027 見届ける魔術師
『【螺旋をなぞる獅子槍】エヴァ・グリーンとぶつかり合うのは、この女ッ! 次期聖女候補の一人にして新進気鋭の冒険者パーティ【ノイトラ】が紅一点!! 生かすも殺すも表裏一体ッ! 優雅に女の戦場へッ!
――魔道武闘会初参戦ッ! 【ノイトラ】所属ッ!! セナ・ブラウンぅぅぅッ!!』
「まあ、恐ろしいオオカミさん。食べられないように毒を盛っておかなきゃ」
東入場口から悠然と足を運ぶのは、セナ・ブラウン。
Aランク冒険者パーティ【ノイトラ】に所属する魔術師にして、レオの復讐対象の一人。
「棄権するなら今のうちよ。かわいいお顔に傷がつきたくなかったら、今すぐリタイアをオススメするわ」
「はぁ? 聞いてなかったのかしら? 私、次期聖女よ。治癒魔法は超一流なの。傷がつくどころか、お肌を若々しく保つこともできるのよ。――あなたと違って、私、お肌つやつやだから」
「だからこそ、棄権をオススメするわ。その魔法、二度と使えないように調教してあげる」
「やだやだ~、女の嫉妬ってほんと困っちゃう。でも、まあ? これも聖女の特権よねえ」
「はん、もう聖女気取り? これから村人に戻るっていうのに、哀れね」
「どっちが、哀れなのかしら?」
「考えるまでもないでしょう?」
『おおぉっとぉ!!? さっそく女同士の戦いが始まったぁぁぁッ!! ヒートアップする前にレフェリー、始めちゃってえええッ!!』
「――では、お姉さんが生娘をリードしちゃうよぉ?」
「「はぁ?」」
ほぼ同時に、二人から忌々しく睨めつけられた審判のお姉さん。
殺気のこめられた視線に、さすがのお姉さんもうろたえた。
「……りょ、両者構えて――――はじめッ!!」
『一回戦第四仕合、開幕だぁぁぁッ!! 香しくも熱き女の修羅場を制するのはいったいどっちだぁっ!?』
先手を取ったのは、エヴァの三叉槍だった。
滑り込むように足を前へ伸ばし、槍をためらいなく放つエヴァ。しかし、
「【プロテクト】」
光の膜が三叉槍の一撃を受け止めた――
「舐めたわね、私を」
「んなぁっ!?」
――受け止めた、かと思われた槍の一撃は、しかし一瞬の抵抗もなく膜を打ち破る。
「くぅっ!!?」
「あら、武術の心得でもあるのかしら?」
槍の切先を、すんでのところで回避したセナ。頬につうっと線が走り、血が滲む。
素人ではない足運びで、エヴァから距離をとろうと後退する。
「こ、の脳筋が――ぁ」
「まずは一撃」
「ぁ、はッ!?」
眉間に叩き込まれた三叉槍。鈍い音が会場に響き、一瞬、セナの意識が飛んだ。
しかし、呼び覚ますかのように膝蹴りがセナの顔面を捉えた。
鼻血が宙を飛ぶ。
「ぅ、ぁあ、ち、ちょっとまちなさ――ッ!!?」
「だから言ったでしょう。棄権した方がいいって」
「―――」
セナの肩を三叉槍が抉り、貫く。
悲鳴すらあげる間もなく、槍が鎖骨に叩き込まれた。
パキリと、骨が砕け散った音がなる。
『い――一方的だぁ!! エヴァ・グリーン! まさに獅子のごとく、聖女候補を貪るぅ!!』
「ぁ……ぁ、ぁ」
「どうしたの? 早くお得意の魔法で治して見せなさいよ」
「ぁぁぁ……」
長髪を掴み上げ、膝を折り曲げる聖女候補の顔へ、平手打ち。
目元から涙がとめどなく溢れ、活き活きとみなぎっていたセナの瞳が、灰色に染まっていく。
乾いた音が何度もなんども響き渡る。
都合、五十五発の往復ビンタを喰らい、顔を真っ赤に腫れ上がらせたセナをみて、レフェリーもさすがに絶句した。
「……痛みに耐性なさすぎでしょ、あなた。面白味に欠ける女ね」
「そ、そこまで! 勝者、エヴァ・グリーン!!」
『【螺旋をなぞる獅子槍】エヴァ・グリぃぃぃンの完・封ぅぅ!! 圧倒的暴力ッ!! 圧倒的蹂躙ッ!! 女の意地を貫いたのは、彼女だったぁぁぁッ!!』
「つまらないの。もっと甚振りたかったのに……これで満足するかしら、レオは」
「——ああ。満足だよ、よくやってくれた」
仕合会場から、こちらを眺めるエヴァを見つめて、レオは頷いた。
「これで残り二人だ。あとは俺がやる」
「……兄さん。応援、していますから」
「ヌゥも。サポートできることがあったらやる」
「ありがとう。その想いだけで十分だ。俺が、この手でなさないといけないことだから」
担架で運ばれていくセナを見送ったエヴァが、入場口へと消えていく。
「いやあ、エヴァって子も強そうだね。前に会ったときはそうでもなさそうだったのに。いやはや、わざわざ帝国から来た甲斐があったよ」
そう言ったのは、後ろの席で観戦していたピエルパオロだった。
「帝国から来たのか?」
「うん。一ヶ月前から仕事を休んで、この日のために調整してたんだ。だから嬉しいよ、特出した猛者二人と剣を交わすことができるなんて」
「ピエルパオロの次の対戦相手は、エヴァか。ふ——その言い方だと、おまえ、俺とも戦えるような物言いに聞こえるぞ」
「あれ? そういう風に言ったんだけど?」
「……。おもしろい。それだけ豪語できる相手じゃないと、彼女も楽しくないだろうさ。なあ、エヴァ」
レオが声を投げた方向へ、ピエルパオロも目線を移した。
今し方、観戦席へと到着したエヴァが、うっすらと笑みをこぼした。
「一回戦目があれだと、こっちは不完全燃焼なのよね。レオとやりあうまでにコンディションを最高潮に持っていきたいから、サポート——よろしく頼むわよ?」
「ハハッ! 僕をサポート扱いか! なるほど、やっぱりおもしろいよきみたち。最高だ」
お腹を抱えて笑い、何やらスッキリした表情を浮かべたピエルパオロが席を立つ。
「そこまで言われちゃ僕も手を抜けない。今から調整に入ろうか」
「あら、それはご苦労なことね」
「紳士だからね。淑女をもてなすのが男の務めさ」
爽快に去っていくピエルパオロ。
一息ついてから、エヴァがフランの隣に座った。
「お疲れ様です、エヴァさん。圧勝でしたね、見ていて清々しかったです」
「本性を現した。やっぱり獣みたいな女だった」
「ヌゥ? あんた、フランみたいに素直な賞賛を送れないのかしら?」
「その獣性でレオを食べるつもり。今夜」
「た、たべ……っ!?」
「ぬ、ヌゥ! 変なこと言わないでよね! フランもまに受けないのっ!」
「お、おい……俺、あんまり美味しくないと思うぞ? 結構、硬いと思うし……痛いのは、ちょっと……」
「あんたもあんたで天然ぶるなっ!!」
「おもしろかった!」
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