043 話し合う魔術師
さまざまな生物や景色を双眼鏡で眺めながら公国にたどり着いた二人。
手を繋ぎ、公国の門をくぐった彼らの前に現れたのは、三人の少女だった。
「お帰りなさい、兄さん。お話が違うんですけど、何か遺言とかありますか?」
「レオくん。わたし、ずっと待ってたんだよ。七時から、ずっと。ふふ、でも楽しかったなあ。レオくんのこと考えながら待つの……他の女と一緒だとは、知らなかったから」
「レオ。ヌゥは何も言わない、無事ならそれでいい」
待ち構えていた三人。
冷汗と苦笑いを携えて、繋いでいた手を離そうとしたレオは、しかしエヴァの握力によって阻まれる。
「覚悟。決めたんでしょ?」
「あ、え、あ……ハイ」
「しっかりしなさいよ。約束、忘れてないわよね?」
「……ああ」
エヴァにさとされて、レオは覚悟を決めた。
「みんな、紹介するよ。……俺の恋人の、エヴァ・グリーンだ」
「――はあ?」
「――え?」
「――逃げたい」
三者三様の表情を作った少女たち。
レオは、続けていった。
「フレデリカ様。仲良くしてあげてください。それとフラン。あとで、話があるから」
「え、ちょ、え――? あれ、理解が追いついていないのわたしだけかな?!」
「フレデリカ様。俺は彼女とも付き合います。そして、まだ話していませんが、フランとも付き合います」
「え、言い切ったけど、フランちゃんも!? どういうこと!? 話の流れがなんだかおかしいよ!?」
「誰か一人なんて選べなかったんです。だから全員を幸せにするって決意しました」
「あー、なんかじわじわ思い出してきた!」
『俺は絶対にあなたを幸せにしてみせます。後悔なんてさせません。みんな幸せにしてみせる――だから』
昨夜、レオの口から聞いた言葉だ。
聞き間違いだと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
「兄さんは、無責任です」
「わかってる。だけど、もう決定事項だ。俺はエヴァとも、フレデリカ様とも、フランとも結婚する」
「け、決定事項って……! わたし達の意思はそこにないんですか……!?」
「おかしい。そこにヌゥの名前がない」
「れ、レオくん……どうしちゃったんだよ! きみはそんないい加減な男じゃないだろ!?」
「フレデリカ様。とことん話し合いましょう。お互いが納得できるまで、とことん」
「で、できる……? 納得、できるかな……? 普通に無理だと思うんだけど……」
困惑しすぎて怒りすら覚えないフレデリカ。
その横で、フランが唇を噛んでいる。
さらにその横で、きょろきょろと話に加われないヌゥが、頑張って存在をアピールしていた。
*
場所が変わり、酒屋の個室。
フレデリカのSランク冒険者という特権で確保した高級酒屋の個室にて、レオ一行は話し合っていた。
「エヴァさんは、納得したんですか? わたしたち全員が付き合うって、そんなめちゃくちゃな話を……」
「納得してないわ。ただ、信じてるだけ。どう頑張るのかは知らないけど、私のことを優先して幸せにしてくれるそうだし」
「優先……? その言い方、ちょっと引っかかっちゃうなあ。わたしの方が先に付き合ってるんだよね? いわば第一恋人だよね?」
「そういうの関係ないんです。誰が一とか二とか、そんなのどうでもいいんですよ。今は論点じゃないので」
「大丈夫、フラン。ヌゥもまだ恋人じゃない」
「まだってなんですかこれ以上増えたら収拾つきませんよ!?」
「フランは恋人じゃない」
「言い直さなくて結構です!!」
「レオくん? 考え直そうよ、今ならまだ許してあげるから。しっかりエヴァさんとお話して、別れて、フランちゃんともお話して、わたしたちのこと理解してもらおう?」
「あなた、レオに選ばれると思ってるわけ? 誰か一人を選ぶなら、私を選ぶに決まってるじゃない。ねえ、レオ」
唇に指を這わせたエヴァに、フレデリカが目を見開いた。
「ま、ま、まさか―――チューしたの!!?」
「に、兄さんッ!!?」
「ヌゥにはキス、してくれなかったのに」
「ええ、そりゃあしたわよ。数え切れないぐらい。深いのも」
「「ふ、深いのもッ!!?」」
「ヌゥは裸で抱き合ったことある」
「「「裸で抱き合った!!?」」」
「そ、それならわたしだって兄さんと一緒に寝たことあります!!」
「「一緒に寝た!?」」
「勃○させたことある」
「「「――――ッ!!?」」」
混沌と化してくる個室内。レオは端っこで、我関せずと気配を殺していた。が、
「レオくん。ごめんなさい、わたしもう無理だよ」
「兄さん、さようなら」
「ちょっと一発殴らせて。それでチャラにしてあげるから」
「ヌゥは二番目でも構わない」
席を立つ二人と、青筋を浮かべたエヴァ。一貫して、二番目のポジションを狙うヌゥ。
それまで黙っていたレオが、ようやく口を開いた。
「そう安易ではないと思っていた。しかし、諦めるのはまだ早い」
「原因を作ってるのレオくんだけどね?」
「フレデリカ様。俺はみんなと仲の良い家庭を作りたいんです。これから子供も生まれてきて、こんな仲の悪い姿を子供達にみせるんですか!?」
「た……確かに。そういうの、よくないよね……」
「待ってください。どうして子作りすること前提なんですか? 兄さんの中ではもう、三人と結婚してること前提みたいですが、わたしは――」
「フラン。おまえは来年の誕生日に、改めてプロポーズさせてくれ」
「まだ好きとすら言われてないんですけどねっ!!?」
「よし、みんな。これで納得できたか? できたなら、次の話に行きたいんだが」
「……レオくんって、ちょっと頭、弱い? この反応で納得できたと思えるのがすごいよ」
「脳筋なだけよ」
「飲み込みはいい」
「たぶん、真面目な雰囲気が苦手なんです」
「その前に、ヌゥに関してはどうなの」
「メラクに家を作ろうと思う。全員が住めるような、大きい家だ」
「わあー、突拍子もない話ー。兄さんもう頭の中で幸せな家庭図ができてますよあれ」
「うぅ、お父さんとお母さんになんて説明しよう……三人いるお嫁さんのうちの一人ですって……そんなの言えないよぉ」
「うぐっ……確かに、両親のことは考えてなかったわ……」
「ヌゥは別にいい」
「わたしは、両親いませんから……しいて挙げるなら、兄さんだけです」
少女三人のため息が重なった。
道は険しい。が、手応えはあったと、レオは感じていた。
「きょうは呑もう。きょうという日を、記念日にしよう」
「不倫記念日?」
「不倫公開記念日かしら?」
「不倫じゃありません。まだ結婚してないので……浮気容認記念日?」
「容認したくないよぅ……」
「おもしろかった!」
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