046 冒険者登録する魔術師
「やあ、待っていたよ。近いうちに来てくれるって信じてた」
冒険者ギルドへ到着したレオ一行は、なんの説明もなしにギルドマスターの元へ通された。
「みたよ、武闘会。いやあ、僕のファミリーがあんな活躍するとは、ギルマスとして鼻が高いよ。しかも決勝戦が、二人ともうちに在籍する冒険者なんだから」
好奇心か。あるいは、疑心か。
柔和に笑う中年の男だが、その瞳の奥は笑っていなかった。
「そうそう、上からこんな通達所も出ててね。おめでとう、レオくん。きみはCランク冒険者から、Aランクに昇格だ! ちなみに、S以上の実力があることは認めてるんだけど、流石に特別昇格でSにするのはどうなんだと、揉めちゃってね。Aでおさまったんだけど」
「いえ、そんな……ありがたいです。ですが、いいんですか、俺がAをいただいても?」
「当たり前じゃないか。むしろ魔道武闘会優勝者のきみを、いつまでもCランクにしておく方が心臓に悪い。僕含めた上層部の連中が、保身を求めた結果さ」
「そう、ですか。ならありがたく、受け取っておきます」
テーブルの上に置かれた黄金の冒険者タグを手にとって、その重みを確認した。
「ところで、話が変わるんだけどさ――【ノイトラ】のみんなが消息不明なんだけど、何か知っているかい?」
その言葉に、レオは臆した様子もなく、答えた。
「俺が――殺しました」
「……詳しく、聞こうか」
表情を変えたギルドマスターに、レオは包み隠さず、全てのことを話した。
あの日、何が起きて、どうなったのか。その過程と、結果を。
「なるほど、ね……。色々大変だったんだなあ、きみも。とりあえず、お疲れ様。きみが生きていてくれて本当によかったよ」
「え……?」
「ちなみに、この話を知っているのはきみのハーレムメンバーだけかな?」
「あとは、フレデリカ様、ミリアンさん、ローランさんの三人だけです」
「あー、聞き間違いじゃなかったんだ、やっぱり。どうしてフレデリカだけ様なの?」
「神々しいからです。あの人は、俺を救ってくれた。神にも等しいお方なんです」
「へえ、そんなお方相手に三股してるんだ?」
「……?」
「うわあ、ここで惚けるとかほんときみ最低だなあ」
「もっと言ってあげてください。こいつ、全然反省してないので」
「はい。兄さんはクズです」
「ヌゥは何も言わない。後で甘やかしてあげるから」
集中砲火を受けたレオは、両手で耳を塞いで続く言葉たちを凌いだ。
「――とまあ、このあたりにしておくとしようか。話が進まないしね」
そう切り出したギルドマスターは、表情を崩したまま、
「ノイトラの件については口外無用で頼むよ。その代わり、きみのやったことについては不問にしよう。正当性もあるし、何よりきみというパーツは大きい。しかし、大きいがゆえに些細なことで壊れてしまうからね。あまり不利になるようなことは隠しておきたい」
「マスターがそういうのであれば、俺は従います」
「うん、そうしてくれ。じゃ、以上で話は終わりだ。――と、多分、うちの優秀なスタッフがきみたちの登録も済ませてあるだろうから、タグ、忘れずにね?」
ギルドマスターの言うとおり、一階に降りてきたレオたちへ、受付嬢が三つのタグを手に待っていた。
「お受け取りください。こちらがエヴァ様、ヌゥ様、フラン様のものです」
「え、わたしの分もあるんですか?」
「戦うだけが冒険者じゃないし、フランだけが除け者ってのも可哀想だろ」
「別にそれ持ってるからって、依頼をこなさないといけないとか、そういうのないらしいし?」
「お守りがわりに持ってればいい。記念」
「みなさん……ありがとうございます!」
「フランは、フランのできることをゆっくり探していってくれ。頼りにしてるからな」
「――はいっ!」
その日一番の笑顔を咲かせたフランをみて、レオも表情を緩めた。
その他の用事を終えて、フラン宅に帰ってきた一行は、夕食の準備に取り掛かった。
フランとエヴァがキッチンに立ち、レオとヌゥは庭で剣を持って立ち会っていた。
「……あれ、兄さん。張り切ってエプロンつけてたのに、どうして庭で剣握ってるんですか?」
「ヌゥに煽られたのよ。剣を嗜んでおかないと最強じゃない、みたいな」
「そ、そんな適当な理由で……まあ、兄さんらしいですけど」
「そうね。それに、あいつの魔法は強力だけど、その分融通がきかない部分もあるから。他に手札を作っておくのもいいかもね」
ヌゥの指導のもと、剣を振るエプロン姿のレオ。
熱心にヌゥの教えを咀嚼して、飲み込み、実戦に移している。
「武術と同じ、イメージが大事。何事も脳を使って戦う」
「だが、俺は考えて戦うのは苦手だぞ……?」
「難しいことを考える必要はない。イメージできてさえいれば」
「武術の時もそうだったな。イメージが大事って」
「魔法を扱うにもイメージが大事。どれだけ鮮明に、強く、そこに近づけられるか。イメージの仕方によって、個々で別のものが生まれる」
「なるほど。イメージは得意だし、都合がいい」
木刀を正眼に構えて、目をつぶる。
イメージするのは、剣の使い手――フレデリカ。
身近に剣を扱い、最強というイメージに近いのが彼女だった。
フレデリカはどう構えていただろうか。
イメージを重ねながら、構えを微調整していく。
「ん……いい。その調子」
「………」
「完成したら、打ち込んできて。イメージの通りに。イメージのなすがままに」
深く、深く思考を広げていく。
あの日の、彼女の姿を掘り下げるように。パズルのピースをはめ込んでいくように。
鮮烈なイメージを、組み込んでいく。
――確か、フレデリカ様はこう言っていたな。
一瞬にして、魔物の群に喰らわした剣撃。
彼女との間に、距離なんてものがなくなってしまったかのような、あの壮絶な一撃をイメージして。
レオは、瞳を開いた。
「――【絶空一閃】――」
「―――」
その場で振り下ろされた剣撃は、三メートルほど離れたヌゥの木刀を真っ二つに叩き割った。
反射的に防御の構えを取らなければ、今頃は……ヌゥが、冷汗を流す。
「んぅ、手応えがない。イメージ通りにはいかない、か。すまん、ヌゥ。瞑想でイメージを鍛えたいんだが……どうした?」
「ん……。なんでもない。一緒に瞑想しよう」
「ああ、すまん」
並んであぐらを組み、瞳を閉じる。
それから夕食ができるまでの一時間、二人は微動だにせず、瞑想に耽っていた。
「おもしろかった!」
「続きが気になる!」
「早く読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、どんなものでも泣いて喜びます!
ブックマークもいただけると最高にうれしいです!
何卒、よろしくお願いします!




