033 古代遺跡へ向かう魔術師
「フレデリカ様……どうして、いや、聞いていたんですか?」
「う、うん。ちょっと挨拶しに来たんだけど……って、それよりも、だ。時間の問題だよ、すぐに出発しよう! ――大丈夫! このわたしが来たからね!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! どうしてその遺跡とやらに居るってわかるのよ?!」
「同感」
エヴァとヌゥが、突然現れたフレデリカに鬼毛迫る勢いで問う。
その迫力に困惑しつつも、フレデリカはあごに手をやって、説明を始めた。
「転移石を使ったってことは、十中八九冒険者で間違いないと思う。それでどこに向かったかについてを考える前に、これは一体、誰が得をするのか、損をするのかを考えたんだ」
「誰が……」
「得をする?」
エヴァとヌゥが首を傾げた。
「うん。連れ去られた相手はレオくんの妹さん。損得で現したら、レオくんの損だ。じゃあ、得をするのは?」
「だれか、いるかしら?」
「深く掘り下げていこうか。レオくんは、とうぜん助けに行くよね? でもレオくん。きみはあと二時間で決勝が始まってしまう」
「ッ! そ、そうだった……すっかり忘れていた」
「待って……じゃあ、レオが欠席して得をするのは……」
「そこで戦ってる親玉」
「正解。そしれ彼らは冒険者だ。辻妻があうね。加えて、彼らはレオくんに手痛くやられている。動機も十分」
「な、なるほど……」
「そして、公国周辺には三つダンジョンがあるんだけど、うち二つは徒歩で三十分圏内。走れば十分もたたずして到着できる。そんな近場で、初心者御用達のダンジョンに、Aランク冒険者パーティが転移の術式を刻むとは思えない」
「だ、だから『古代遺跡フレイア』なの……?」
「そうだよ。『フレイア』は、ここから馬車で一時間以上かかる」
「い、一時間……っ!?」
「それじゃあ、レオは決勝に……」
「決勝はどうだっていい。フランが最優先だ」
「うんうん。そうだよね、必ず助けに行くよね。そして妹さんを奪還して、帰る頃にはスイマくんが不戦勝で優勝。それが算段だと思う」
フレデリカの推理に、三人が顔を見合わせた。
「さすがはフレデリカ様だ……ありがとうございます。また、助けてもらっちゃって」
「何を言ってるんだい、レオくん。冒険者は助け合うもんなんだよ。これぐらいとうぜんさ」
「それでも、です。――エヴァ、ヌゥ。手を貸してくれるか?」
「当たり前でしょ。馬車を準備してくるわ」
「ヌゥの責任。挽回する」
「すぐに出発しよう。――あ、フレデリカ様。『古代遺跡フレイア』って、どの方角ですか?」
「まあ落ち着きなよ、レオくん。もっと早く『フレイア』へ行く、いい方法があるよ?」
「え――? ほ、ほんとですか!?」
「ち、ちかいよレオくん……っ」
フレデリカの鼻すれすれまで顔を寄せるレオに、顔を赤くする少女。
「だ、だからついてきて? すぐに出発しよう!」
*
そうして、フレデリカの後をついていくこと十分後――
レオたち一行は、はるか上空を滑走していた。
「――どう~? 初めての空の旅はぁ?」
「は、はいっ! めちゃくちゃ怖いです!」
「新鮮な反応ありがとう〜。それよりも、どう~? この子――ガウェインの乗り心地は~?」
Sランク冒険者【竜騎】ミリアンが、黒く堅牢な背鱗を叩いた。
「息も吸いやすいし、揺れもほとんど感じない……」
「しかも、この速度でね。ハハッ、すごい貴重な体験をさせてもらってるよ」
レオの言葉を継いだのは、ピエルパオロだった。
準決勝時におった傷はきれいさっぱりなくなっており、純白の軍服も健在だ。
「……不思議。猫目がどうしてここにいる?」
「やだなあ、その質問。せっかくだから手を貸してあげようと思ったのに」
「べつに、これだけの手練れが揃ってれば、あなたひとりぐらいいなくても変わらないわよ」
エヴァが、黒龍ガウェインの背に立つ面々を見渡した。
「……慣れない。……物を落としかけただけで……寿命が縮んでしまう……」
「レオくん、寒くないかい? よ、よかったらこれ、毛布使う? 一個しかないから、その、二人で……どうかな……?」
「そんな、申し訳ないですよ一個しかないのに! フレデリカ様がお使いください!!」
「あらあら~? ガウェインにまたがってまでイチャつくなんてぇ、熱いわねえ」
「……ああ……この高さなら間違いなく死ねる……」
「このひと、後ろからつついたら死にそう」
「やめなさい、ヌゥ」
「ん」
Sランク冒険者が三人。そして無類の強さを誇るレオと、何気に実力未知数のヌゥ。
これだけのメンバーが揃っていれば、危険度S相当のダンジョンを、ほぼ無傷で踏破できそうな勢いだ。
「確かに、僕ときみも含めて見れば、たかがAランクパーティの、しかもリーダーが不在のゴロツキ連中相手に過剰戦力もいいところだ。なんなら、小さな国一つ落とせるんじゃないかい?」
「レオがいればやれないことはないでしょうが……正直、あの三人の実力がどんなものか、知らないからなんとも言えないわ」
特に、とエヴァが見遣るのは、幼さ具合ならヌゥにもひけを取らない薄桃色の少女。
レオが惚れている女。
多分、あの女もレオに惚れている――ぎりっと唇を噛んで、三叉槍を握りしめた。
「れ、レオくん……なんか、睨まれてる気がするよ……?」
「き、奇遇ですね……俺も、なぜだか睨まれている気がします……!」
「だ、だよねだよねっ! 寒気がするよ……あっ」
「風邪、ひかないようにしないと」
フレデリカが渡してきた毛布を、彼女の肩にかけるレオ。
「さ、さりげなく気遣いできるなんて、レオくんはいい男だねっ」
「そうですか? 嬉しいです、フレデリカ様にそう言ってもらえるなんて……自信がつきます」
「ねえ、どうしてきみは、わたしのことを様付けなの? フレデリカで、いいのに」
「そ……そんな恐れ多いことできませんよ! フレデリカ様を、呼び捨てにするなんて……そんなの、そんなの――」
「まるで、恋人みたいじゃないか」
「―――」
「―――」
「かわいい。林檎みたい」
横から割り込んできたヌゥの言葉に、顔面を熟れた果実のように赤面させた二人。
エヴァの視線が強くなり。
ピエルパオロの笑い声が空に響く。
「みんなぁ、そろそろ到着するわよ~? 降下が一番危険だから、しっかりしがみついててね~」
笑いを押し殺したミリアンが告げる。
低空へと移行していくガウェイン。向かう先は、そびえ立つサビ色の岩山。
「フラン……今すぐに助けてやるからな」
先までの、和やかな雰囲気を払拭するかのように。
レオが炎を帯びた気迫をまとう。
それに感化された面々が、気を引き締める。
やがてガウェインが地上へ降り立ち、全員が降りたところで、黒龍の大きさが手のひらサイズにまで縮んでいった。
「行こうか、みんな。この先に、遺跡へと通じる穴があるんだ」
フレデリカが先導して小道を進んでいく。
殿はピエルパオロが担当し、レオたちは――【古代遺跡フレイア】へと足を踏み入れた。
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