足手まといですから」
さらにもう一つの選択肢がぶち込まれ、唸るレオ。
思考をフル回転させて、きっかり一分考え抜いたレオは、
「――よし、決めたぞ」
「どうするの?」
「どっちにする?」
「兄さん?」
「みんな。準備してくれ、外に出るぞ」
*
「うぉぉぉぉッ!!」
「甘いわ、もっと強く踏み込みなさい! 脇も締めて! 視線で狙った場所がバレるわよ!」
木刀が弾かれ、胸部目掛けて三叉槍がうねる。
腕を軋ませて、三叉槍の突きを叩きつけそらすも、水のように流麗なエヴァの槍術によって追い込まれる。
全く歯が立たない。
加えて、サングラスによって視線がわからないから、どこを狙われているのかも予測できない。
「エヴァ、あの湖畔で戦った時とはぜんぜんキレが違うぞ……! もしかして、手ぇ抜いてたか?」
「手を抜いていたわけじゃないけど――」
空気を穿って繰り出された三連突き。なんとか木刀でいなすことに成功し距離を取るも、一瞬にして間合を詰められたレオが唇を噛み締めた。
「――その時の気分で左右されるじゃない?」
「っ――!!」
音速すらも置き去りにしたエヴァの、容赦なく強力無慈悲な一撃に、レオは瞠目を隠せなかった。
ゆえに――レオはイメージを瞬時に汲み上げていた。
「な――――ッ!?」
最高潮にまで到達したエヴァの、正真正銘、本気の一撃が――真上へ弾かれた。
「――【絶喰一閃】」
フレデリカの神々しい動きをイメージして、創造された剣技。
反動で木刀が砕けたものの、エヴァの一撃を完璧に相殺してみせた。
「……ふん。さすがといっておくわ」
「ありがとう。エヴァが本気でやってくれたから、俺の練度も上がっていく」
「ハイハイ。とっとと木刀とってきなさい。続き、やるわよ?」
「ああ。ちょっと待っててくれ」
粉砕した木刀の柄を握りしめたまま、レオはフランの元へ向かった。
フランは、少し離れた巨木の麓で薬草を採取していた。
「あ、兄さん! お疲れ様です。調子はどうですか?」
「ああ、最高だよ。成長がわかると気分もあがるし、新鮮な空気の中で行うのは気持ちいいな」
「そうですよね、わかります! わたしも、兄さんの役に立てることをやれて嬉しいですし、楽しいです」
フランが用意した背嚢には、薬草がパンパンに詰め込まれていた。
「すごい数だ……。ありがとう、フラン。これで薬草採取の依頼は全部達成できるな」
「はい! ヌゥさんにも手伝ってもらってるので、すぐに達成できますよ」
「そのヌゥは、どこにいるんだ?」
「あちらの方です」
フランが指さした場所に視線を向けると、木々の向こうで何かが潰れる音が響いた。
「討伐目標の魔物を見つけたからと、飛び出して行っちゃいました」
「効率よく進んでるな……」
「それにしても、依頼は一つまでしか受けられないというイメージがあったんですが、大丈夫だったんですね」
「Fランクの依頼限定だけど、掛け持ちができるんだよ」
「ヌゥさんが戦ってる魔物の討伐依頼は、確かCでしたよね?」
「Fは、どのランクの依頼とでも掛け持ちができるんだ。魔物を討伐するついでに薬草を採ってくるとかな」
「なるほど……」
今回、受けた依頼の数は五つ。
うち三つは薬草採取の依頼で、一つは穀物採取。そして最後の一つが、
「――狩ってきた」
ここ【ナンディーナの森】で目撃された【ストレート・ボア】の討伐。
C級相当の魔物ストレート・ボアを引きずって現れたヌゥは、泥ひとつ被らずに討伐したようだ。
「依頼は全て終わった。もう帰る?」
「……そうだな。そろそろいい時間だし。エヴァにもそう伝えておこう」
「ん。準備する」
「ヌゥさん、これってこのまま持って帰るんですか? メラクから近いとはいえ、流石に大きすぎるのでは……」
「必要な部分だけ持ってく」
「ということは、もしかして……」
ヌゥが、メイド服の裏側から取り出したナイフを見て、フランが生唾を飲み込んだ。
「ここで解体する。毛皮は売れる。肉も売れるしうまい。骨は一部だけ、高く売れる。あと頭は討伐証明になる」
「うぇぇぇ~、ほ、ほんとにここで解体するんですね……っ」
手際よく解体してみせるヌゥ。冒険者の経験はないはずなのに、随分と慣れた手つきだ。
「フラン。これは結構、疲れる」
「み、見てたら……わかります。結構硬そうですし……技術も要りそうですよね」
「ん。でも冒険者にとって大事なこと。生計を立てたり、これで装備を整える」
「は、はあ……」
「でも、解体技術を持ってる人は少ない。多分、レオもできない」
ヌゥに言われて、レオは素直に頷いた。
ある程度、雑ではあるが肉を剥ぎ取ったりすることはできるものの、彼女のようにきれいに解体することはできない。
戦う術を学ぶ。そのことには積極的でも、そのほかの術については無頓着なのだ。
「つまり、これは今後も兄さんのためにもなるわけですね……。わかりました、ヌゥさん。やり方、教えてください」
「ん。任せて」
「お願いします。――あの、ナイフってどう持つんですか?」
「こう。今度、解体用のナイフを買ってくる」
ストレート・ボアを解体する二人の少女。
ヌゥの説明はうまい。きっとすぐに、一人でも解体できるぐらいに成長するだろう。
「さて、もう少し時間かかりそうだし……もう一戦いっとくか」
フランの管理するリュックサックから予備の木刀を抜いて、レオはエヴァの元へ向かった。
「おもしろかった!」
「続きが気になる!」
「早く読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、どんなものでも泣いて喜びます!
ブックマークもいただけると最高にうれしいです!
何卒、よろしくお願いします!




